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人流データって何に使うの?様々な業界での活用方法を徹底解説!

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2024.06.13

 人流データとは特定の地点に人々が訪れる際の動きや流れに関する情報を指します。人の出入りのタイミングや滞留時間、移動パターンなどを収集します。本記事では、なぜ近年注目されているのか、人流データの取得にはどのような技術が使用されているのか、どのような活用事例があるのかという観点から解説を行います。

1. 人流データとは? 近年、注目される理由

 人流データとは、特定の地点(場所や施設)を訪れる人々の動きや流れに関する情報を指します。一般的に、店舗や観光地、イベント会場といった、様々な場所や施設における人の出入りや滞在時間などを追跡し、記録することで収集します。主な用途には下記があり、下記以外にも様々な用途への活用が想定されます。

用途 詳細
都市交通計画 都市の交通計画やインフラ整備に活用されます。特定の地域や施設への人の流れを把握することで、渋滞の原因や交通ネットワークの効率性を分析します。分析結果を反映することで、交通インフラの改善や渋滞の緩和策の立案に役立てることが可能です。
商業活動とマーケティング 商業施設や店舗の運営者は、施設内の顧客の動向や行動パターンを分析します。分析結果から、売り場のレイアウトや商品陳列の最適化、営業時間の調整、ターゲット市場への販促活動の計画といった、効率的なマーケティング計画の立案に役立てることが可能です。
観光業とイベント管理 観光地やイベント会場では、観光客の動向や滞在時間、興味関心を把握することが可能です。観光施設の運営や観光体験の充実、イベントの安全管理やアトラクションの配置などの改善に役立てることが可能です。
施設管理とセキュリティ 大規模施設や公共施設では、施設の利用状況やセキュリティ上のリスクを把握することに活用されます。これにより、施設の運営やセキュリティ対策の改善に反映され、利用者の安全と利便性の向上に役立てることが可能です。
感染症対策と公衆衛生 感染症の流行時には、感染リスクの評価や感染拡大の予測/分析が可能です。感染症対策や公衆衛生政策の策定や実施に役立てることができます。

近年、注目される理由

インバウンド需要の傾向把握

 人流データを用いることで、観光地や各施設、イベントなどにおける観光客の客層や動向を分析することで、インバウンド需要を把握することが可能です。近年、訪日外客数はコロナ禍以前の数値まで回復しました。それに比例して、増加傾向にあるインバウンド需要を把握する為に、人流データの活用が注目されています。

直近5年間の月別訪日外客数

日本政府観光局(JNTO)
国籍/月別 訪日外客数(2003年~2024年)(Excel)参照

技術の進歩

 センサや監視カメラ、スマートフォンアプリなどの技術が進歩したことによって、データの収集の工程が容易になりました。これにより、より広範囲で詳細なデータを取得することが可能となり、活用範囲が拡大しました。また、AIの発達により、膨大なデータの分析も容易になりました。

個人情報保護への懸念

 個人情報保護の観点から様々なプラットフォーム上にて運用されるデータには注意が必要になります。その為、個人情報がわからないように匿名化、最小化した状態のデータに加工することを推奨します。人流データは加工後の状態でも、十分に情報(カウントや滞留時間、移動軌跡など)を得ることが可能であり、分析に用いることができます。

2. 人流データ取得に用いられる主な技術

 人流データの取得には様々な技術が用いられています。場所や目的に応じた条件(精度や収集するデータの種類の違いなど)に適合する技術が選択されます。
 以下に主な技術を紹介します。

GPS(Global Positioning System)

 スマートフォンや車両等に搭載されているGPSトラッカから位置情報を取得し、人流データとして収集します。

メリット:
- 広範囲かつ正確な位置情報が取得できます。

デメリット:
- 屋内や都市密集地域では精度が落ちる場合があります。

通信基地局

 通信基地局と各モバイルデバイスが接続した際の基地局の位置情報や、移動による接続先基地局の切り替わりから、取得可能な移動軌跡情報を人流データとして収集します。

メリット:
- 通信基地局は都市部だけではなく郊外や一部局地まで設置されており、広範囲をカバーできます。
- 通信基地局は24時間連続稼働の為、常時データ収集ができます。

デメリット:
- 通信基地局による位置特定はGPSと比較して、精度が低い場合があります。
(特に都市部ではビルなどの建築物の影響を受ける可能性があります。)

交通系ICカード(RFID)

 ユーザが交通系ICカードを利用する場合、入退場に読み取り機器へカードをかざします。その際、日時や場所、利用金額などのデータを記録し、集積することで、人流データを収集します。

