【基礎】LPWAの通信規格と特徴比較

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  • 更新日
  • 2023.09.27
  • 公開日
  • 2023.09.12

 身近な通信規格としてWiFiやBluetoothなどが有名ですが、IoT分野での活用が注目されているLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれる通信技術があります。

1. LPWAの特徴

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 LPWAは低消費電力かつ長距離通信が可能という特長があるため、安価なバッテリーで長距離のセンシングが行えます。そのため利用用途としては、人が立ち入りづらい場所(森林、農場、水上など)の監視、ガス・水道のインフラ管理などが利用用途としてあげられます。特に産業分野では、LPWAの通信距離の長さと低消費電力に注目し、物流・輸送管理を中心に採用事例が増えています。

 

2. LPWAの種類

 LPWAは、大手通信事業者が運営する基地局を使用したセルラー系LPWA、無線局免許が不要な周波数帯を利用したノンセルラー系LPWAの2つに分類できます。

セルラー系LPWA

 セルラー系のLPWAは、大手通信キャリアのネットワークを利用するため、以下の特長があります。

  1. 広範囲なエリア対応で安定した通信が可能
  2. 設置場所を選ばず屋内屋外で接続が可能
  3. 高いセキュリティ性で安全に通信が可能

 

ノンセルラー系LPWA

 ノンセルラー系LPWAの多くは920MHz(Sub-GHz:サブギガヘルツ)帯を使用しています。日本では、920MHz帯はもともとアナログテレビのための周波数帯でしたが、2012年7月より電波法が改正され、データ通信用に使用できるようになりました。920MHz帯の通信には、以下の特長があります。

  1. 回折性能が良い
  2. 電波干渉が少ない

 

 以下にLPWAの各規格について、一覧表を記載致します。

方式 セルラー系 ノンセルラー系
LTE-M
(LTE Cat.M1)
NB-IoT
(LTE Cat.NB1)
LoRaWAN Sigfox Wi-SUN ZETA IEEE802.11ah
(Wi-Fi HaLow)
周波数 700MHz

3.5GHz
700 / 800 MHz
1.5 / 2.1 GHz
SubG
920MHz帯
伝送 上り:1Mbps
下り:1Mbps
上り:20 / 250Kbps
下り:250Kbps
250kbps 800kbps 50K
~
200Kbps
50kbps ~700kbps
距離 遠距離
数十km
遠距離
数km~数十km
中距離
~500m
遠距離
数km
中距離
~1km
消費電力 Mid Low
コスト Mid Mid-Low
免許 不要
公衆/自営 公衆 公衆/自営 公衆 自営 自営 自営
事業者例 携帯キャリア ソラコム、センスウェイ 京セラコミュニケーションシステム Silex

 

 各規格について、もう少し詳しく見ていきましょう。

LTE-M(LTE Cat.M1)

 LTE通信方式の1つで、ネットワークに接続されたモノ同士が直接的に通信するM2M通信を想定した規格です。LTE Cat.M1とも表記されます。移動するデバイスに適しており、ウェアラブル端末などで活用されています。

 主な特徴は、「キャリアグレード」、「広域な通信エリア」、「省電力性能」、「ハンドオーバー対応」、「移動体通信も可能」などです。

(規格団体は3GPP)

※キャリアグレード:通信事業者が通信網の構築と運用に用いることが出来る高水準な通信品質

※ハンドオーバー:移動通信中における基地局の切り替え機能

NB-IoT(LTE Cat.NB1)

 LTE通信方式の1つで、LTE Cat.NB1とも表記されます。 NB-IoT(Narrow Band-IoT)は狭い周波数帯域を使用するので、その他のネットワークと合わせて使用しやすい特長があります。狭帯域かつ低速のため消費電力を抑えることが可能です。

 主な特徴は、「キャリアグレード」、「通信速度が遅くFOTAには実質的に対応不可」、「ハンドオーバー非対応」、「各種メータのような静止機器に適している」などです。

(規格団体は3GPP)

LoRaWAN

 LoRaWAN(Long Range Wide Area Network)は、米国Semtech社の無線通信方式です。小電力、長距離が特長で、屋外における通信用途に長けています。自前で基地局が設置可能な方式となっていることも特長の一つです。

 主な特徴は、「低速・低消費電力」、「長距離伝送」、「オープンな技術仕様」、「LoRa Alliance認定機器で誰でもネットワーク構築可」、「ハンドオーバ機能はないが40km/hでも通信可能」、「長期運用に適している」などです。

