液晶搭載で注意するべき設計手法
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- 更新日
- 2023.05.09
- 公開日
- 2023.05.09
液晶化の検討にあたり、何から手を付ければ良いのかお悩みではありませんか?
液晶化は、「設計が難しい」「部品点数が増える」等の不安があるかと思いますが、良い解決案がございます。
<本記事で分かること>
・液晶搭載機器開発の流れ
・企画検討~実開発でのポイント
INDEX
1. なぜ、昨今の液晶化が進むのか。
街中を見ますと、中型以下のセグメント型LED表示器、それにドットマトリクス型LED表示器が、液晶に置き換わっています。小~中型のLED表示器では解像度や色の制約で表示できる情報量が少ないことが、その要因です。 街中を見ますと、中型以下のセグメント型LED表示器、それにドットマトリクス型LED表示器が、液晶に置き換わっています。小~中型のLED表示器では解像度や色の制約で表示できる情報量が少ないことが、その要因です。
液晶化することで、表示情報量の向上、タッチパネルを使用したUIの実現が可能となります。
2. 液晶化で多くの人がつまづくポイントと対策
液晶化に際して、液晶選定から基板部品の検討・開発まで、LED機器とは異なることが多々あります。弊社エンジニアの液晶設計経験から、必ず決めること・やらなくてはいけないことを細かく整理しています。
これまで液晶設計をしてきた方も、これから担当される方にもご活用頂けるように、全体の流れから注意点と問題解決の為の選択肢の1つを解説してみました。
2-1. 製品設計の大きな流れ
要求仕様をきちんと決めておかないと後の部品要求仕様に影響が出てきます。今回は商品企画と商品設計に分け、それぞれで必ず決めないといけないことを解説しています。
2-2. 手戻り削減のための仕様検討ポイント
<企画検討>
- 企画検討段階で、表示するコンテンツを考慮した解像度と、製品デザインに合わせた液晶サイズを決定する必要があります。
- 使用環境に合わせたバックライト輝度・コントラスト・視野角も要求仕様として記載する必要があります。
<表示コンテンツの検討>
- 液晶を搭載することにより表示情報量が増えますが、それに伴いデータ量も大きくなります。
- 企画検討段階で、表示内容・画面の遷移数等を企画段階で明確化しておくことで、データ量の見積もりが容易になります。
- コンテンツのフォーマット(静止画・動画、圧縮・非圧縮)によりマイコンに要求される処理性能も変わります。
- 設計と並行して表示コンテンツの検討を行う場合、コンテンツ数・画面遷移数の増加によりROM容量不足となる懸念があります。
- これらを企画段階で明確化しておくことで、後に部品を選定するときにマイコン・メモリ等の選定に大きく影響します。
<使用環境>
- 液晶は使用環境により見え方が変わります。
- 一般的に使用される透過型液晶の場合、周囲が明るいと画面表示が見え難くなります。
- 屋内と同様の見え方を確保するためにはバックライト輝度を上げるか、外光視認性の良い特殊な液晶を選定する必要があります。
- 屋外設置の場合は紫外線対策も考慮しましょう。長期間太陽光に晒されると、樹脂素材と同様に変色する場合があります。対策として紫外線カットのフィルム・カバーパネルを設けるなどがあります。筐体側に紫外線カットの機能を設けるか、液晶側に設けるかも予め検討しておいた方が良いでしょう。
- タッチパネル・カバーパネル等を設ける場合、液晶とパネルの貼合方法も注意する必要があります。
2-3. 部品仕様決定時でよくあるつまづきポイント
<設計/開発時:処理性能・メモリ容量見積と基板設計>
設計/開発時は今回2つのパターンが考えられるので分けて整理してみました。
①新規搭載部品が増える
液晶制御用に下記の部材が追加で必要となります。
- 液晶制御機能を備えたマイコン、もしくは外部コントローラ
- 画像・フォントデータを格納するためのメモリ
- バックライト制御用の電源回路
②設計難易度が上がる
マイコンの機能向上によるソフト開発難易度
- 表示制御用のソフトを新たに追加する必要があります。
- 一枚絵を表示するだけであれば、マイコン内の液晶制御機能を使用して表示可能ですが、操作パネルのような画面を構成する場合はボタン等のパーツを画面内に並べる、操作後の画面に遷移するなどの処理が必要になります。これらの処理用にミドルウェアを提供しているメーカーがおりますが、ソフトの組み込み作業は必要になります。
液晶バス配線の引き回し、ノイズ対策
- 液晶との接続は小型・低解像度のものであれば6bitもしくは8bitのパラレルIF、中型以上のものですとLVDSやe-DPなどの差動IFとなります。
- パラレルIFであれば信号速度は速くありませんが、30本程度の信号線を基板上に配線する必要があり、それなりの面積が必要となります。
- 差動IFであれば信号線の本数は少なくなりますが、インピーダンスコントロールが必要になります。
- どちらの配線にしても、信号の特性に合わせたノイズ対策が必要となります。
3. 液晶ユニットという選択肢
設計~開発の工数を削減するために、液晶ユニットを検討するという手もあります。企画段階で要求仕様を明確化する必要があることは自社開発と変わりませんが、液晶ユニットを使用することで液晶周辺の設計工数を削減可能です。液晶ユニットと本体のIF仕様を既存製品と同様にすることで、主制御基板は既存製品から変更なしで液晶搭載することも可能です。下図がその例となっており、自社開発をした場合と液晶ユニットを搭載した場合には、ROM/RAMからコントローラ、液晶、タッチパネルまで、がユニットに含まれます。
“ユニット”と聞くと、一見、「高そう」「融通が利かなさそう」というイメージを持たれる方もいらっしゃると思いますが、液晶ユニットも汎用品扱いのものから、セミカスタム・フルカスタムと幅広くあります。カスタム部分が多くなると開発費用が高額になりますが、要求仕様と汎用品の仕様がマッチすれば安価に液晶搭載が可能となります。
4. まとめ
今回は弊社エンジニアの経験から液晶搭載時の大きな流れから、液晶の選定時~設計/開発時に検討が必要なことをまとめさせていただきました。企画検討から設計・開発まで密接に絡むため、ハードルが高く感じるかもしれませんが、企画段階で要求仕様を明確化することで、設計・開発時の手戻りを防ぐことが可能です。
液晶、基板部品から液晶ユニットまで、液晶搭載に関してご相談・お困り事がございましたら、是非一度『リョーサン』へご相談ください。