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【図解でよく分かる】はじめての『電波入門』~無線通信の基礎

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  • 公開日
  • 2026.04.28
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 スマートフォンやWi‑Fi、テレビ、ラジオなど、私たちの身近なところでは電波による無線通信が日常的に使われています。本記事では、電波や無線通信に興味はあるものの専門知識に自信がない方に向けて、その基本的な仕組みや活用例をイラストや図解を交えて分かりやすく解説します。目に見えない電波の働きを知ることで、無線通信をより安全かつ快適に使うための知識を身につけましょう。

1. 電波の基礎知識

電波とは何か?電磁波との違い

 電波は、空間を伝わる電気エネルギーの波、すなわち「電磁波」の一種です。電磁波は、電界と磁界が互いに作用しながら空間を伝搬する波であり、その速さは光と同じく1秒間に約30万kmです。
 電磁波には、周波数の違いによって様々な種類があります。例えば、がん治療や医療検査に利用されるガンマ線、レントゲン撮影に使われるX線、太陽光線の一部である紫外線、目に見える可視光線、暖房器具などに使われる赤外線、そして私たちが無線通信で利用する電波などが含まれます。日本の電波法では、電磁波のうち周波数が3THz(テラヘルツ)以下のものを「電波」と定義しています。
 一方、「電波」と混同されやすい用語に「電磁界」があります。「電磁界」は、送電線などの電力設備から発生する周波数が極めて低い電磁波を指し、波としての性質は非常に小さいため、電波とは区別されます。

 

図1:電磁波の種類一覧

波長・周波数などの基本用語

 電波の性質を理解する上で重要な基本用語として、「周波数」と「波長」があります。

周波数

(Hz:ヘルツ)

電波が1秒間に繰り返される波の回数を表す単位です。周波数が高いほど波の繰り返し回数が多くなり、周波数が低いほど回数が少なくなります。

  • 低い周波数の電波:回り込みやすく遠くまで届きやすい性質を持つ一方で、伝達できる情報量は少ない
  • 高い周波数の電波:直進性が高く、大量の情報を伝えることが可能な一方で、障害物に吸収されたり反射されやすい性質がある
波長

(m:メートル)

電波の周期的な現象において、連続する次の波が来るまでに進む水平距離の一波分の長さを指します。波長と周波には「波長(m) = 300,000,000 / 周波数(Hz)」という関係があり、周波数が高いほど波長は短く、周波数が低いほど波長は長くなります。アンテナの長さは電波の波長に比例するため、高周波(波長が短い)ほどアンテナは小さく、低周波(波長が長い)ほどアンテナは大きくなります。

図2:周波数と波長の関係

 

身近にある電波の利用例

 電波は私たちの日常生活のいたるところで活用されています。以下の例からわかるように、電波は私たちの生活を便利にするために欠かせません。

利用例 周波数帯
(代表例)
詳細
携帯電話・スマートフォン
4G:主に 700 MHz~3.5 GHz
5G:3.7 GHz帯などのSub‑6 や28 GHz帯(ミリ波)
複数の基地局と電波で通信することで、広範囲での通話やインターネットの利用を可能にしています。
Wi-Fi(無線LAN 2.4 GHz帯、5 GHz帯、6 GHz帯 無線でインターネットに接続する際に利用されます。高速データ通信を可能にし、複数のデバイスが同時に接続できます。
テレビ・ラジオ AMラジオ:kHz帯
FMラジオ:VHF帯(約80~100 MHz)
地上デジタル放送:UHF帯(約470~710 MHz)
放送局から送られる電波を受信し、映像や音声を私たちの元に届けます。
電子レンジ 2.45 GHz帯 のマイクロ波 食品に含まれる水の分子を電波(マイクロ波)で振動させ、摩擦熱によって食品を温めます。
GPS(全地球測位システム 1.2~1.6 GHz帯(L1、L2など) 衛星からの電波を受信して現在位置を特定し、カーナビゲーションやスマートフォンの地図アプリなどで利用されています。
Bluetooth 2.4 GHz帯(ISMバンド) ワイヤレスイヤホン、マウス、キーボードなど、近距離の機器間でデータをやり取りする際に使われます。

