産業分野で活用が期待される「Ethernet 10BASE-T1S」とは?
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- 更新日
- 2023.09.27
- 公開日
- 2023.05.09
10BASE-T1Sはひとことで言うと、「10Mbpsのシングルペアイーサネット」です。産業用のフィールドバスはProfibus、EtherCAT、CC-LINK、Modbusなどプロトコルは多くあります。さらにIoT化が進むにつれて、その先のセンサに対し、ゲートウェイを介してRS-485やRS232C等への変換を必要としているかと思います。このような構成をリアルタイム性の高い産業ネットワークへ再構築するには10Base-T1Sが最適かもしれません。その利点のご紹介と、イーサネットの概要と併せてご紹介します。
1. 10BASE-T1Sの利点
主に以下の特長があります。
- バス型で複数接続できる。(Hubを不要とするマルチドロップ方式)
- IPだから上位の高速イーサネットと直結(Gateway不要)
- 伝送路上の通信の衝突を回避。(PLCA方式)
- 電力給電可能(PoDL規格を提供)
これら特長を普及しているシリアル通信規格と比較・整理すると以下のようになります。
Legacy SPI | Legacy I2C | UART | RS-232C | RS-485 (2線) |
10BASE-T1S | |
---|---|---|---|---|---|---|
通信速度 | ~50Mbps | ~1Mbps | ~500kbps | ~20kbps | ~10Mbps | ~10Mbps |
伝送距離 | 短距離 (基板上) |
短距離 (基板上) |
短距離 (基板上) |
~15m | ~1200m | ~15m |
接続数 | 1対N | 1対N | 1対1 | 1対1 | N対N | N対N (衝突回避可) |
信号本数 | 4+GND | 2+GND | 2+GND | 3~9 | 2+GND | 2 |
IP通信 | × | × | × | × | × | ○ |
電力供給 | × | × | × | × | ○ | ○ |
車載分野から生まれたシングルペアイーサネット。産業分野で活躍が見込める?
自動車業界では自動運転やCO2削減の議論が進み、カメラやセンサ等の接続機器増加に伴いデータ量が膨大に。一方、CO2削減や燃費改善においては車両軽量化を進めなければなりません。
データ増に伴うケーブル増は認められませんでした。これは、主に使用されているCAN(1Mbps)と同じUTPケーブルを用い、かつ100Mbps以上の高速化へのチャレンジでした。結果、1Gbpsの1000BASE-Tをベースとしたシングルペアイーサネット(SPE)の規格化が進み「100BASE-T1」が策定。その後に「1000BASE-T1」。さらには「Multi-Giga」が規格化されようとしています。今後さらにIIoT化の波が加速し、産業分野でも同様の動きがあるかもしれません。
2. Ethernet 10BASE-T1Sの活用例
■センサネットワークのセンサハブ(Gateway)
複数のセンサ情報を取り纏め、IPにてクラウドへ上げるシステムにて、従来はセンサ向けの固有のI/Fを利用し、コネクタやケーブルはセンサの数だけそれぞれGatewayへ接続しています。
10BASE-T1Sのマルチドロップト方式を使うことで、下図のようにコネクタやケーブルを間違いなく減らせます。さらには、センサ等の末端デバイスのプロトコルをIPに統一することで、Gateway機能は不要となり、上位ネットワークへ直結できるので、システム構成の簡素化によるコスト低減が見込めます。
Legacy通信 | 10BASE-T1S | 10BASE-T1S化のメリット | |
---|---|---|---|
PHYデバイスの数 | 8 | 5 | PHYデバイス数削減 |
コネクタ数/ケーブル本数 | 8/4 | 5/1 | ケーブルとコネクタを削減 |
ケーブル内導線数 | 3線以上 | 2線(1ペア) | 安価・軽量化 |
Gateway機能(上位IPネットワーク接続時) | 必要 | 不要 | システムの簡素化 |
3. 無線か、有線か。システムコストを抑えてIoT化を進めるには…
✔ 無線化すると、センサからの受信が不安定にならないか。。。
✔ センサノードを増やしたいが、プロトコル変換やPHYデバイス追加に費用はかけられない。。。
上記のような課題が少しでも考えられる場合、有線でのIoT化をオススメします!!
最新規格の動向もまとめていますので、こちらの解説書も併せて活用してみてください。