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【エンジニア不足】電源設計における解決方法とは?(シミュレータ編)

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  • 更新日
  • 2023.11.13
  • 公開日
  • 2023.08.25

 アナログ設計は高度な技術知見や経験が求められ、人材育成にも時間がかかるというハードルの高さもあることから、日本国内ではアナログエンジニア不足という大きな課題があります。

 本記事では、電力効率が重要視される今、電源設計も効率的に行っていくためのシミュレータ開発についてご紹介します。

1. 電源分野におけるアナログエンジニアの人手不足

1-1. アナログエンジニアを目指す人材不足の課題

 近年、アナログエンジニアを目指す学生の数は減少しています。アナログエンジニアの仕事に普段接する機会が少なく、先端の研究や技術を探求している学生たちの注目が集まりにくい傾向にあります。反対にAI、メタバース、クラウドなどのデジタル化は耳にすることも多いため興味を持ちやすい傾向があります。

 アナログ技術は、電子デバイスやシステムの基盤となる技術であり、デジタル時代においてもその重要性は変わりません。しかし、その役割や魅力が直感的に伝わりにくいことで、学生たちの関心を引くのが難しく、エンジニア不足に繋がっています。

 社会全体としては、アナログエンジニアの技術や知識の継承と発展が求められているので、学生たちにその価値を正しく伝え、興味を持ってもらう取り組みがより一層必要となってきています。

学生の興味は、、、

  • アナログ電気回路

    アナログ電気回路

  • AI、メタバース、クラウドなど

    AI、メタバース、クラウドなど

1-2. 若手の育成(技術継承)の課題

 機器の小型化、低コスト化や高品質化は、高度な電源技術が必要不可欠で、日本の高品質な家電製品を支えてきた重要な技術の一つです。

 しかし、多くの製品を短期間で開発するサイクルと人件費を抑えるために、ノウハウを持った限られたエンジニアに業務が集中し、技術の属人化や高年齢化が進行してきました。そのため、業界全体で技術継承の課題が顕在化してきています。

 電源やアナログ設計は技術知見のみならず経験が求めらるため、人材育成に時間がかかり、技術継承のハードルを高くしています。

1-3. 電力効率化が求められている「EV市場」から見る課題

 上の画像はEV車のOBC(On Board Charger)+DCDCコンバータの外観写真です。

 PFC部はSiC MOSFETを使用しており、高効率な回路設計が行われています。また、DCDCコンバータ部はLLC方式(共振型)が使われており、こちらも同様に高効率な回路設計が行われています。

 LLC方式の最適化にはノウハウが必要となりますが、カットアンドトライの感覚に頼った設計の場合、多くのトランス試作回数が必要となり、結果的に設計に多大な工数がかかる可能性があります。特に不慣れなエンジニアは苦労するでしょう。

 では、「技術継承」、「効率的な最適設計」の課題に対する解決策はあるのでしょうか?


2. 課題を解決するシミュレーション開発

 「技術継承」、「最適設計」の課題に対する解決策として、シミュレーション開発の活用が挙げられます。(回路シミュレーション、熱シミュレーション、モデルベース開発)

 シミュレーション開発では、以下のような効果が見込めます。

技術継承に対して

 ノウハウや開発手順を言語化することで、属人化されていた作業を定量化することが可能

最適設計に対して

 カットアンドトライの回数を減らすことで、サンプル作成の期間を大幅に短縮することが可能


3. 電源エンジニアに最適な高速回路シミュレータ

 シミュレーション開発は多くのメリットがありますが、部品メーカが提供する多くのモデルがあるSPICE系の汎用シミュレータでは以下のような課題もあります。

  • シミュレーション時間が長い
  • 実機と合わない
  • スイッチング損と導通損の切り分けが難しい
  • コイルなどのパラメータ設定が難しい
  •  これらの課題の解決策の一つとして、スマートエナジー研究所が開発した「電源パワエレ向け高速回路シミュレータ “Scideam”」を活用する方法があります。

  • CK000190_PowerSupply_051-.png


 Scideamの特徴を見てみましょう。

1. 高速安定解析

  • 独自の解析アルゴリズムにより、解析時間と収束性問題の両方を解決
  • スイッチングコンバータを高速安定解析することが可能

2. 損失解析

  • 全自動で高速に損失解析を行うことが可能
  • すべての素子に対する損失を一覧表示
  • スイッチング損失を自動計測

3. モデルベース開発

  • Simulinkと接続し、モデルベース開発環境を構築


4. リョーサン製 3kW48VDCDCコンバータ

 リョーサンでは、小型・高効率なマイルドハイブリッド向け3kW48VDCDCコンバータを開発しました。シミュレーション開発を活用により、開発効率化と電源の高効率化を実現しています。

■特徴

  • モデルベース開発(MBD)によるシミュレーションを活用した開発効率化
  • マイコン制御によるデジタル電源構成による、シーケンス、保護設定等の高い柔軟性を実現
  • 最新のパワーデバイスを使用した小型・高効率設計

■電源仕様

Output Power 3kW
Capacity 3L Less
Efficiency 95%~98%(3kW~0.6kW)
Functional safety ASIL-B対応
I/F CAN-FD

■サイズ比較

CK000190_PowerSupply_06-1.jpg

■効率特性


5. まとめ

 電源・アナログ業界の根本課題として、“人手不足”が根底にあります。そのような中、市場のトレンドとしては大電力化・高効率化が求められ電源設計の難易度も高まっており、従来の属人的な開発手法では厳しい状況にあると考えられます。

 産学協力し合いながら、改善に取り組む必要のある大きな問題ですが、解決策の一つとしてシミュレータを活用したフロントローディングの開発手法があると考えています。

 リョーサンでは、電源設計の「リソース不足」や「ノウハウ不足」に関するお困りごとや、シミュレーション開発(電源MBD開発含む)に取り組みたいが、取組めていないなどご相談に対応させて頂いております。

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