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【アナログエンジニア不足】電源設計における解決方法とは?

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  • 更新日
  • 2024.06.14
  • 公開日
  • 2023.08.25

 アナログ設計は高度な技術知見や経験が求められ、人材育成にも時間がかかるというハードルの高さもあることから、日本国内ではアナログエンジニア不足という大きな課題があります。

 本記事では、電源効率が重要視される今、電源設計を効率的に行っていくためのシミュレータ開発についてご紹介します。



1. 電源設計における3つの課題

➀ アナログエンジニアの人材不足

 近年、アナログエンジニアを目指す学生の数は減少しています。アナログエンジニアの仕事に普段接する機会が少なく、先端の研究や技術を探求している学生たちの注目が集まりにくい傾向にあります。反対にAI、メタバース、クラウドなどのデジタル化は耳にすることも多いため興味を持ちやすい傾向があります。

 アナログ技術は、電子デバイスやシステムの基盤となる技術であり、デジタル時代においてもその重要性は変わりません。しかし、その役割や魅力が直感的に伝わりにくいことで、学生たちの関心を引くのが難しく、エンジニア不足に繋がっています。

 社会全体としては、アナログエンジニアの技術や知識の継承と発展が求められているので、学生たちにその価値を正しく伝え、興味を持ってもらう取り組みがより一層必要となってきています。

学生の興味は、、、

  • アナログ電気回路

    アナログ電気回路

  • AI、メタバース、クラウドなど

    AI、メタバース、クラウドなど

➁ アナログエンジニアの若手育成(技術継承)

 機器の小型化、低コスト化や高品質化は、高度な電源技術が必要不可欠で、日本の高品質な家電製品を支えてきた重要な技術の一つです。

 しかし、多くの製品を短期間で開発するサイクルと人件費を抑えるために、ノウハウを持った限られたエンジニアに業務が集中し、技術の属人化や高年齢化が進行してきました。そのため、業界全体で技術継承の課題が顕在化してきています。

 電源やアナログ設計は技術知見のみならず経験が求めらるため、人材育成に時間がかかり、技術継承のハードルを高くしています。

➂ 電源の高効率化

 上の画像はEV車のOBC(On Board Charger)+DCDCコンバータの外観写真です。

 PFC部はSiC MOSFETを使用しており、高効率な回路設計が行われています。また、DCDCコンバータ部はLLC方式(共振型)が使われており、こちらも同様に高効率な回路設計が行われています。

 LLC方式の最適化にはノウハウが必要となりますが、カットアンドトライの感覚に頼った設計の場合、多くのトランス試作回数が必要となり、結果的に設計に多大な工数がかかる可能性があります。特に不慣れなエンジニアは苦労するでしょう。

2. 電源設計の課題を解決する回路シミュレータ

 これら電源設計の課題解決には、回路シミュレータが有効です。まずは、回路シミュレータを使用するメリットを確認してみましょう。

回路シミュレータのメリット

  • ノウハウや開発手順を言語化することで、属人化されていた作業を定量化することが可能
  • カットアンドトライの回数を減らすことで、サンプル作成の期間を大幅に短縮することが可能
  • 解析結果が視覚的に確認できることで、情報共有を簡単に行うことが可能


 回路シミュレータを活用することで多くのメリットを得られますが、すべてのシミュレータで同様のパフォーマンスが発揮できるわけではありません。部品メーカから提供されているSPICE系の汎用シミュレータには課題もあります。

SPICE系シミュレータの課題

  • シミュレーション時間が長い
  • 実機とシミュレーションの結果が合いにくい
  • スイッチング損と導通損の切り分けが難しい
  • コイルなどのパラメータ設定が難しい


 SPICE系のシミュレータでは、上記のような課題を抱えていることが多いと思います。世の中には、これらの課題を解決するツールもあります。

3. 電源設計に最適な高速回路シミュレータ

 今回は、リョーサンの開発でも使用したScideamをご紹介します。

Scideamの特徴

➀ 高速安定解析

  • 独自の解析アルゴリズムにより、解析時間と収束性問題の両方を解決
  • スイッチングコンバータを高速安定解析することが可能
  • LTSpiceと比べて解析時間が短縮(下記を参照)
降圧型コンバータの解析時間比較
LTSpice Scideam

定常状態までシミュレーション

(波形解析)

1分30秒(グラフ非表示)

2分00秒(グラフ表示)

4秒(全素子損失測定)
グラフを測定 5分(SWの損失測定のみ)

