電源設計で知っておきたい用語集
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- 更新日
- 2023.05.09
- 公開日
- 2023.05.09
INDEX
デジタル制御
フィードバック回路をテジタル化することにより、様々な制御方式が実現可能な電源制御です。 これにより周囲温度が低温から高温まで、軽負荷から定格負荷まで各々最適な制御バラメータを設定できるため幅広い動作条件下で、より高効率で安定した制御が実現できます。
デジタルアシスト制御
電源内部のフィードバックループはアナログ制御で、スイッチング素子のタイミング制御や周辺回路をデジタル化した電源制御です。高効率・高機能な制御が実現できます。
ヒステリシス制御
出力電圧が一定幅を超えた場合に電源をオン・オフし一定幅内に収まるようにする電源制御です。超高速な制御に向いています。
高電圧直流給電システム (High Voltage Direct Current:HVDC)
通信事業者で使用されてきた給電設備(-48V)をHVDC化(-380V)することで電流値を下げ、配線損失を低減できるシステムです。システムの高効率化やケーブル細径化によるコスト低減も可能となります。
LLC共振コンバータ
スイッチング電源の1つで、インダクタンス(L)とコンデンサ(C)を用いた共振回路を利用することが特徴です。高効率、低ノイズといった利点があります。
フェーズシフト・フルブリッジコンバータ
スイッチング電源の1つで、4つのスイッチング素子を制御して、入力電圧を電力変換することができます。高効率で、高電圧出力を制御できるといった利点があります。
POL(Point Of Load)コンバータ
主にCPUやFPGAなどのLSIの近くに配置されるコンバータで、高速デジタル回路に必要な低電圧、高電流の電力を供給するために使用されます。
スイッチング素子
電子回路での電力制御に用いられる素子のことを指します。高速に電気のオン・オフを切り替えることで、電圧や電流を効率的に制御することができます。一般的な家電製品などにはSi(シリコン)を使用したMOSFETを使用するケースが多いです。電力の大きな製品はIGBTを使用する事がありますが、近年、Siに替わる半導体としてSiC(炭化ケイ素)を使用するケースも増えてきています。高周波数化による小型化・低損失化を実現させるため、小型ACアダプタなどでGaN(窒素ガリウム)を使用ケースも増加しています。
SiC(炭化ケイ素/Silicon Carbide)
Si(シリコン)とC(炭素)で構成される化合物半導体材料です。近年、電力損失を押さえることができることからSiに替わる半導体として期待されています。
GaN(窒素ガリウム/Gallium Nitride)
非常に硬く、安定した結合構造をもった半導体です。Siの替わりに使用することで高周波数化による小型化・低損失化が期待でき、小型ACアダプタなどで使用されています。
整流素子
交流から直流への変換や、任意の方向のみに電流を流したい場合に用いられる素子のことを指します。ダイオードが使用されることが多いです。整流素子による損失を減らすために、ショットキーバリアダイオードやファストリカバリタイプを使用電圧や用途に応じて使用します。
電源IC
電力を制御するための集積回路のことを指します。入力-出力間の電位差が小さく電力の少ない用途ではリニアレギュレータ、入力-出力間電位差が大きい場合や、損失を減らしたい場合はスイッチング制御タイプのICを使用します。
電解コンデンサ
アルミニウムやタンタルなどの酸化皮膜を誘電体として用いたコンデンサを指します。主に直流回路に使用され大容量であることから、電源回路やフィルタ回路などの回路に広く使われています。 コストと容量のバランスが良く多くの機器に使用されています。寿命があり使用の際は温度環境に応じた推定寿命算出を行うなど注意が必要となります。
セラミックコンデンサ
セラミックを誘電体として用いたコンデンサを指します。小型で使いやすくスマートフォンなど多くの機器に使用されています。微細加工技術の向上などにより小型化・大容量化が進み、主流となるサイズが1608(1.6mm*0.8mm)から1005(1.0*0.5mm)と小型化が進んでいます。
