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EV充電の"世界"を知る~インフラ整備の今と目標、各国のコネクタ規格~

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  • 更新日
  • 2025.02.07
  • 公開日
  • 2025.01.17

 世界的にEV(電気自動車)の普及が促進される一方で、充電インフラの整備が追いつかず、多くのユーザが「充電器不足」に不安を抱えています。この課題は、ユーザがEVの購入をためらう要因でもあり、EV普及を妨げる大きな障壁となっています。本記事では、日本における充電インフラの整備促進に向けた取り組みや各国の充電インフラの整備状況、充電コネクタ規格と普及国について説明します。

1. EV充電器の市場動向

 日本におけるEV充電器市場は、EVの普及とともに急速な成長を遂げています。政府の掲げる"クリーンエネルギー自動車の普及""インフラとしての充電器等の設置"が市場拡大の後押しとなり、さらに充電インフラの整備が加速するでしょう。


2013年~2018年

 EVの普及に伴い、国内の充電インフラが急速に整備されました。充電器の設置数は増加傾向にあり、特に主要都市や交通拠点を中心に充電環境が広がりました。

2018年~2022年

 国内のEV充電器設置数は"普通充電器""急速充電器"をあわせて約3万口でほぼ横ばいの状態に留まりました。この停滞の背景には、充電インフラ整備のコストや設置スペースの制約、充電需要の伸び悩みが挙げられます。

2022年~2024年

 政府の補助金制度による支援や充電インフラの見直しが行われ、2023年から2024年の1年間で充電器数が約8,000基も増加しました。特に、集合住宅などの"普通充電器(基礎)"の設置台数が急増しており、商業施設などの"普通充電器(目的地)""急速充電器"とあわせると約4万口に到達しました。

2. 日本国内の充電インフラ動向

 日本では、グリーン成長戦略(2021年6月改定)において、2030年までに「公共用の急速充電器3万基を含む充電インフラを15万基設置する」という目標を掲げ、充電インフラの整備が進められていましたが、2023年10月に「充電インフラ設備促進に向けた指針」が策定され、充電器の設置目標(2030年までに15万基→30万口)や数え方の単位「基→口」などが変更されました。

充電インフラ設備に向けた原則

 以下の3原則を総合的に勘案し、世界に比肩する利便性が高く持続可能な充電インフラ社会の構築を目指す。

➀ ユーザの利便性の向上
 車両の性能や使い方を考慮しながら、ユーザの利便性を向上させる。このため、高出力化、設置目安の具体化等を図る。

➁ 充電事業の自立化・高度化
 充電事業の自立化・高度化を図る。このため、コストを低減するとともに、サービスの高度化を図る。

③ 社会全体の負担の低減
 充電インフラの整備や運用に伴う公的負担や電力システムへの負担を低減していく。このため、公共性を考慮しながら、効果的、効率的な整備を進める。

充電インフラの設備促進に向けた目標

① 世界に比肩する目標の設定(日本として、電動化社会構築に向け充電インフラ整備を加速)

 ⇒ 2030年までに「公共用の急速充電器3万口を含む充電インフラを30万口設置」、総数・総出力を現在の10倍

➁ 高出力化(充電時間を短縮し、ユーザにとってより利便性の高まる充電インフラを整備)

 ⇒ 急速充電は、高速道路では90kW以上で150kWも設置。高速道路以外でも50kW以上を目安、平均出力を倍増(40kW→80kW)

➂ 効率的な充電器の設置(費用逓減を促進し、充電事業の自立化を目指す)

 ⇒ 限られた補助金で効果的に設置を進めるため、費用対効果の高い案件を優先(≒入札制の実施)

④ 規制・制御等における対応(ユーザ・事業者双方にとって持続的な料金制度を実現。エネルギーマネジメントにより商用車の充電に伴う負荷を平準化・分散化)

 ⇒ 充電した電力量(kWh)に応じた課金について、25年度からのサービスの実現。商用車を中心にエネルギーマネジメントを進め、コストを低減。

3. EV充電器の転換点

 現在、世界中でEVの充電インフラ整備が大きな転換期を迎えています。各国は、温室効果ガスの削減を目指し、充電インフラへの投資を進めるなど、EV普及に向けた取り組みを加速させています。日本では、24年度に360億円(前年度比2倍)のインフラ補助金を措置し、充電インフラの普及を後押ししています。

各国の充電器設置目標と普及数

 以下に各国の充電器設置目標をまとめます。

米国 英国 フランス ドイツ 韓国
充電インフラ目標 2030年までに50万基 2030年までに公共用30万基 2030年までに公共と民間あわせて700万基 2030年までに公共用100万基 2025年までに普通充電器約47万基、急速充電器約5万基
2022年時点の公共用普及数(うち急速充電器数) 12.8万基(2.8万基) 5.1万基(0.9万基) 8.4万基(1.0万基) 7.7万基(1.3万基) 20.1万基(2.1万基)
出典:「第1回 充電インフラ整備促進に関する検討会 事務局資料」(経済産業省)を加工して作成

4. 充電コネクタ規格と普及国

 電気自動車の普及を目指して、各国で充電インフラの拡充が行われていますが、国によって整備されている規格は異なります。日本国内では、普通充電『IEC 62196-2 Type1 / SAE J1772急速充電『CHAdeMO』が一般的な規格となりますが、Teslaの『NACS』や日中共同で規格判定を進めたCHAdeMOの後継『ChaoJi』も注目されています。特に、Teslaの『NACS』は、2024年9月にSAEから標準規格「SAE J3400」として発行されており、各国の主要メーカは2025年以降の北米向けEVにNACSを採用すると表明しています。以下にEV充電器のコネクタの規格と普及国をまとめます。

充電方式 規格 コネクタ 普及国 詳細説明
AC IEC62196-2 Type1(国際)/ SAE J1772(米国) 米国、韓国、日本など 250V、32Aの単相交流(米国と韓国は80Aまで可。日本も80Aへ引き上げ提案中)
IEC62196-2 Type2(国際)/ SAE J3068(米国) 欧州各国など 三相交流用コネクタ。単相の充電プロセスにも対応
GB/T(AC) 中国 中国の標準規格
DC CHAdeMO 日本 最大900kWまで対応
ChaoJi(CHAdeMO3.0) 日本/中国 日中共同で規格判定を進めたCHAdeMOの後継。2023年9月に承認、最大900kW
GB/T(DC) 中国 中国の標準規格
AC/DC複合 CCS1 米国 AC、DCの複合コネクタ
CCS2 EU 350kWまで対応。DC、AC1相、3相すべてに対応可能
NACS 日本、北米 Teslaの急速充電規格(最大250kW)

5. まとめ

 本記事では、EV普及の最大の課題である「充電インフラの不足」に焦点を当て、日本国内外の取り組みや現状を紹介しました。充電設備の整備はEV普及に不可欠であり、ユーザが安心してEVを選べる未来に向けた準備が進んでいます。近い将来、安心してEVを選べる日が訪れることでしょう。また、2025年以降の北米向けEVには『NACS』が採用されていくことになりますので、今後の動向にますます注目が集まります。

(執筆者:松崎 秀和、編集者:古澤 禎崇)

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