【半導体メモリ入門】メモリの特性、まとめました。
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- 更新日
- 公開日
- 2024.02.16
製品開発のキーデバイスの1つであるメモリ。情報処理量や映像の高解像度化、更にはメモリ自体に大容量化が進んでいる中、正しく選定できていますか?
それぞれの適性を把握し、適正なメモリ選定を行いましょう。
1. 代表的なメモリとは?
メモリは、デバイスがプログラムやデータを保存し、必要な時にアクセスして処理に利用する役割を担います。
ここでは、代表的なメモリの特徴をご紹介します。
1-1. 揮発性と不揮発性
メモリには、揮発性メモリと不揮発性メモリの2種類が存在し、これらの特徴のことを持続性と呼びます。
揮発性/不揮発性 | 特徴 |
---|---|
揮発性メモリ |
電源が切れるとデータが喪失します。
実行中のプログラムやデータを一時的に保存するために使用されます。
|
不揮発性メモリ |
電源が切れてもデータが喪失しません。
データを永続的に保存するために使用されます。
|
1-2. 主要メモリの分類
以下は主要なメモリを揮発性と不揮発性に分類した図です。
代表的な揮発性メモリにDRAM・SRAM、不揮発性メモリにNAND Flash・NOR Flash・MRAM・FRAMがあります。
以下の表に、これらのメモリタイプの代表メーカ・持続性・適正アプリケーションをまとめました。
メモリタイプ | 持続性 | 適正アプリケーション |
---|---|---|
DRAM | 揮発性 |
比較的低コストで大容量のメモリを提供するため、DRAMは多くのコンピュータアプリケーションで重要な役割を果たし、高速なランダムアクセスメモリとして広く利用されています。 データ転送速度が低く、主に旧世代のデバイスで使用されているLegacy DRAMと、データ転送速度が速く、主にハイパフォーマンスなデバイスで使用されているAdvanced DRAMがあります。 |
SRAM | 揮発性 |
高速性と信頼性が重要なアプリケーションで使用され、主にプロセッサのキャッシュメモリ、レジスタファイル、バッファなどに採用されます。 一方で、大容量のデータストレージには適しておらず、それにはDRAMやNAND Flashなどの他のメモリタイプが使用されます。 |
NAND Flash | 不揮発性 |
コスト効率が高く、高性能の不揮発性メモリソリューションとして幅広いアプリケーションで使用されており、特にSSDなどの高速データストレージデバイスにおいて広く採用されています。 メモリセルが水平(2D)に配置された2D NANDと、メモリセルが垂直(3D)に配置された3D NANDがあります。 |
NOR Flash | 不揮発性 |
主に組み込みシステムや組み込み制御デバイスで使用され、プログラムコード・ブートローダー・ファームウェア・設定データなどの永続的な保存に適しています。 また、高信頼性が求められるアプリケーションで広く利用されています。 |
MRAM | 不揮発性 |
不揮発性メモリの中でも高速性と信頼性が高いため、高性能コンピュータや組み込みシステム、産業用途などで使用されています。 また、MRAMはデータセンターやエンタープライズストレージの分野でも注目されており、将来的にはより幅広いアプリケーションで利用される可能性があります。 |
FRAM | 不揮発性 |
バッテリーバックアップされたSRAMやNVRAM(Non-Volatile RAM)などの、代替手段として使用され、データログ・組み込みシステム・センサなどのアプリケーションで広く利用されています。 高速性・信頼性・低消費電力・不揮発性といった特徴を持ち、特定の用途において非常に有用です。 |
2. メモリの選定時に必ずチェックすべき項目とは?
ここまでは、代表的なメモリについてご紹介しました。
続いては、メモリを選定する際のポイントについて解説します。メモリの選定時に重要なポイントとして、アクセス速度・持続性・寿命と耐久性・コスト・適正用途の5項目が挙げられます。用途によって選択すべきメモリが変わるため、アプリケーションが意図しない動作になってしまうことを未然に防ぐためにも、各メモリタイプの適正用途を確認しておくことが必要です。適正用途については前章で紹介しましたので、本章では省略致します。
2-1. アクセス速度
アクセス速度とは、メモリに対する読み書きの速さのことです。データ転送速度を重視するアプリケーションの場合は、重要なパラメータになります。システム構成として、メモリのアクセス速度が速いと、システム構築の難易度は上がります。
2-2. 持続性
電源を落とした時もデータを保持し続ける必要がある場合は不揮発性メモリを選択する必要があります。
2-3. 寿命と耐久性
正常にデータを書き込める回数が多ければ多いほど、メモリの寿命は長く、耐久性は高くなります。データの読み書きが多く発生するような場合は寿命と耐久性が高いメモリを選択する必要があります。
2-4. コスト
アクセス速度が速いメモリや、寿命が長い高性能なメモリは高価な傾向があります。用途によって適切なメモリを選択することにより、コストを最小限に抑えることが可能です。
3. メモリ特性マトリクス
ここまで、代表的なメモリと、メモリの選定時にチェックすべき項目について解説しました。
これらの情報をマトリクス図にまとめると、以下のようになります。
項目 | DRAM | SRAM | NAND | NOR | MRAM | FRAM |
---|---|---|---|---|---|---|
揮発性/不揮発性 | 揮発性 | 揮発性 | 不揮発性 | 不揮発性 | 不揮発性 | 不揮発性 |
データの削除可否 | 可 | 可 | 可 | 可 | 可 | 可 |
プログラム可否 | 可 | 可 | 可 | 可 | 可 | 可 |
最小書込み単位 | Byte | Byte | Page ※ | Byte | Byte | Byte |
最小読出し単位 | Byte | Byte | Page ※ | Byte | Byte | Byte |
書込み速度 | Fast | Very Fast | Slow | Slow | Fast | Fast |
読出し速度 | Fast | Very Fast | Slow | Fast | Fast | Fast |
書込み回数 (耐久性) |
∞ | ∞ | 1万~ 10万回 |
1万~ 10万回 |
∞ | 100億~ 1兆回 |
読出し回数 (耐久性) |
∞ | ∞ | ∞ | ∞ | ∞ | 100億~ 1兆回 |
アクティブ消費電力 | Middle | High | Middle | Middle | Low | Low |
スリープ消費電力 | High | Very Low | 0 | 0 | Low | Low |
1GBあたりの価格 | Low | High | Very Low | Middle | High | High |
※Page(ページ)は通常、数キロバイトから数十キロバイトのサイズで、メモリ内での最小単位です。
データの書込み時はPage全体が一度に書き換えられ、データの読出し時もPage単位で読み出されます。
4. まとめ
本記事では、各メモリの特徴や選定のポイントについて紹介しました。適正なメモリ選定のヒントになりましたら幸いです。
リョーサンでは各種メモリやストレージ化された製品群を多数取り扱っております。メモリ選定など、メモリに関するお困りごとがございましたらお気軽にご相談ください。
最後になりますが、より詳細な表形式のメモリリストを以下に添付させていただきます。様々なメモリのスペックを比較することができますので、メモリ選定のヒントになると思います。
(執筆者:大迫 尚臣 / 編集者: 内田 将之)