メリット:
- 収集時に必ず読み取り機器を通していることから、情報の記録に正確性があり、移動パターンを正確に把握できます。

デメリット:
- 交通系ICカードの非ユーザのデータは、収集対象から除外される為、特定の年代層や地域の情報に偏りが出る可能性があります。

ビーコン

 ビーコンは無線信号を発信する小型デバイスです。代表的なビーコン技術には、BLE(Bluetooth Low Energy)やZigbeeなどが存在します。ビーコンが発信する信号には、ビーコンの固有のIDが含まれています。受信したモバイルデバイスは、そのIDとビーコンからの相対距離を識別し、記録します。その後、モバイルデバイスはデータをサーバなどにアップロードし、人流データとして集約します。

メリット:
- 屋内などの小規模なエリア(店舗内、施設内など)において高精度の位置情報を取得できます。
- ビーコンは省電力であり、小型バッテリーで長時間動作するため、設備投資を抑えることができます。

デメリット:
- 単体のビーコンでは、カバーできる範囲が限られます。
- 広範囲をカバーする場合、設置するビーコン数が多くなります。

CCTV(Closed-Circuit Television Camera)カメラと映像解析

 CCTV(防犯、監視)カメラの映像を画像認識技術によって解析することで人流データとして収集します。

メリット:
- 特定の場所(監視場所)における詳細な動態を把握できます。

デメリット:
- 映像解析システムには、高価なカメラ設備と分析ソフトウェアが必要であり、初期投資費用が大きくなります。
- 映像解析には、AIや機械学習の専門知識を有するエンジニアが必要です。
- 映像データから個人特定可能な情報を抽出し、取り扱う場合、プライバシー侵害のリスクがあります。

センサネットワーク

 地域全体に配置された多数のセンサからデータを人流データとして収集します。

メリット:
- 大規模なエリアや複数の地点におけるデータの収集ができます。
- 必要に応じてセンサを追加/除外可能の為、エリアの拡張/縮小が容易です。

デメリット:
- センサは外部環境の影響を容易に受ける為、誤動作やデータの欠落が発生しやすく、分析結果に影響する場合があります。
- センサ設置後にも定期的なメンテナンス、アップデートが必要です。
- 設置するセンサ数によっては高コスト化する可能性があります。

モバイルアプリケーション

 モバイルデバイスにインストールされたアプリケーションを介して、位置情報サービスを利用し、ユーザの動きを追跡することで人流データを収集します。

メリット:
- ユーザがアプリケーションを積極的に使用している場合、詳細なデータが取得できます。

デメリット:
- ユーザの同意が必須であり、取得できるのはアプリケーションをインストールかつ使用しているユーザに限られます。

3. 人流データ活用事例

 人流データの主な活用事例を業界別に記載しました。ご興味のある方は、下記リンクから業界を選んでご参照ください。

都市計画と交通システム

 人流データを活用することで、都市交通インフラの改善、公共空間の効率化など、より効果的な都市開発施策に役立てることができます。
具体的な例として、

  • 交通インフラの改善
  • 商業地区の開発
  • 歩行者空間の改善
  • 環境保全と持続可能な開発

があげられます。

  • 交通インフラの改善
    人流データから、都市における主要な交通ルートや混雑度を把握できます。これにより、バスや地下鉄などの公共交通機関のルートやスケジュールを効率化し、渋滞や遅延を緩和することが可能です。
  • 商業地区の開発
    人流データから、消費者の滞留時間や移動ルートといった動向を把握できます。これにより、店舗配置や開店時間、商業施設のサイズなどの設計に役立てることが可能です。
  • 歩行者空間の改善
    人流データから、歩行者の移動ルートと頻度を把握できます。これにより、歩道の改修や新規設計に役立てることが可能です。
  • 環境保全と持続可能な開発
    人流データから、保護区や国立公園における訪問者数と動向を把握できます。これにより、自然環境への影響を抑える為の管理策に役立てることが可能です。

イベント管理とセキュリティ

 大規模な祝祭やコンサート、スポーツ観戦といったイベントにおいて、大量の集客が予想されます。人流データを活用することで、円滑な運営が可能です。
具体的な例として、

  • 交通管理の改善
  • 会場レイアウトの効率化
  • サービス提供の効率化
  • マーケティングとプロモーションの効果分析
  • 安全対策及び緊急対応の計画

があげられます。

  • 交通管理の改善
    イベントの開始前後において、周辺道路の交通量増加が予測されます。人流データを利用することで交通誘導計画の施策に役立てることが可能です。必要に応じて、駐車場の利用状況からの交通規制やイベント会場への流入量による入場規制を行うことも可能です。
  • 会場レイアウトの効率化
    人流データを活用することで、会場内の人口密度が高くなるエリアと時間帯の予測に役立てることが可能です。予測結果から入口や出口の配置、通路幅といった会場のレイアウト設計を効率化することが可能です。
  • サービス提供の効率化
    人流データを活用することで、フードコートやトイレ、グッズ販売などの各種サービスの設置場所や数を調整できます。これにより、各サービスの待ち時間を短縮し、顧客満足度を向上が可能です。
  • マーケティングとプロモーションの効果分析
    人流データを活用することで、イベント毎あるいはイベントエリア毎の集客力や注目度を把握できます。これにより、将来的なイベントの企画や広告、スポンサーなどの施策に役立てることが可能です。
  • 安全対策及び緊急対応の計画
    人流データを分析することで、過密状態や異常な人流を検出し、迅速な対応につなげることができます。これにより、医療スタッフや警備員の配置の効率化や、緊急時の対応を潤滑にすることが可能です。

