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本当にそれで大丈夫?PDアダプタ選定の意外な落とし穴

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2023.11.17

 iPhone15の誕生でさらに広く使用されることになるUSB Type-C。

 USB Type-Cの給電面における拡張規格 USB Power Delivery(USB PD)が今後さらなる広がりを見せることとなりそうです。

 ただ、そんなUSB PD対応アダプタも一歩間違えれば大混乱を招く意外な落とし穴があることをご存じですか?

1. USB Power Delivery(USB PD)と最新動向

 USB Power DeliveryはUSBの規格団体が作成したType-C端子によるACアダプタの給電規格です。

 USB PD対応機器とACアダプタを接続すると、ACアダプタ側の供給能力情報とそれを受ける機器側の要求電力情報を自動的に交換するため、USB PD規格による急速充電を即座に行うことが出来ます。

 以前まではスマートフォンをはじめとする小型機器の給電にUSB Type-Cを使用することが出来ましたが、Power Deliveryの登場により、PCなどの大型機器にもUSB Type-C給電を行うことが出来るようになりました。

 2021年に策定されたUSB PD3.1では、従来より容量帯を拡張したExtended Power Range(EPR)と呼ばれる 28V(最大140W)、36V(最大180W)、48V(最大240W)の選択が可能になりました。

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 今後新たに市場に製品を出す場合は、USBケーブル/コネクタ規格の最新版であるUSB Type-C Release 2.1の対応が必要となります。当規格には、USB PD3.1におけるEPRをサポートするための要件が盛り込まれています。

 EPRに適合(利用)するためには、“電源”、“ケーブル”、“電力を受ける機器” の全てがEPRに対応する必要があります。

EPR対応製品の開発に必要なこと
1)製品で必要となる電力と、電源に要求する電圧/電流の検討
 USB PDでは、供給電圧をリストから選択して行うため5V, 9V, 12V, 15V, 20V, 28V, 36V, 48Vのいずれかで動作するように設計する必要があります。EPR対応製品の場合は、28V, 36V, 48Vのいずれかから選択することになります。
 尚、オプションのProgrammable Power Supply(PPS)に対応している電源を使用するのであれば、100mV/50mA刻みで任意に供給電力を変化させることが可能です。
2)電子マーカー(eMarker)を組込むこと(EPR対応を電子的に識別するため)
 EPRを含む20V/5A以上の電力に対応する製品では、eMarkerの搭載が必要です。eMarkerは製品ケーブル電源が供給する電力に対応しているかを確認するための認証チップで、製品が対応していたとしてもケーブル・電源のいずれかが対応していなければ電力が供給されません。
3)コネクタ部などにEPR対応のアイコンを印字すること
 USB規格が更新され、電源には最大出力、ケーブルには通信速度と通電可能電力が含まれる新アイコンを印字する必要があります。

 

2. ただ…意外な落とし穴が?

2-1. 電圧ネゴシエーション

 ケーブル接続後、自動的にUSB PD対応アダプタが受電側機器の情報を読み取り適切な電圧で電力が供給されます。一見便利な機能に見えますが、当機能により思わぬ弊害が発生することがあります。

 複数出力ポートのあるUSB PD対応アダプタを使用した場合、受電側機器を接続/切断した際に、接続されている機器の入力可能電圧を認識し、各機器への出力電圧を調整する必要があるため、都度「電圧ネゴシエーション」が発生します。

 この場合、いずれの電力供給も止まってしまうため、バッテリ搭載機器では充電停止、バッテリ非搭載の機器では電源OFFとなります。

 適切に電圧を認識出来た場合は、自動的に再給電を行いますが、バッテリを搭載していない機器と繋げていると自動復帰が出来ない場合があります。

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 このようなことを回避するためにも、製品の使用される環境に注意する必要があります。

2-2. 対応ケーブル

 USB Type-Cは様々な種類があり、下表のように多くのケーブルが存在します。

 PD3.0(20V/3A)程度であれば、スマートフォン充電用のケーブルが簡単に入手出来ますが、100W以上の給電が必要となる場合はeMarker搭載ケーブルを使用する必要があり、ケーブル選定をユーザーに任せる場合はトラブルの要因となります。

通信規格 給電規格 eMarker
USB2.0 Current(5V/3A)
USB2.0 PD3.0(20V/3A)
USB2.0 PD3.0(20V/5A)
USB2.0 PD3.1(48V/5A)
USB3.x PD3.0(20V/3A)
USB3.x PD3.0(20V/5A)
USB4 PD3.0(20V/5A)
USB4 PD3.1(48V/5A)

 

2-3. USB PD対応アダプタ

 USB PD対応アダプタは、様々な給電能力の製品が販売されています。製品の要求する給電能力を満たせないUSB PD対応アダプタが使用された場合、USB Type-C Currentの5V/3Aしか電力が供給されずに製品が正常動作しないため、ユーザークレームの原因となる可能性があります。

3. 対策方法

 では、上記の落とし穴にどのように対応すればよいのでしょうか。
 セットメーカー様側で検討いただける対策方法は以下の3点となります。

  1. 電圧ネゴシエーションの対策
    1. 製品に最適なUSB PD対応アダプタの同梱
    2. バッテリ/スーパーキャパシタ等による機器側での瞬停対応
  2. ケーブルの対策
    1. 対応ケーブルを同梱
    2. 対応ケーブル規格を梱包箱/マニュアル等に記載
    3. 推奨ケーブルのメーカー名/製品名をマニュアル等に記載
  3. USB PD対応アダプタの対策
    1. 製品に最適なUSB PD対応アダプタの同梱
    2. USB PD対応アダプタに要求する供給電力、電圧/電流をマニュアル等に記載
    3. 推奨USB PD対応アダプタのメーカー名/製品名をマニュアル等に記載
    4. 給電能力の足りないアダプタが接続された際に給電能力不足を示すインジケータの搭載とマニュアル記載
  • EUでは2024年末よりUSB PD対応アダプタの同梱あり/なしを梱包箱・マニュアルに記載する必要があります。

4. まとめ

  •  EUでは既に24年秋以降に発売するポータブル製品へのUSB Type-C充電、並びに急速充電はUSB PDのみとする法案が承認されています。
     具体的な対象製品、対応内容はこちらをご覧ください。

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    【解説】欧州USB Type-C義務化

 

 USB PDの利便性に目が行き、ユーザーの給電環境(USB PD対応アダプタ・ケーブル)の選択肢の多さを見落としがちです。製品の使用環境を見極め、適切なUSB PD対応アダプタ・ケーブルを選定・同梱することで、未然に問題を避けることが可能となります。
 当社でも専門のエンジニアがいますので、もし不安な点がございましたらお気軽にお問い合わせください。

(執筆者:石黒 裕子 / 編集者:木庭 正博)

 USB Type-C、USB-PDの業界動向や規格の概要を知りたい方、製品出荷に向けた対応をご検討中の方は、こちらのウェビナ動画もご覧ください。

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    USB Power Deliveryに関してお困り事が御座いましたら、お気軽にお問い合わせください。

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