電源システム設計のキホン(認証篇)

安全規格認証取得済みの電源を使用する場合の選択肢

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  • 更新日
  • 2023.05.09
  • 公開日
  • 2023.05.09

 ACDC電源を使用した電源システムの設計者が、昨今不足しています。電源システム設計者に求められるのは高度な技術知識と認証のノウハウです。今回は認証に関するキホンと、開発リソースの解決策の1つをご紹介します。

1.電源システムに関わる安全規格

 飛躍的に通信速度が上がり、私達の生活を豊かにしてくれる5G通信。
しかしながら、5G対応装置となると、ネットワークプロセッサやFPGA等の高速かつ大容量データを処理するCPU駆動の為に、低電圧かつ大電流に対応した電源を複数用いなければなりません。
電源設計において重要なキーワードは「中間バスアーキテクチャ」。
これは屋外設置による温度耐性や、密閉筐体での放熱性を考慮した設計方法です。

 安全規格は地政学的に4階層に分類できます。

国際規格    > 国際的な規格(ISO,IECなど)

地域規格    > EUなど特定地域での規格(ENなど)

国家規格    > 各国内での規格(UL,CCC,JISなど)

地区・団体規格 > 特定業界や企業内での規格

 EU・アメリカ・日本においても、独自の安全規格を策定しています。

規格例 概要 認定マーク
EN EU加盟国における統一規格
EU指令適合を表すためのCEマーク制度あり
UL アメリカにおける電気製品に対する安全規格
最終製品や内部部品別に認証が存在する
電気用品安全法 日本における電気製品の安全規格
特定電気用品、特定以外の電気用品が対象

 規格認定を取得した製品には認定マークを使用することができます。
各国内にて製品の流通・販売には認定が必要な場合がほとんどです。

2.安全規格認証取得済みの電源を使用する場合の選択肢

 ACDC電源の開発は、高度な技術知識と認証のノウハウが必要となり、自社開発の難易度は非常に高いのが実態です。そのため、多くのお客様は開発リソース課題に悩まされています。
 本記事では、その悩みに対する提案事例や、フルカスタム電源・セミカスタム電源・汎用電源のメリット デメリットをまとめましたのでご参考にしてください。

提案事例①

お客様情報:FA機器メーカ勤務、筐体設計、30代男性
お悩み:自社製品へ「標準電源」を組込む為の注意事項がわからない

標準電源を使用し筐体に組み込む際、安全規格や熱対策などの注意事項がわかりません。

お客様

リョーサン社員

お問合せありがとうございます。
まずはお客様の要求仕様をお伺いしたく重視するポイントがあれば教えてください。

標準電源を複数個並列使用を検討しております。想定している筐体のサイズ・温度・環境制約はこちらになります。

お客様

リョーサン社員

わかりました。弊社がお客様のお悩みを解決しますので色々と教えてください。
標準電源でのご提供だけでなく、板金設計及び筐体に搭載した状態でのご提案も可能です。

提案事例②

お客様情報:FA機器メーカ勤務、回路設計、20代男性
お悩み:セミカスタム電源をやりたいが工数がない

フルカスタム電源は工数がなく検討ができません。標準製品を利用して電源モジュール化する手段はありませんか。

お客様

リョーサン社員

お問合せありがとうございます。
それではオンボード電源と周辺回路を組み合わせた製品をご提案いたします。
お客様の装置側で安全認証を取得する必要がある場合、お客様の負担を減らす為に、取得規格に応じたCBテストレポートの申請も行います。

教えて頂いてありがとうございます。昨今、ノイズ対策に多くのリソースを割いており苦労していますが、リョーサンさんで解決できますか?

お客様

リョーサン社員

もちろんです。もう少し詳細をお伺いした後、弊社で検討させてください。
御社セットとの組合せ評価等の協働検証や、モジュールへの対策追加も可能です。

3.電源選定における3つの選択肢

電源選定において、3つの選択肢があります。

①フルカスタム電源
 顧客仕様に合わせて開発できます。しかし、開発リードタイムがどうしても長くなり、初期費用が高くなる場合もあります。

②セミカスタム電源
 認証取得済の標準電源を用いて筐体へ組込んだり、周辺回路を追加して特性や機能を少し変更する開発手法です。これによりお客様のご要望に沿ってカスタマイズすることや、開発リードタイムの大幅削減が可能となります。
 弊社では各種安全規格の認証取得済みでラインアップが充実しているコーセル製の標準電源を用いたセミカスタム電源を提案しています。

③汎用電源
 フルカスタム電源やセミカスタム電源に比べ、入手性が良いです。しかし、完成品の為、お客様の仕様に沿ったカスタマイズができない点がマイナスに働くかもしれません。

 どの手法も安全規格認証を取得した状態で電源を手に入れることができます。
それぞれの特徴を比較表に纏めましたので検討する上で参考にしてください。

フルカスタム電源 セミカスタム電源 汎用電源
入手性 受注生産につき市場在庫等は無い 受注生産につき市場在庫等は無い メーカ在庫あれば即納可
汎用品の為市場在庫等の入手も可能
最適化 顧客セットに最適化された電源開発ができる 顧客セットに最適化された電源開発ができる 汎用電源の為、使いこなしが必要
数量 仕様・コスト等の要因によりMOQ発生 ※仕様により最低数量は異なる 仕様・コスト等の要因によりMOQ発生 ※仕様により最低数量は異なる 1台より購入可能
単価 安価
案件毎に取り決め
安価
案件毎に取り決め
定価設定あり、案件によっては特価対応も可
初期費用 必要 必要
フルカスタム電源より安価
不要
特徴
  • 部品単位で顧客選定基準や環境基準に遵守した設計が可能
  • サイズや性能に対する特別要求が可能
  • 開発リードタイムの大幅削減が可能
  • 汎用電源では物足りない場合、少し仕様を変更し顧客の要求を満たす事が可能
  • 最終製品製品化まで短時間
  • 企画台数少量

4.まとめ

 フルカスタム電源、セミカスタム電源、汎用電源でそれぞれ一長一短があります。電源開発のリソース技術的なお困りごとがございましたら弊社プロフェッショナルに相談してみませんか?
 まずは検討を具体化していく為に、本記事に記載している内容の他、「電源システム開発の進め方と3つの選択肢」をまとめましたので、ご興味ございましたら下記リンクよりご確認ください。

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