2. 電波の性質と特徴

 電波には、光や音のように様々な性質があります。これらの性質が、無線通信の品質や届く範囲に大きく影響します。

反射 電波は、金属やビルの壁などの障害物に当たると跳ね返る性質があります。この反射によって、直接電波が届かない場所でも通信が可能になることがあります。例えば、携帯電話がビル群の中でも利用できるのは、電波が反射して回り込むためです。しかし、複数の電波が反射して異なる経路で届くと、通信が不安定になる「マルチパスフェージング」という現象も起こりえます。
回折(回り込み 電波は、障害物の陰に回り込んで進む性質があります。特に周波数が低い(波長が長い)電波ほど、この回り込みやすい性質が強く、山や建物の裏側にも届きやすくなります。特定小電力トランシーバなどが比較的回り込みやすいのはこのためです。
透過 電波は、障害物の種類や厚みによっては通り抜けることもあります。紙、木材、ガラスなどは比較的通り抜けやすいですが、金属やコンクリートは通り抜けにくく、反射する傾向があります。
減衰(次第に弱くなる 電波は、発信源から離れるほど、または障害物を通過したり反射を繰り返したりするほど、その強さが次第に弱まります。この減衰によって、通信距離が離れると音声が途切れたり、映像が乱れたりすることがあります。水中に電波が伝わりにくいのも、減衰しやすい性質によるものです。
干渉 同じ周波数の電波同士がぶつかり合うと、互いに影響を与え合い、通信が不安定になることがあります。これを「電波干渉」と呼び、通信速度の低下や音声・映像の乱れの原因となります。例えば、電子レンジの近くでWi-Fiの接続が悪くなるのは、同じマイクロ波を使用しているためです。
図3:電波の性質と特徴

3. 無線通信のしくみ

送信機・受信機とアンテナの役割

 無線通信を成立させるためには、送信機、受信機、そしてアンテナがそれぞれ重要な役割を担っています。

送信機 送りたい情報(音声、データなど)を電気信号に変換し、その電気信号を電波として空間に送り出すための装置です。情報を電波に乗せるための「変調」を行い、電波を増幅してアンテナに送ります。
受信機 空間を伝わってきた電波をアンテナで受け取り、それを元の電気信号に戻して情報を取り出すための装置です。電波から情報を取り出す「復調」を行い、元の音声や映像として出力します。感度や選択度、周波数安定性が重要な性能となります。
アンテナ 電気信号を電波に変えて空間に放射したり(送信アンテナ)、空間を伝わる電波を電気信号に変えて受信機に送ったりする(受信アンテナ)ための装置です。アンテナの種類は、用途や電波の周波数、指向性(電波を送受信する方向の特性)によって様々です。

指向性アンテナ:特定の方向に強く電波を送受信する。テレビの屋外アンテナ(八木・宇田アンテナ)や衛星放送のパラボラアンテナなどに活用される。
無指向性アンテナ:全方位に均等に電波を送受信する。携帯電話のアンテナやトランシーバのホイップアンテナなどに活用される

無線通信の基本的な流れ

 無線通信は、送信機で作られた情報を電波にのせて空間中に送り、離れた場所にある受信機で受け取ることで成り立っています。音声やデータはそのままでは遠くまで届かないため、一度電気信号に変換され、電波として送信されます。受信側では、その電波を再び元の情報に戻すことで、通話や通信が可能になります。次の図では、この無線通信の基本的な流れを段階ごとに示しています。

図4:無線通信の基本的な流れ

 これらの一連の流れにより、目に見えない電波を通じて遠く離れた場所との情報伝達が可能になります。

通信の品質にかかわるポイント

 無線通信の品質は、いくつかの要因によって左右されます。

電波の強度と距離 電波は距離が離れると減衰するため、送信機と受信機の距離が遠すぎると通信品質が低下します。
十分な電波強度を確保することが重要です。
ノイズと干渉 無線通信では、目的の信号以外の「ノイズ」が混入することがあります。ノイズは通信品質を低下させる大きな要因であり、他の無線機器からの電波干渉も品質に悪影響を与えます。
アンテナの性能と設置場所 アンテナの種類、指向性、そして設置場所は、電波の送受信効率に直結します。適切なアンテナを選び、最適な場所に設置することで、通信品質を向上させることができます。
変調・復調方式 どのような変調・復調方式を採用しているかも通信品質に影響します。デジタル変調はノイズに強く、誤り訂正技術を組み合わせることで信頼性の高い通信が可能です。
電波法のルール遵守 電波法によって定められた周波数や出力のルールを守ることは、不要な混信を防ぎ、安定した通信環境を維持するために非常に重要です。

