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GaNパワー半導体とは?SiCとの棲み分け/性能比較/設計時の注意点を解説

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  • 更新日
  • 2025.08.29
  • 公開日
  • 2024.05.29

 従来はSi(シリコン)パワー半導体が主流で、多くの電子機器や産業機器に使用されてきましたが、デジタル技術の急速な発展に伴って、より高性能で高効率な半導体が世界中で求められています。そこで、次世代パワー半導体としてSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)が注目を集めています。

1. GaNパワー半導体とは?

 GaN(窒化ガリウム)とは半導体の材料となる化合物です。GaNパワー半導体は高速スイッチング・高耐圧の特徴を持っており、特性を生かした設計をすることで製品の小型化・高性能化が実現できます。そのため、電源・インバータのキー部品としても注目されています。皆さんの身の回りに、従来品と比べて小型・軽量なアダプタを見かけたら、それはGaNパワー半導体による技術革新の成果かもしれません。

小型・高性能な電源・インバータを実現するために必要な特性

要求特性 製品設計における効果
動作速度の高速化 高速スイッチング動作によるコイル・トランスの小型化
高耐圧での耐久性 高電圧化による配線面積低減などによる小型化
低電力損失化 低損失化による放熱部品(筐体・ヒートシンク)の小型化

2. パワー半導体の材料別性能比較

 パワー半導体の性能は、使用される材料によって大きく異なります。これは、各材料が持つ物理的な特性が異なるためであり、導電性や耐圧性、熱伝導性などが性能に直接影響を与えます。こうした材料ごとの性能差を評価するために用いられる指標として「バリガ性能指数」があります。

バリガ性能指数

 バリガ性能指数は、シリコンに対する半導体物質の性能を表す指標であり、シリコンを基準値1とした相対値で表現されています。また、数値が高いほどパワー半導体に適した材料であることを示しています。

Si SiC GaN
物理特性 バンドギャップ(ev) 1.12 3.26 3.39
電子移動度(cm2/Vs) 1400 1000 900
絶縁破壊電界強度(MV/cm) 0.3 2.8 3.3
バリガ性能指数 1 500 930

 GaNはSiと比べて、バンドギャップが約3倍、絶縁破壊電界強度が約10倍と高く、総合的な性能指数(バリガ性能指数)としてはSiCが500、GaNが930と圧倒的に高くなります。つまり、同じ耐圧条件下でGaNを用いれば、Siの1/930のオン抵抗で設計可能となり、効率・小型化・発熱抑制に大きく貢献します。

  • ​バンドギャップ…バンドギャップは材料の絶縁性や熱的安定性に関係し、間接的に高耐圧設計に寄与
  • 電子移動度…電子移動度はキャリアの移動速度に関係し、高速動作や高周波応答に寄与
  • 絶縁破壊電界強度…半導体がどれだけ高い電界に耐えられるかを示す指標であり、高耐圧設計に寄与

3. GaNとSiCの棲み分け

 GaNパワーデバイスは高速なスイッチング特性に特徴があるため、スイッチング電源などの小型・高周波用途で有利な特性となります。

 横軸は動作周波数、縦軸は電力容量です。Siは従来から使用されている半導体であり、幅広い領域で使用されています。次世代半導体であるSiCとGaNはそれぞれの優位性に応じて使い分けられており、より高電力側(上側)ではSiC、より高周波数(右側)ではGaNが使用されています。

4. GaNパワー半導体設計における注意事項

 GaNを使用した設計については注意するべきPOINTがあります。
 パワーMOSFETのように動作しますが、SiからGaNへの置き換えだけでは、GaNの特性を生かした小型・高性能な設計にはなりません。 電源・インバータの小型・高性能化を実現するためには「スイッチング周波数を上げる」もしくは「低損失にする」必要があります。GaNは高速スイッチングと低損失が可能なデバイスなので小型・高性能を実現出来る可能性は十分あります。しかしながら高周波スイッチングや小型化設計は、ノイズや不安定動作とのトレードオフの関係にあるため、設計については注意が必要です。

 具体的には、基板設計時のレイアウトやパターンニングが非常に重要であり、寄生インダクタンスを最小限に抑え、電圧ループと電流ループを分ける設計が必要です。その他特性を生かした小型高効率な設計を行うには、最適な周波数設定、周辺部品(インダクタ・トランス、コンデンサ)の最適化、機構・放熱構造の小型化など組み合わせる必要があります。

5. まとめ

 GaNパワー半導体の基本特性から、SiやSiCとの性能比較、用途ごとの棲み分け、設計時の注意点までを網羅的に紹介しました。AIやデータセンタにおける電力効率の向上といった課題に対しても、次世代パワー半導体であるGaNの活用が進んでおり、その応用範囲は今後さらに拡大していくことが期待されます。今後も最新技術動向や関連情報を継続的に発信してまいりますので、よろしくお願いいたします。

執筆者:森田 文彦、信田 正人 編集者:古澤禎崇

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