Windows 11 LTSC検討中の人必見!10との違いや新機能とは
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- 更新日
- 公開日
- 2025.05.08

今まで産業機器への組み込みOSはレガシーなバージョンをできるだけ長く使う傾向がありました。昨今ではセキュリティ意識の高まりを受け、最新OSへの乗り換えを急ぐ傾向に変わってきています。
本記事では、Windows 11 IoT Enterpriseの特徴やWindows 10との違いを整理しながら、次期システム選定に向けた判断材料としてご活用いただけるよう、各種情報をまとめました。
INDEX
1. Windows 10/11 IoT ライセンス概要
Windowsには、用途や対象ユーザに応じて複数のエディションが用意されており、家庭用から企業向け、そして組み込み専用ライセンスまで幅広くカバーしています。本章では、製品のラインナップや特徴をご紹介します。
1-1. Windows 10/11 各エディション&ラインナップ
Windowsの代表的なエディションについて表にまとめました。エディションごとの特徴を理解することで、用途に最適な選択が可能になります。

本記事では、Windows 10/11 IoT Enterpriseについて解説します。
1-2. Windows IoT Enterpriseとは
Windows IoT Enterpriseは、POSレジや産業機器などの特定用途向け機器に最適化されたWindows OSです。例として、以下のような場所で採用されています。

Windows IoT Enterpriseは、「Embeddedライセンス」のひとつとして提供されています。特定用途向けデバイスは、長期間にわたる安定運用が求められるため、Windows IoT Enterpriseでは主に2つの提供モデルが用意されています。
1つは、機能更新を継続的に受ける「GAC(General Availability Channel)」、もう一つは機能を固定し、10年間の長期サポートを提供する「LTSC(Long Term Servicing Channel)」です。特にLTSCは、ソフトウェア更新が最小限に抑えられた環境が求められる機器に最適であり、組み込み用途での採用が進んでいます。
1-3. 最新 Windows 11 IoT Enterprise ライセンス情報
2024年10月、Windows 11 IoT Enterpriseの最新バージョンがリリースされました。GACおよびLTSCのそれぞれに対応した2つのライセンス形態が登場しています。以下の表は、それぞれの提供開始日やサポート期間をまとめたものです。

メインストリームサポートは製品リリースから一定期間提供されるサポートであり、OSのバグフィックスやセキュリティパッチの更新を行います。延長フェーズサポートは、その後に続くセキュリティ更新中心の期間であり、サポート内容が限定されます。
GACとLTSCの違いは以下の通りです。

LTSCでは、機能更新プログラムが提供されません。その理由は、従来のOSでの機能アップデートが、以下のようなトラブルを引き起こすことがあったためです。
- 自動的にアップデートされ、業務中に再起動が発生する
- アップデート後にソフトウェアとの互換性が崩れる
- アップデート中にネットワークが遮断され、システムが不安定になる
このように、機能アップデートは利便性の反面、業務用途ではリスクとなる場面もありました。そのため、Windows 10/11 IoT Enterprise(LTSC版)では、機能や仕様が途中で変わらないことを重視し、機能更新を一切含まない設計が採用されています。これにより、導入時に想定したままの安定した状態を長期間維持できます。
1-4. Windows 10/11 IoT Enterprise 製品ラインナップ
Windows 10/11 IoT Enterpriseには、バージョンごとに異なるサポート期間や提供モデルがあります。以下の表では、各バージョンの提供形態とサポート終了予定日をまとめています。

LTSB(Long Term Servicing Branch)は旧称であり、現在はLTSCという名称に変更されています。機能面の大きな違いはありません。
2. Windows 11 IoT Enterprise 機能紹介
本章では、Windows 10 IoT EnterpriseとWindows 11 IoT Enterpriseの主な機能を比較し、バージョンアップによって追加・強化された機能をご紹介します。
2-1. Windows 10/11 機能比較
以下の表では、Windows 10 IoT EnterpriseとWindows 11 IoT Enterpriseの主な機能の違いを比較しています。

※1 Windows 11 IoT Enterprise LTSCにて機能改善
※2 Windows 11 IoT Enterprise LTSCより、ワードパッド・Internet Explorerが廃止
Windows 11 IoT Enterpriseでは、Smart App ControlやMicrosoft Plutonなど、セキュリティ関連の機能が強化されています。
2-2. Windows 11からの新機能
Windows 11から新規追加された機能や、改善された機能をご紹介します。
ワイヤレスディスプレイ
ワイヤレスディスプレイは、Windows 11 IoT Enterpriseを実行しているデバイスに対し、他のデバイスからワイヤレスで画面を投影できる機能です。利用にあたってはMiracast互換のハードウェアが必要です。
リムーバブルパッケージ

リムーバブルパッケージは、Windows IoT Enterprise LTSCから特定の機能パッケージを削除できる機能です。不要な機能を削除することで、ディスクスペースを節約したり、セキュリティリスクを減少できます。Windows 10 Enterprise LTSCでは対象の機能パッケージは20個でしたが、Windows 11 IoT Enterprise LTSCでは36個に拡張されました。
Smart App Control
Smart App Control は、Microsoft Defender や他社製ウイルス対策ソフトなどのセキュリティソフトと連携して動作し、システムの保護をさらに強化する機能です。悪意のあるアプリや信頼されていないアプリをブロックすることで、新たな脅威から保護します。
Microsoft Pluton
Microsoft Plutonは、CPUに組み込まれた安全な暗号プロセッサであり、資格情報・ID・個人データ・暗号化キーを保護します。
ライブキャプション
ライブキャプションは、自動文字起こしを提供する機能であり、聴覚障碍のあるユーザがオーディオをよりよく理解できます。
Windows Subsystem for Linux GUI
Windows Subsystem for Linux GUIは、Windows上でのLinuxのGUI(Graphical User Interface)アプリケーションを実行する機能です。
2-3. Lockdown機能
Windows 10/11 IoT Enterpriseでは、システムを特定用途専用に制御するLockdown機能が提供されています。これらの機能を活用することでユーザ操作を制御し、安定性やセキュリティを確保した環境の構築が可能です。以下に、主なLockdown機能と、それぞれのバージョンにおけるサポート状況をまとめました。

Windows 11 IoT Enterprise(2024 LTSC)では、これまでのLockdown機能がすべて継続されているほか、Windows 10時代に提供されていた「Multi App Kiosk」機能をベースにした新しい機能、「Restricted User Experience」が加わりました。
「Restricted User Experience」とは、Windows 11のデスクトップ画面を表示しつつ、管理者が許可したアプリケーションのみ実行できるように構築できる機能です。
3. Windows Embedded OS EOS・EOLスケジュール
本章では、各Windows Embedded OSのサポート期間や供給終了日をご紹介します。OSの移行計画やライフサイクルの参考としてご活用ください。
Windows 7系は2020年1月にサポートを終了しました。Windows 10 IoT Enterprise 2015/2016 LTSBは、2025年10月/2026年10月にサポート終了を控えています。Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024は2034年までサポートされるため、長期運用を前提としたデバイスの移行先として有力な選択肢となります。
4. まとめ
Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024を採用するメリットは以下の通りです。
- 機能アップデートが存在しないため、特定用途向け端末の安定稼働につながる
- OSリリースから最長10年間、同じOSイメージを利用できるため、コストの抑制にもつながる
- Lockdown機能によって、不要な操作を制限し、セキュアな環境を実現できる
Windows 11 IoT Enterprise LTSC 2024への移行をぜひご検討ください。
(執筆者:鈴木 宏規、編集者:内田 将之)