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知って安心、静電タッチスイッチの仕組みと導入方法

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2025.01.31

 フラットでシームレスな筐体デザインは、現在のデザイントレンドのひとつです。クリーンで洗練された印象をもたらすことから、製品のブランドイメージ向上にもつながっています。静電容量タッチスイッチは、このような優れたデザインに自然と溶け込むユーザインタフェースです。

 本記事では、静電容量タッチスイッチの搭載検討を始める電気設計者に向けて、タッチ検出の仕組みや開発フロー、制御ICの選び方をご紹介します。

1.静電容量タッチスイッチの仕組み

1.タッチスイッチの部材構成

図:タッチスイッチの部材構成

 タッチスイッチのシステムは、人が操作する位置にあるセンサ、センサと制御ICをつなぐ配線、タッチの有無を検出する制御ICで構成されます。タッチスイッチのセンサは、基板上の銅箔パタンです。

 センサの基板には一般的なプリント基板(PCB)はもちろん、曲面状の筐体形状に合わせるためにフレキシブル基板(FPC)も使用できます。操作面をバックライト照光するために、銅箔の代わりに導電性ポリマーなどを印刷/塗布した透明樹脂フィルムが使用されることもあります。

※導電性ポリマー:光透過性と導電性を持ったフィルムに印刷/塗布できる材料

2.測定方式の種類

 タッチ検出は、指が触れているかどうかによって変化する静電容量を測定することで行われます。この容量を検出する方式として「自己容量方式」と「相互容量方式」の2種類があります。方式によってハードウェア設計が異なるため、開発の初期段階でどちらの方式を採用するか検討しておく必要があります。

測定方式名

自己容量方式
(Self Capacitance Method)

相互容量方式
(Mutual Capacitance Method)

センサ電極
配線トポロジ
例:センサ9個
測定する容量 送受信電極とGND間の静電容量 送信電極と受信電極間の静電容量

 自己容量方式は、1つのタッチセンサに1つの送受信電極を設けます。電極と制御ICは、タッチセンサ1つずつ独立して結線します。制御ICは電極とGND間の容量を測定し、人がタッチしたときは容量が増えることでタッチON検出が行われます。
 相互容量方式では、1つのタッチセンサは1ペアの送信電極と受信電極で構成します。電極と制御ICの結線は、送信と受信をマトリクス構成にすることにより複数のセンサで配線を共有できます。制御ICは送信電極と受信電極間の容量を測定し、人がタッチしたときは測定容量が減ることでタッチON検出が行われます。

3.測定方式の選び方

 それでは、どちらの測定方式を選べばよいか考えてみましょう。お客様製品のタッチスイッチの特長に応じて、おすすめの方式を表にしましたので参考になさってください。

製品のタッチスイッチの特長 自己容量方式
(Self Capacitance Method)
相互容量方式
(Mutual Capacitance Method)
スイッチ数が多い
センサ配線長が長い ×
防水対策が必要
手袋操作など高感度が必要
設計容易性

 

 スイッチ数が多い場合は、複数センサの配線を共有できる相互容量方式を採用することで、配線や制御ICのピン数を抑えられます。タッチ操作面の防水対策(水付着時の誤タッチ検出防止)が求められる場合は、アクティブシールドと呼ばれる対策を追加できる自己容量方式のほうが有利です。そのほか配線長や感度、設計容易性にも違いがありますので、製品での優先度に応じて検討を進めていきます。

2.開発フロー

 静電容量タッチスイッチの基本的な開発フローを図示しました。従来のメカスイッチに比べて設計時に考慮が必要な内容が増えますので、主なポイントをご紹介します。

ハードウェア開発

 レイアウト設計におけるセンサ電極の形状設計や配線設計が重要です。センサ電極の形状は、タッチ検出の感度などユーザの操作感に直結します。配線設計では、センサ配線をできるだけ短くし、周囲からのノイズの影響を受けにくくする配慮が必要です。各制御ICベンダが設計時の注意事項をまとめたアプリケーションノートも用意しています。

