テスラ「サイバートラック」から見る技術トレンド
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- 更新日
- 2025.04.28
- 公開日
- 2025.01.27

2023年に登場したテスラの「サイバートラック(Cybertruck)」。Model 3(販売時期: 2017年7月)とサイバートラック(販売時期: 2023年12月)を比較すると6年間でシステムを構成しているコンポートが大幅に進化しています。本記事では、そのサイバートラックの進化について見ていきます。
1. Power Conversion System(PCS)の比較
重量が約半分に
サイバートラックでは、車の充電や車載電装系への電力供給を担うPCS(Power Conversion System)が大幅に進化し、Model 3と比べるとPCSの重量が11kgから5.5kgへと約半分に軽量化されています。
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Model 3
重量:11kg
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サイバートラック
重量:5.5kg
電解コンデンサは何処に
また、内部を見ると、Model 3は一般的な回路で構成されていますが、サイバートラックはPFC回路で使用される電解コンデンサは見当たらず、非常にすっきりとした電源となっています。電源などで製品寿命のボトルネックとなる電解コンデンサをどのようにして無くしたのか?非常に興味深い電源に進化しています。
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Model 3
電解コンデンサ有り
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サイバートラック
電解コンデンサ無し
多くのAC/DCコンバータは、力率改善やAC入力のゼロクロスポイントのDC出力を保持するために、PFCと共に電解コンデンサが使用されます。Model 3は電解コンデンサを使用していますが、サイバートラックでは使用されていません。
Model 3の回路を概略ブロック図に分解すると以下のようになります。AC/DCはPFC回路を使用しており、後段のDC/DCはLLCを使用して絶縁を行い、出力フィルタを介してBATT出力となっています。また、低圧出力DC/DCはLLCを使用して、比較的オーソドックスな回路構成となっています。

サイバートラックの回路を概略ブロック図に分解すると以下のようになります。AC/DCの回路方式はマトリックスコンバータ(Matrix Converter)方式を使用することで、電解コンデンサを使用せずにAC/DC変換が行われていると推測されます。
高圧入出力は800V対応が行われており、マトリックスコンバータの1次側と2次側はSiCが使用されています。

【概略回路構成】

マトリックスコンバータは電解コンデンサレスで出力電圧を可変させることが可能な制御方式で、出力電圧を調整する主な手法は以下となります。
- 空間ベクトル変調(SVM:Space Vector Modulation)
出力電圧を希望の値にするために、入力電圧ベクトルを時間的に切り替えて合成 - パルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)
スイッチングデバイスのオン時間を調整することで出力電圧を制御する方法。
2. Tesla 車載アーキテクチャの進化
Model S から Model 3
少し話は変わりますが、Model S(2012年にリリース)からModel 3にかけては、共に12Vのアーキテクチャでありながら大幅に進化しています。

Model S | Model 3 | |
---|---|---|
低電圧システム | 12Vシステム | 12Vシステム |
補助バッテリ | 蓄電池(初期)→リチウムイオン | リチウムイオン |
配線総長 | 約3,000m | 約1,500m |
配線の複雑さ | 複雑 | シンプル |
電源システムの進化(12V→48V)
サイバートラックは、次世代の設計思想を反映したテスラの新型車両であり、従来の12Vシステムではなく48Vシステムが採用されています。

- 48V電装システムは、電流を削減しながら高電力機器に対応可能。
- ケーブル重量を軽減し、電力損失を最小化。
- 高負荷の電装品(例:エアサスペンション、エアコンプレッサ、パワフルなライトバーなど)に効率的に電力を供給。
車載アーキテクチャの電力量

車載電装システムの電力量は利便性の向上と共に増加しています。サイバートラックのPCSは48Vに対応しており、48Vアーキテクチャは今後の車載システムのトレンドの一つになると思われます。
もしかしたら、テスラは既に次の世代を描いているのかもしれません。次世代がどの様に変化するか非常に楽しみです。

3. 電源解析ウェビナ
リョーサンでは、メーカの電源を分解、解析したウェビナを実施しております。過去の電源解析ウェビナをご覧になりたい方は以下ボタンからご視聴下さい。