映像ケーブルを無線化!OS標準サポートの規格"Miracast"
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- 更新日
- 公開日
- 2024.09.27
Miracastとは、「Wi-Fi Alliance」によって策定された、1対1の無線通信によるディスプレイ伝送技術です。本記事ではMiracastとは何かという基本的内容やシステム構成、近年の動向と将来性などについて解説を行います。
1. Miracastとは何か?
Miracastとは、「Wi-Fi Alliance」によって策定された、1対1の無線通信によるディスプレイ伝送技術です。
ストリーミング技術を用いてホストの画像、音声、動画を、無線で接続された異なるデバイスに送信可能です。
使用例:
- スマホやタブレットの動画を、テレビやモニタなど大画面で視聴する
- ノートパソコンの画面を会議室のプロジェクタでリアルタイムに共有する
Miracastは、コンテンツを送信する「Source Device」と、コンテンツを受信/表示する「Sink Device」の2種類の機器で構成されており、双方を接続するとストリーミングによって映像を伝送します。
2. Miracastのシステム構成
必要なハードウェア
最低限必要となるハードウェアは、Miracastに対応しているSource Device(送信側)とSink Device(受信側)です。この2点を用意すれば、別途ドングルレシーバなどの装置が必要になることはありません。
Miracastの接続には、以下の2パターンがあります。
- AP(アクセスポイント)を使わない、P2P(ピア・ツー・ピア)接続
- APを経由する、インフラストラクチャ接続(※)
- Miracast R2という規格対応や、特定のディスプレイアダプタを使用した場合
必要なミドルウェア
デバイスがMiracastに対応していない場合、専用のミドルウェアを組み込むことでMiracastに対応させることが可能です。
以下にミドルウェアのシステム構成例を記載いたします。
- 通信路 : Wi-Fi Direct / infrastructure
- 伝送プロトコル : RTP (UDP / TCP)
- 伝送制御プロトコル : RTSP (TCP)
- 映像 : H.264 / H.265
- 音声 : LPCM / AAC / AC3
- 多重化 : MPEG2-TS
- 著作権保護技術 : HDCP
3. Miracastと他のストリーミング技術の違い
他サービスとの違い
Miracastは他サービスと比較して、汎用性や相互接続性に優れていることが特徴です。多くのAndroidデバイスや一部のWindowsデバイスで標準的にサポートされており、異なるメーカのデバイス間でも高い互換性を持ちます。
Miracastが選ばれる条件
周辺環境にて、AndroidやWindows等の様々なデバイスを使用する場合、互換性があるMiracastを使用することが有効です。対して、周辺環境がAppleデバイスやGoogleのエコシステムなどの使用を前提とする場合、AirPlayやChromecastといった環境に最適化されたサービスが有効です。
4. Miracastの実用的な使用例
導入事例
弊社がMiracastミドルウェアを組み込んだことのある導入事例を2件ご紹介します。
・プロジェクタ
Miracastの導入により、下記のような効果が見込めます。
- スマートフォンやタブレットの画面をスムーズに大画面に投影することが可能
- 配線を原因とする接続不良の解消
- ケーブル自体がなくなることによるケーブル余りの解消
これらの効果により、プレゼンテーションや会議の場で、スムーズな情報共有や議論を行えます。
・カーナビ
Miracastの導入により、下記のような効果が見込めます。
- Android端末の画面を投影することで、視聴していた映像/音声を車内で共有可能
- カーナビ画面でAndroid端末を操作できる為、1画面に集中することが可能
ソリューション紹介
弊社が作成した、Miracastを活用したソリューションを2件ご紹介します。
※評価ボードにはRenesas Electronics社製「R-Car M3 スタータキット」を使用
・Sink(表示機側) ソリューション
動画では、中央手前にある評価ボードに、Sink Device機能を有するMiracastミドルウェアを組み込んでいます。評価ボードが右側のスマートフォンから映像を受信し、ディスプレイにミラーリングしています。更にディスプレイのタッチパネルから、スマートフォンを遠隔操作することが可能です。(スマートフォンは、標準サポートされた機能にて接続します)
・Source(送信側) + Sink(表示機側)ソリューション
動画では、中央にある評価ボードに、Source DeviceとSink Deviceの両機能を有するMiracastミドルウェアを組み込んでいます。評価ボードは左側のスマートフォンから映像を受信し、更に映像を右側のタブレットへ再配信しています。1つのコンテンツを、複数表示機でストリーミングが可能です。(スマートフォンとタブレットは、標準サポートされた機能にて接続します)
組み込みシステムへ導入する際の壁
Miracastミドルウェアを組み込む際、映像のエンコードやデコードなど、負荷の高い処理が継続的に実行されます。その為、十分な処理能力を持つハードウェアだけではなく、映像処理や組み込みシステムに関する深い知識が必要とされます。例えば、効率的な映像圧縮アルゴリズムや、適切な解像度・ビットレートの設定などの専門知識が不足している場合、映像の遅延や品質の低下が発生し、ユーザエクスペリエンスの低下に繋がります。このことから、実績のあるMiracastミドルウェアの選定、経験と知識が豊富な開発者による組み込み作業といった要素が不可欠です。
弊社は、ICベンダやOSを問わず、様々な無線通信開発事業を行っております。パートナ企業であるコムラッド様と協業しながら事業を進めています。ミドルウェアの組み込みやチューニングの対応、Miracast認証、Wi-Fi認証の対応など、様々なサポートが可能です。
5. Miracastの動向と将来性
スマートフォンやタブレットはもちろん、スマートテレビやスマートグラスなどの最新機器でも、Miracast対応機器が様々なメーカからリリースされています。高速なWi-Fi規格の普及に伴い、高ビットレートでのデータ伝送が可能となりました。それに伴い、デバイスの多くが4K解像度に対応しています。将来的には8K解像度への対応が普及し、より高品質な映像の提供が可能となります。また、リモートワークやハイブリッド学習などの普及に伴い、商業および教育分野での利用拡大が見込まれます。
6. まとめ
Miracastについて、今回の記事を通じて知識は深まりましたでしょうか?
Miracastを活用するには適切なハードウェアとソフトウェアの導入や、映像処理に関する知識が必要とされます。
もしご興味がある方や、相談/サポートが必要な場合は、ぜひ弊社にご相談ください。
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