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パワー半導体って何?初心者が知っておきたい基礎知識

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2024.12.27

 近年のエネルギー効率向上の社会的要請や、技術進歩による小型化、高集積化に伴い、パワー半導体の普及が加速しています。今回の記事では多くの産業分野で重要な役割を果たしているパワー半導体について解説していきます。

1.パワー半導体とは?

 パワー半導体は一般的な半導体と比較して、より大きな電力を効率よく制御・変換するための電子部品です。高電圧・大電流を扱う能力を持ち、電力変換やスイッチング、制御を行う役割を果たします。

 例えば電気自動車において、直流を交流に変換しモータを駆動する「インバータ」や、バッテリーの電圧を変換する「コンバータ」「レギュレータ」に使用されており、より高効率に動作させるために重要な電子部品になります。

パワー半導体が使用される4つの主な用途

  • 直流での電気を交流に変換する
  • 交流を直流に変換する
  • 交流の周期を変える
  • 入力される電圧を所望の電圧値に変換する

 代表的なパワー半導体としては整流の用途で使用される「ダイオード」スイッチングや増幅の用途で使用される「トランジスタ」「サイリスタ」「トライアック」などが挙げられます。

2.身近な製品でのパワー半導体の使われ方

 実は私たちが普段使用している電化製品の中にも多くのパワー半導体は使用されています。ここからはエアコンの簡略化したブロック図を基に、どのような役割でパワー半導体が使用されているのかを見ていきましょう。

 

  1. コンセントから入力されるAC電圧をブリッジダイオードにより整流(DC電圧)している
  2. エアコンを制御するマイコンの電源供給用のACDCコンバータにMOSFETとダイオードが使用されている
  3. エアコンから風を出すためにインバータを使用してファンモータを制御している
  4. MOSFETをオン・オフ制御することでリレーを通してバルブを開閉している

3.パワー半導体の種類

 エアコンのブロック図で使用されていたパワー半導体について解説していきます。

3-1.ダイオード

 ダイオードとは電流を一方向にのみ流す電子部品で、 アノード(A)とカソード(K)の2端子で構成されています。

 ダイオードが電流を流すために必要な電位差のことをVFといい、アノードの電位がカソードの電位よりVF分高い場合、電流はアノード側からカソード側へと流れます。逆にカソード側からアノード側へは電流は流れません。

 

パワー半導体としての使用用途

 パワー半導体として使用されるダイオードは、大きな電力を扱う電子機器やシステムにおいて、電力の制御、変換、保護の役割を果たします。種類ごとの特性を活かし、大電流や高電圧の用途で利用され、エネルギー効率向上や電力システムの進化に貢献しています。

 パワー半導体としては整流ダイオード、ショットキーバリアダイオード(SBD)ファストリカバリーダイオード(FRD)の三つが一般的に使用されています。

種類 特徴 耐圧 活用用途例
整流 一般的なダイオード ダイオードブリッジなど
SBD

低VF

(電圧降下が低いため損失が少ない)

100V~250V程度

DC-DCコンバータ

AC-DCコンバータ

FRD

逆回復時間が早い

(スイッチング時の損失が少ない)

200V~650V程度

AC-DCコンバータ

高耐圧のインバータ回路

 

ブリッジダイオード

 エアコンのブロック図に戻ってダイオードを見てみると、4個のダイオードをブリッジ(橋)のように組み合わせて使用しています。これを全波整流回路(ダイオードブリッジ回路)と呼び、交流を整流することができます。

3-2.トランジスタ

 トランジスタとは電流や電圧を制御して、増幅やスイッチングを行う半導体デバイスです。

 一般的にはバイポーラトランジスタ、FET、IGBTの3種類に分類され、それぞれ駆動方法や特徴に違いがあり用途に応じて使い分けられます。

バイポーラトランジスタ

 バイポーラトランジスタはベース(B)、コレクタ(C)、エミッタ(E)の3端子で構成されています。ベースに流れる小さな入力電流IBで、コレクタ-エミッタ間に流れる出力電流ICを制御する、電流駆動型の半導体デバイスです。

 

MOSFET

 MOSFETは、ゲート(G)、ドレイン(D)、ソース(S)の3端子で構成されています。ゲートに電圧を印加する事によってドレイン-ソース間の電流を制御する、電圧駆動型の半導体デバイスです。

IGBT

 IGBTは入力部がMOSで出力部がバイポーラの構造となっており、MOSFETとバイポーラトランジスタの良いとこどりをしたパワー半導体で、ゲート(G)、コレクタ(C)、エミッタ(E)の3端子で構成されています。ゲートに電圧を印加する事によってコレクタ-エミッタ間の電流を制御する、電圧駆動型の半導体デバイスです。

 

パワー半導体としての使用用途

種類 特徴 駆動方式
バイポーラトランジスタ

入力インピーダンスが低い

(ノイズ耐性が高い)

電流駆動型

MOSFET

スイッチング速度が高く、低圧領域においてオン電圧が低い

(オン抵抗が低い)

電圧駆動型

IGBT

高圧領域においてオン電圧が低い

(飽和電圧が低い)

電圧駆動型

 

 特徴や動作周波数、出力容量などを見て適材適所で使用することが重要です。

動作周波数と出力容量でみる、各トランジスタの適用範囲

 

三相インバータ

 エアコンのブロック図では、エアコンから風を出すためのファンモータの制御を三相インバータを使用して行っております。

 三相インバータとは、直流電源(DC)を三相交流電源(AC)に変換する電力変換回路です。この回路では主にMOSFETやIGBTをスイッチング素子として使用しています。三相それぞれで上側・下側のトランジスタをPWM制御することにより効率的に電力を変換し、モーター制御や電力供給などの多様な用途で使用されています。

 

4.まとめ

 パワー半導体は高い電力や電圧を扱うことができ様々なセットに使用されています。今後も再生可能エネルギーの普及や電動車の増加、AI向けデータセンターの増加に伴ない、パワー半導体の需要は急速に拡大していくでしょう。パワー半導体は持続可能な社会の実現に向けて欠かせない技術の一つとなっています。

(執筆者、編集者:安西 滉樹)

 パワー半導体は日々進化しており、SiC/GaNなど新素材を用いた高性能なパワー半導体が登場しています。 以下記事で解説しておりますので、合わせてご覧ください

 

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