➁ 損失解析

  • 全自動で高速に損失解析を行うことが可能
  • すべての素子に対する損失を一覧表示
  • スイッチング損失を自動計測

➂ モデルベース開発

  • Simulinkと接続し、モデルベース開発環境を構築
  • モデルベース開発(MBD)によるシミュレーションを活用した開発効率化


 Scideamは解析速度が高速で損失解析に優れています。そのため、シミュレーション中の待機時間を大幅に削減でき、作業を円滑に進めることができます。損失解析は、すべての素子に対して行うことができ、素子のパラメータを変更することで簡単に比較できます。解析結果は、リストやグラフの形式で出力できるため、改善箇所の確認や検討が容易になります。

4. シミュレーションの実施結果と効果

 リョーサン製の「3kW48VDCDCコンバータ」の開発で実際にScideamを活用しましたので、どのように効率化に繋がったのか説明します。まずは、下記3つの回路モデルをご覧ください。

  • 回路モデル(A社)

  • 回路モデル(B社)

  • 回路モデル(リョーサン)

 リョーサンで検討段階の回路モデル(リョーサン)を改善するために、分析用に2社の回路モデル(A社、B社)を用意しました。Scideamで上記のようにモデル化された回路図を用意して「スイッチのターンオン」のシミュレーションを行いました。 結果を比較して確認してみましょう。

ターンオン波形の比較結果(赤:A社、青:B社、緑:リョーサン)

 A社の回路モデルはスイッチングの速度が他と比較して大幅に高速であることが確認できました。さらに、スイッチング損失「Vds×Id」からも、「非常に高速」かつ「スイッチング損が少ない」ことが確認できます。これは、スイッチ素子を4並列しており、一つ当たりの電流がおよそ半分となっていることが大きく関わっています。これにより、スイッチの定格電流が半分程度の素子を使用でき、高速スイッチングを実現できているのです。

 B社と、リョーサンの回路モデルはゲートチャージ速度に違いはありましたが、スイッチのターンオン損はおおよそ等しいことが確認できました。

 しかし、波形を確認しただけではシステムの良さはすぐには分かりません。グラフ表示機能も活用して各素子の損失を詳しく確認してみましょう。

 
 波形とグラフを元に分析を進めると、各社で特色のある部品選定、回路選定を行っていることが分かりました。3社のコンバータでは、それぞれ異なる特徴、狙いを持ってスイッチを使用していました。

● 各社の特徴

  • A社は、素子数を増やすことで電流定格を下げ、高速スイッチングが行える素子選定。Hi,Lowスイッチに別の素子を使用した高効率な設計。
  • B社は、Hi,Lowスイッチに同じ素子を使用することで、コスト削減に繋がる素子選定。効率は他の2 つよりも低いが、生産性やコストに振った設計。
  • リョーサンは、Hi,Lowスイッチに別の素子を使用した高効率な設計を意識した素子選定。他の2つの回路のバランスを取った構成。


 このように、他社と比較しながら改善することで、他社との差別化ポイントを盛り込んだ、リョーサン製の「3kW48VDCDCコンバータ」を作成することができました。このコンバータは、マイコン制御のデジタル電源構成によって、シーケンスや保護設定等の高い柔軟性を実現しながら、最新のパワーデバイスを使用して小型・高効率な設計を実現しています。

 Scideamを活用することで回路モデルの素子は、パラメータの変更で容易に比較できるため、エンジニアの技量に依存しすぎずに、開発を行えました。また、本来は複数の回路モデルを比較する場合、多くのシミュレーション時間を必要としますが、Scideamは「短時間」で「高精度」なシミュレーションが行えるため、何度もシミュレーションを重ね、検討することができました。これにより、電力効率化や開発工数の削減に繋がりました。


 リョーサン製の「3kW48VDCDCコンバータ」の「電源仕様」と「サイズ比較/効率特性」は下記を参照ください。

■電源仕様

Output Power 3kW
Capacity 3L Less
Efficiency 95%~98%(3kW~0.6kW)
Functional safety ASIL-B対応
I/F CAN-FD

■サイズ比較/効率特性

5. まとめ

 これらの機能を活用することで、開発の上流で損失解析を行うことができ、お客様の要件にマッチする、あるいは競合より優れているものを上流仕様設計の段階で提案できるようになるでしょう。

 電源・アナログ業界の根本課題として、“人手不足”が根底にあります。そのような中、市場のトレンドとしては大電力化・高効率化が求められ電源設計の難易度も高まっており、従来の属人的な開発手法では厳しい状況にあります。

 産学協力し合いながら、改善に取り組む必要のある大きな問題ですが、解決策の一つとしてシミュレータを活用してはいかがでしょうか。

 リョーサンでは、電源設計の「リソース不足」や「ノウハウ不足」に関するお困りごとや、シミュレーション開発(電源MBD開発含む)に取り組みたいが、取り組めていないなどご相談に対応させて頂いております。

執筆者:信田正人、編集者:古澤禎崇

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