フィルムコンデンサ
プラスチックフィルムを誘電体として用いたコンデンサを指します。プラスチックフィルムとアルミニウム箔を組み合わせた構造で絶縁抵抗が高く、信頼性に関わる回路や用途で多く使われます。
プリント基板 (Printed Circuit Board:PCB)
電子回路を構成するために用いられる基板の一種で、導体の配線を配置させ電子部品を実装するためのものです。一般的には1.6mm厚の基板が使用されます。基板材としては、FR-1、CEM-3、FR-4が比較的多く使用され、コストや用途で使い分けられています。また、実装密度を上げるため両面基板だけではなく4層、6層などの多層基板を使用するケースもありますが、コストの厳しい製品では片面基板を使用する事もあります。
トランス
電圧を変えるための変圧器のことで主に電圧を昇圧または降圧するために使われます。電源用途に於いては1次-2次の絶縁などを兼ねた変換部で使用されるケースが多いです。絶縁を兼ねた用途の場合は製品信頼性に直結する重要部品となり、且つ電源製品全体の性能を決める肝となる事が多いため、選定や設計には非常にノウハウが必要な部品となっています。
チョークコイル
直流や、目的の周波数より低い周波数の電流を通し、目的の周波数より高い電流を阻止するためのインダクタのことです。ノイズ低減のためのフィルタ部に使用する事が多いコイルです。円形のコアに巻き線を巻き付けたものや、EI型コアにボビンを用いて巻き線されたものなど様々な形があります。
スイッチング電源
現在主流の電源方式で、入力や出力、制御信号に応じて電源回路内のパワーデバイスのON/OFFをPWM制御しコントロールするタイプの電源です。リニアレギュレータと比較して小型高効率になりますが、ON/OFF時にEMIノイズが発生します。小型化・高効率化とトレードオフになりやすく、ノイズと小型・高効率化のバランスが難しい方式となります。
入力電圧
電子回路などにおいて、入力端子に供給される電圧を指します。AC(交流)とDC(直流)の2種類で分けられます。ACはAlternating Currentの略で交流で電流の向きが周期的に変化しています。一般的な家電製品はコンセントに供給されているACを使用しています。AC100Vは実効値となりピーク電圧は約140Vとなります。電源を選定や設計するときは、入力電圧のバラツキを考慮する必要があり、最低電圧時に問題なく動作する事や最大電圧時に壊れないことなど注意が必要となります。
力率
供給された電力のうち、有効に働いた割合(率)を示す数値です。電源回路では力率を改善するためにPFC回路(Power Factor Correction)を用いて力率改善を行うケースが多いです。
効率
入力電力と出力電力の割合(出力電力/入力電力)です。理想は出力電力と同じ入力電力となる事ですが電源の損失分が発生する為、同じ電力にはなりません。損失のエネルギーは熱に変換され効率の悪い電源は発熱が多く熱対策が大掛かりになる(例:大型のヒートシンク取り付けなど)ため、製品(電源)の小型化を行うには電源効率を良くする必要があります。
突入電流
電源投入時などに瞬間的に流れる大きな電流を指します。定常動作時より多くの電流が流れブレーカを誤動作させることがある為、注意が必要です。
漏洩電流
感電を防止するためにAC使用機器や高圧機器は内部で絶縁されていますが、ノイズ対策コンデンサ(Yコン)などの影響により流れる微小な電流です。感電による人体への影響のリスクもある為、電気用品安全法などで許容電流値が規定されています。
過電流保護(Over Current Protection:OCP)
電源の出力に接続されている機器に異常が生じて過負荷状態になった時などに供給電力を下げて電源内部の破損を保護するための機能(保護回路)です。過負荷状態のままの動作は異常発熱となり発煙・発火のリスクを伴います。適切な過電流保護を備えた電源製品を選択することにより製品全体の信頼性を高めることができます。
過電圧保護(Over Voltage Protection:OVP)
電源内部の制御回路が故障した時に危険な電圧を出さないようにする機能(保護回路)です。