(規格団体はLoRa Alliance)

Sigfox

 LoRaWANと似た特長を持ち、伝送速度、距離はわずかに勝るものの、基地局は公衆のみ(自営なし)となります。

主な特徴は、「基地局設置不要」、「国内人口カバー率が高い」、「国際ローミング対応」、「SIM/ペアリング設定不要」、「低速・小データの割り切ったシステム運用に適する」、「コスパが良い」、「ハンドオーバ機能はない」、「1日当たりの通信制限あり」などです。

(規格団体はSigfox Fr)

Wi-Sun

 Wi-SUN(Wireless Smart Utility Network)は日本発の規格でIEEE 802.15.4g規格をベースとしていて、アプリケーションによってプロファイルが決められています。

 主な特徴は、「超低消費電力」、「広範囲をカバー」、「マルチホップ通信対応」、「障害物に強くて繋がり易い」などです。

(規格団体はWi-SUN Alliance)

Bルート(ECHONET Profile for Route B)

 スマートメータとHEMSを接続するプロファイルで東京電力などで採用されています。

HAN(Home Area Network)

 家電との接続向けのプロファイルで家電や太陽光パネル等からのデータ収集で使用されます。

JUTA(Japan Utility Telemetering Association)

 ガスメータや警報器との接続向けのプロファイルです。

FAN(Field Area Network)

 屋外への拡張用プロファイルで、スマートグリッド、インフラ管理などに使われます。

 マルチホップ通信させることで広域をカバーすることが出来ます。

ZETA

 ZETAは、ZiFiSense社によって開発された通信規格です。他の通信規格と比べて超狭帯域(UNB:Ultra Narrow Band)による多チャンネルでの通信が可能で、メッシュネットワークによる広域分散アクセス、双方向での低消費電力通信が可能です。

 主な特徴は、「Meshネットワークによる広域分散アクセス」、「マルチホップ(中継器)経由で、見通し悪い環境でも接続可」、「多段通信・双方向通信」、「単一APで広範囲をカバー」、「低消費電力で双方向通信」、「セルラーLPWAよりランニングコストが一桁低い」などです。

(規格団体はZETA Alliance)

WiFi HaLow

 Wi-Fi HaLow(IEEE802.11ah規格)は従来のWi-Fiの機能を強化した、長距離性、省電力性に優れた規格です。Wi-Fiと同じくIPベースの規格のため、既存IP資産を活用できる点に大きなメリットがあります。LPWAが苦手とする画像、映像データ転送にも活用可能です。

 主な特徴は、「Wi-FiとLPWAの両方の特徴をかねそなえた無線通信技術」、「IPベースの規格で既存IPネットワークと親和性が高い」、「1chあたり360秒/時の送信時間制限あるがベンダ機器で対策済」などです。

(規格団体はIEEE)

3. LPWAの普及動向

 市場動向としては、LPWA技術はIoTデバイスの急速な普及により成長しています。以下、IoTデバイスの市場動向、LPWAモジュールICの出荷状況を順に見てみましょう。

CK000245_LPWA__3.png
世界のIoTデバイスの市場規模(出展:Omdia)

世界のIoTデバイス数の市場規模

 スマホなどの通信市場規模が飽和状態の中、IoTデバイス数の市場規模は、全市場カテゴリにおいて成長しており、特に今後ますますの成長が見込まれるのは、スマート家電などの「コンシューマ」市場、スマート工場やスマートシティが拡大する「産業用途」(工場/インフラ/物流)市場です。

 

CK000245_LPWA__4.pngLPWAモジュールIC出荷状況(出展:Omdia)

LPWAモジュールIC出荷状況

 LPWAモジュールICの出荷台数は2025年には世界で7.2億台になると予想されます。現在、セルラー系はLTE Cat.NB1(NB-IoT)、ノンセルラー系はLoRaWANがシェアを拡大しています。特に免許不要、基地局を公衆/自営のいずれかから選択できるLoRaWANは、今回ご紹介したLPWA規格の中で最も導入の敷居が低く、大幅なシェア拡大が見込まれます。

 

4. まとめ

 LPWAの需要は今後益々増えていくものと思われます。しかし規格が多く、それぞれの強みや将来的な普及度合いも違うため、最新動向に常に気をかける必要があります。

どのLPWA無線規格を選定すれば良いかわからないなど、疑問点がございましたら弊社まで是非お問い合わせください。

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