 これらのポイントを理解し、適切に管理することで、高品質な無線通信を実現できます。

電波の動きとトラブル事例

 電波の動きは目に見えませんが、日常生活における具体例を通じてその性質とトラブルを理解することができます。

事例 詳細
携帯電話の「圏外 ビルや山間部など、電波が届きにくい場所では携帯電話が使えなくなることがあります。これは電波が障害物で遮られたり、減衰したりして、受信に必要な強度が確保できないためです。
テレビの「ゴースト現象 アナログ放送の時代には、建物からの反射波が直接波と時間差で届くことで、画面に映像が二重に映る「ゴースト現象」が発生することがありました。これは電波の反射という性質が原因です。
Wi-Fiの接続不良 電子レンジの稼働中にWi-Fiの通信速度が落ちたり、接続が不安になります。これは、電子レンジとWi‑Fiが同じ2.4GHz帯の電波を使い、干渉が起こるためです。

4. 電波利用のルールと法律

電波法とは?なぜルールが多いのか

 日本における電波の利用は、「電波法」という法律によって厳しく規制されています。電波法は、昭和25年(1950年)に制定され、「電波の公平かつ能率的な利用を確保し、公共の福祉を増進すること」を目的としています。電波に多くのルールが設けられている理由は、電波が限られた公共資源であり、無秩序に利用されると大きな問題が生じるためです。

混信の防止 電波には互いに干渉する性質があります。もし誰もが自由に電波を発信すれば、同じ周波数帯の電波がぶつかり合い、混信が発生して円滑な通信ができなくなります。特に、消防や警察、航空管制、医療機器など、人命に関わる重要な無線通信が妨害される事態は避けなければなりません。
効率的な利用 電波という貴重な資源を、社会全体で最大限に有効活用するためには、誰がどの周波数を、どのくらいの出力で使うかといったルールが必要です。これにより、多くの人が安定して無線通信を利用できるようになります。
安全性の確保 強すぎる電波や、規格外の電波が発信されると、他の電子機器の誤作動を引き起こしたり、人体に悪影響を及ぼしたりする可能性があります。こうした危険を防ぐためにも、厳格な技術基準と利用ルールが定められています。

 電波法では、無線局の免許制・登録制、無線設備の技術基準、無線従事者の資格、無線局の運用方法など、多岐にわたる項目が細かく規定されています。

技適マーク

 無線機器を選ぶ際に最も重要なチェックポイントの一つが「技適マーク」です。
 技適マークとは、「技術基準適合証明」の略称であり、その無線機器が日本の電波法で定められた技術基準に適合していることを証明するマークです。このマークが付いている機器は、日本国内で安心して使用できます。

  • 表示場所:多くの場合、無線機の型式名称や製造者が記載された銘板に表示されています。スマートフォンなどは設定画面で確認できることもあります。
  • 重要性:技適マークのない無線機器を日本国内で使用することは、電波法違反となる恐れがあります。違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。特に、海外から個人輸入した無線機器には技適マークが付いていない場合が多いので注意が必要です。

 技適マークの認証には、「技術基準適合証明」と「工事設計認証」の2種類があります。

  • 技術基準適合証明:試作品や少量生産品など、個々の機器が技術基準に適合しているかを証明します。
  • 工事設計認証:大量生産品向けで、製品の設計と製造段階での品質管理方法が技術基準に適合しているかを証明します。

 iPhoneの場合は、設定→一般→法令に基づく情報および認証から、技適マークを確認することができます。

 携帯電話・スマートフォンの技適マークの例
(出典:
総務省 電波利用ポータル|電波監視|技適マークのQ&A (soumu.go.jp)  

5. まとめ

 本記事では、電波の基本的な仕組みや無線通信の流れ、そして電波を利用する際に知っておきたいルールについて解説しました。スマートフォンやWi‑Fiなど、電波は私たちの身近なところで毎日使われていますが、その仕組みや決まりごとは意外と知られていません。

 電波には反射や回り込みといった特徴があり、これらが通信の安定性に影響します。また、電波は公共の資源であるため、電波法を守り、正しく使うことが大切です。機器を選ぶ際には、技適マークの有無や用途に合っているかを確認することで、トラブルを防ぐことにつながります。

 基本的な知識を押さえておくだけでも、無線通信をより安心・快適に利用できます。本記事が、電波や無線通信を理解するための第一歩になれば幸いです。

 

 無線通信についてもっと詳しく学びたい方は無線通信の種類とLAPA(低消費電力で長距離通信が可能な無線通信規格)について解説した以下の記事もご覧ください。

(執筆・編集者:中川 鈴菜)

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