【エッジAI入門】概要から開発手順を徹底解説
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- 更新日
- 2024.04.01
- 公開日
- 2024.01.26
話題のAIを活用した商品企画に挑戦してみたいけど、最初の一歩が大きなハードルに感じる――そのような方へ、本記事ではAIの基本的な概要から、実際の開発手順までをご紹介します。AI活用の第一歩を踏み出してみましょう。
1. エッジAIとは?
近年、AI(Artificial Intelligence)の進化に伴い、私たちが思い描くAIの概念も広がりつつあります。AIと聞くと何を想像しますか?
ChatGPT、ロボット掃除機、自動車の自動運転、ドラえもん、etc…。
一般的にAIは、以下の種類に分類されます。
AIのシステムは、大きく「クラウドAI」と「エッジAI」の2種類に分けられます。
クラウドAIは、クラウド上の大規模なデータセンターでAI処理を行う手法です。
エッジAIは、データが生成される現場や近くに搭載された端末上(エッジデバイスやシステム)でAI処理を行う手法です。
クラウドAIとエッジAIの特徴を比較すると、以下の違いがあります。
※クラウドAIはネットワークに依存し、エッジAIはエッジデバイスに焦点を当てます。
特徴 | クラウドAI | エッジAI |
---|---|---|
リアルタイム性 | 低い | 高い |
セキュリティ | 低い | 高い |
計算能力 | 高い | 低い |
柔軟性と拡張性 | 高い | 低い |
用途 | 大規模データ処理、トレーニング | センサデバイス、IoT |
クラウドAIとエッジAIは、それぞれ独自の利点とユースケースがあります。エッジAIはリアルタイム性とセキュリティの観点で強みを発揮し、クラウドAIは高い計算能力と柔軟性で大規模な処理に向いています。AI開発は、特定のプロジェクトやアプリケーションの要件に基づいて、最適なソリューションを構築することが必要です。
本記事では、エッジAIを用いた画像認識についてお話していきます。
まず初めに、AIを用いた画像認識ソリューションの市場予想をご紹介します。
上記のグラフが示す通り、年度を追うごとに市場が拡大すると予想されています。また、それぞれの年度内で最も大きな割合を占めるのは不良品検知ソリューションです。不良品検知ソリューションは、目視では見落としてしまうような、僅かな故障でも検出が可能であるため、品質の向上に役立ちます。
2. エッジAIの搭載事例
以下のような場所でエッジAIが活用されています。
家電
- スマートスピーカー
エッジAIが高速な音声認識を実現し、リアルタイムな会話が可能です。聴きたい音楽をリクエストして再生させたり、天気やニュースの情報をリクエストして読み上げてもらうといったことができます。
- ロボット掃除機
エッジAIで物体を認識し、障害物の回避が可能です。また、家具の配置変更などにより、新たな障害物が追加されても、AIが再度学習するため、自動的に変化への適応を行います。
- エアコン
ユーザのリモコン操作から、エッジAIがユーザの好む温度や湿度を予測します。例えば、「朝は設定温度を通常より3℃上げる」等の動作が可能であり、ユーザが快適な状態を維持します。
産業
- 外観検査
生産ラインの画像からエッジAIが故障検査を行います。目視では見落としてしまうような、僅かな故障であっても検知が可能であるため、不良品のリスクを低減できます。
- 産業用ロボット
エッジAIがロボットの目となり、物体認識を行うことでロボットが自律的に活動します。ロボットは24時間体制での作業が可能であるため、人件費を削減しながら生産性を向上させます。
3. ハードウェアの選定方法(各種ハードウェアのメリット・デメリット・用途)
エッジAIの開発において、最適なハードウェアの選定は、プロジェクトの成功に直結する重要なポイントです。各種ハードウェアにはそれぞれメリットとデメリットがあり、用途によって最適な選択が変わります。以下に、 CPU・GPU・ASIC・FPGAの特徴をご紹介します。
CPU(Central Processing Unit)
汎用的な処理は可能ですが、並列処理は苦手であるため、高度なAIとはあまり相性が良くありません。
GPU(Graphics Processing Unit)