商業施設の配置とマーケティング

 人流データを活用し、消費者の動向を把握することで、各種施設の配置設計やマーケティング施策の効果を最大化が可能です。
具体的な例として、

  • 店舗配置、テナントミックスの最適化
  • ターゲット層の行動理解
  • 広告の地理的ターゲティング
  • 効果測定と調整

があげられます。

  • 店舗配置、テナントミックスの最適化
    人流データを活用することで、人が集まる地点を把握できます。これにより、集客性の高い地点に収益性の高い店舗やテナントを配置することが可能です。
  • ターゲット層の行動理解
    人流データを分析することで、消費者の動向や滞留時間を把握できます。この分析内容と購買情報を組み合わせることで、客層毎の訪問時間や購買行動を洞察し、ターゲット層の正確な分析が可能です。
  • 広告の地理的ターゲティング
    人流データを分析することで、広告やプロモーションを展開することに有効的な地点や時間帯を検出できます。これにより、配置する場所や時間帯、ターゲット層に合わせて、デジタルサイネージ広告の内容を切り替えるといった対応が可能です。
  • 効果測定と調整
    人流データを分析することで、各種施策(広告やプロモーション、マーケティングキャンペーンなど)の効果を把握できます。これにより、施策の内容を調整し、費用対効果をより効率的にすることが可能です。

ヘルスケアと衛生政策

 人流データを活用することで、医療サービスの効率化や感染症の拡散予防といった対応に役立てることができます。
具体的な例として、

  • 公衆衛生政策のサポート
  • 医療施設内の人流管理
  • リソースの効率化

があげられます。

  • 公衆衛生政策のサポート
    人流データを分析することで、予防接種や健康啓発活動などの公衆衛生政策の策定に役立てることができます。
    例えば、感染症の流行する地域を予測し、集中的な対応を行うといったことが可能です。
  • 医療施設内の人流管理
    医療施設内の人流を把握することで、患者や訪問者、医療従事者の動きを管理し、効率化できます。これにより、診療エリアや待合室での混雑を軽減し、感染リスクを抑制することが可能です。
  • リソースの効率化
    医療施設内の人流を把握することで、リソース(医療機器、医療従事者、ベッドなど)の配分を効率化できます。これにより、緊急時や感染症流行期において、十分なリソースを医療現場へ配置し、現場の負担を軽減することが可能です。

観光業界

 人流データは観光業界において、非常に強力なツールとして活用できます。観光地の運営を効率化したり、各種施策の策定や効果測定などに役立てることが可能です。
具体的な例として、

  • 観光客へのマーケティングとプロモーション
  • 新規観光スポットの発掘
  • 観光政策の効果測定
  • 観光地の混雑管理

があげられます。

  • 観光客へのマーケティングとプロモーション
    人流データを分析することで、観光客の国や地域の傾向性や移動ルートなどの情報を取得できます。これにより、ターゲットとする観光客に合わせた広告やプロモーション、イベントを施策することが可能です。
  • 新規観光スポットの発掘
    人流データを分析することで、特定地域の訪問者数や集客性などを測定できます。これにより、未開発の地域のポテンシャルを計測したり、新規の観光スポットを開発する際の参考データとして活用することが可能です。
  • 観光政策の効果測定
    地方自治体や国の観光局は、人流データを分析することで、観光政策の効果を測定し、評価できます。これにより、必要に応じて政策を調整したり、次の政策への役立てることが可能です。
  • 観光地の混雑管理
    人流データを分析することで、観光地の混雑状況の把握や観光客への適切な情報提供ができます。例えば、過密状態にある観光地を避けて別の観光地へ案内したり、混雑を避けた時間帯に案内することが可能です。これにより、観光客の時間的リソースの効率化に伴う満足度の向上や観光リソースの効率的活用が可能になります。

4. まとめ

 人流データの活用方法には、組み合わせる情報によって、様々なものに応用できます。「3.人流データ活用事例」にてあげた内容は比較的メジャーな内容であり、傾向性が似た内容もあります。マイナーな内容としても、「文化財保護」や「エネルギーマネジメント」、「コンサートホールの音響設計」、「無線ネットワークの配置改善」などのような、より専門的な活用事例も存在します。人流データには、提供するサービスとしてだけでなく、社内での活用(会議室の利用状況の把握、安全管理 etc)なども視野に入れた幅広い応用性という強みがあります。様々な場面での意思決定をサポートする有用な根拠とすることが可能です。

(執筆者:伊藤正博)

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