ソフトウェア開発

 制御ICにマイコン(静電タッチ検出回路内蔵)を用いる場合は、マイコンベンダが提供している静電タッチ検出用のソフトウェアライブラリを使うことが一般的です。ライブラリを使用することによって、静電タッチ検出をアルゴリズムレベルから開発する必要はありません。ライブラリに用意されているAPI関数を用いて、センサのスキャン実行や各スイッチのON/OFF検出結果を簡単に得られます。
※3章でご紹介する専用ICを使用する場合には、ソフトウェア開発は不要です。

チューニング

 ハードウェアとソフトウェアの準備ができたら、いよいよタッチ操作の動作確認です。静電タッチスイッチはメカスイッチと異なり、検出感度やノイズ耐性を調整するパラメータの最適化を行う必要があります。この作業をチューニングと呼んでおり、実際にタッチを行いながらユーザの操作感を確認します。もしノイズによる誤タッチ検出などの課題があった場合は、ノイズ耐性を強化するパラメータを調整します。

3.制御ICの種類

 静電タッチスイッチの制御ICは、大きく分けて静電タッチ専用ICマイコン(静電タッチ検出回路内蔵)があります。専用ICはソフトウェア開発が不要なので、接続するだけで簡単に動作します。マイコンは静電タッチ以外の製品機能も取り込めるため、設計柔軟性に優れています。

図:静電タッチ専用ICとマイコンの機能

 お客様の既存製品のメカスイッチを静電スイッチに置き換える場合は、専用ICのアドオンが便利です。特にIO出力タイプの専用ICは、お客様の既存マイコンのメカスイッチ用ピンに接続するだけで使用できる可能性があります。既存マイコンの更新も視野に入れる場合は、静電タッチ検出回路内蔵のマイコンへの置き換えはいかがでしょうか?部品点数を増やすことなく静電スイッチ化を実現できます。

項目 静電タッチ専用IC マイコン
静電スイッチ化の容易性 既存システムにアドオン対応 他機能も含めたマイコン置換対応
ソフトウェア開発 不要 必要
タッチON/OFF出力形式 IO出力(High/Low)、シリアル通信 ライブラリのAPI関数にて取得
チューニング手法 端子設定、シリアル通信経由で設定 ライブラリ内のパラメータ設定
機能の拡張性 機能追加不可 マイコン周辺機能を使用可

4.制御ICを探すときの着目ポイント

 制御ICの情報を収集する際、どのようなポイントに着目すべきでしょうか?静電タッチならではの独自機能などについてご紹介します。

1.測定方式

 制御ICが対応している測定方式を確認しましょう。自己容量方式と相互容量方式の両方をサポートする制御ICが多くなってきましたが、自己容量方式のみをサポートする制御ICもあります。

2.防水対策・ノイズ対策の機能

 センサ付近への水付着や外来ノイズは、制御ICの容量測定結果に悪影響を及ぼします。最悪、誤タッチ検出に至る場合もありますので、制御ICはノイズを抑える機能を搭載していることが一般的です。機能によっては、ハードウェアで対策を仕込んでおく必要もありますので、どのような機能が搭載されているか確認しておきましょう。

3.評価環境

 開発フローのチューニング工程では、下図のような評価環境を使います。制御ICの容量測定結果をパソコンでモニタして、タッチ検出の感度が十分取れているか、大きなノイズがないか等を確認するためです。

図:チューニング工程での評価環境

 専用ICやマイコンのソフトウェアライブラリは、容量測定結果などのデータをシリアル通信で出力する機能を備えています。パソコンでモニタ表示するGUIアプリケーションも提供されていることが一般的です。中にはモニタだけではなく、チューニングのパラメータ変更をリアルタイムで行える機能を搭載したタイプもあり、チューニング作業の効率が向上します。制御ICベンダから使い勝手に優れた評価環境が提供されているか、確認しましょう。

5.まとめ

 静電容量タッチスイッチの検出の仕組みから、制御ICを探すときの着目ポイントをご紹介しました。制御ICの動作や評価環境について、より理解を深めて頂くためにはタッチスイッチの評価ボードが役立ちます。評価ボード上にセンサと制御ICが備えられていて、タッチの容量測定結果をパソコンでモニタする実動作を簡単にご体験いただけます。タッチスイッチの製品への搭載に向けて、第一歩を踏み出しましょう。

(執筆/編集者:大内崇臣)

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