並列処理が得意でAIと相性が良く、画像認識などのアプリケーションをリアルタイムで処理することが可能です。一方で消費電力が高く、高価であるというデメリットがあります。
ASIC(Application Specific Integrated Circuit)
特定用途向けに開発される専用の半導体デバイスです。性能が高く、消費電力が小さいという特徴を持っていますが、柔軟性に欠けており、量産する頃には陳腐化してしまう可能性があります。
FPGA(Field Programmable Gate Array)
論理回路の書き換えが可能であるという特徴を持った半導体デバイスです。柔軟な実装が可能であるため、エッジAI用の半導体デバイスとして注目されています。
それぞれのハードウェアのメリット、デメリット、用途は以下の通りです。
ハードウェア | メリット | デメリット | 用途 |
---|---|---|---|
CPU | - 低消費電力 - 低コスト - 高い汎用性 |
- 処理能力の制約 - メモリ容量の制約 |
- センシング、シンプルな制御 - 小規模なAIタスク |
GPU | - 高速な並列処理 - 浮動小数点演算が得意 |
- 消費電力が高め - 高価 |
- 大規模なAIモデルのトレーニング・推論 - 画像・動画処理 |
ASIC | - 高い専用性 - 低消費電力 |
- 開発コストが高い - 柔軟性が低い |
- 特定のタスクに特化した高性能処理 - 特定用途のアプリケーション |
FPGA | - 高い柔軟性 - 論理回路の書き換えが可能 |
- 消費電力がやや高め - コストが高め |
- 柔軟な処理が必要なアプリケーション |
また、ルネサスエレクトロニクスでは「高い性能と低消費電力」と「進化に対応できる柔軟性」を両立したAIアクセラレータ「DRP-AI」を開発しました。更に、「DRP-AI」を搭載したAIプロセッサ「RZ/Vシリーズ」を提供しています。
4. エッジAIの開発手順
エッジAIの一般的な開発手順は、以下の通りです。企画のフェーズで課題を抽出後、「エッジAIで解決できるか?」を検討します。エッジAIで解決可能な場合は、開発・運用のフェーズに移行していきます。
開発フェーズにおいては、経験やノウハウが必要となりますが、ChatGPTを活用することでエッジAIの開発に成功しました。
このエッジAIは、AIの知識がほとんどないエンジニアが開発しています。AIに学習させるために使用する、画像データの収集に苦戦しましたが、ChatGPTを活用することで大幅に効率化できました。ChatGPTとの開発の過程や、開発中に感じた気づき、メリット、デメリット等を記事にまとめています。詳細は以下のリンクからご覧ください。
また、ルネサスエレクトロニクスが提供するAIアプリケーションライブラリを使用することで、開発フェーズの短縮が可能です。詳細は次項でご紹介します。
※エッジAIの開発手順、実用例を詳しく解説した「組み込みマイコンで実現するAI入門(ウェビナ)」は以下のリンクからご覧ください。
5. リョーサンの提供ソリューション
姿勢推定AIソリューションを提供しています。姿勢推定AIソリューションは、リアルタイムに撮影された映像から人物の骨格検出を行うことが可能であり、人物の行動分析や転倒検知に活用できます。
※姿勢推定AIソリューションの詳細ついては以下のリンクからご覧ください。
姿勢推定による転倒検知の動画はこちらからご覧ください。
ルネサスエレクトロニクスは、 RZ/V2L用として以下のような学習済みのAIアプリケーションライブラリを提供しています。ライブラリはGitHubに公開されており、評価ボードをご用意頂ければすぐに評価を開始できます。
- 人間の頭から人数をカウント
- 指定した境界を通過するオブジェクトのカウント
- 落下・点灯検知
- ヘルメットや安全ベストの着用を検出
- 性別・年齢推定
- 事前に登録された顔の認証
- 指定された種類の動物を検出
- etc
※サンプルアプリケーションは以下のリンクからダウンロードできます。
GitHub - Ignitarium-Renesas / RZV2L_AiLibrary
\\ リョーサン製 エッジAI評価ボード //
当社開発中の評価ボード概要をご覧いただけます
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