arm vs RISC-V!主要MCUの特徴と性能を徹底比較

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2025.03.28

 近年ちらほらと聞こえるようになったRISC-V、皆さんはどんなコアかご存じですか?armコアが普及して簡単に手に入るようになった現在、各社のオリジナルコアを使ったMCUかarm MCUかの選択が多いと思いますが、第三勢力としてRISC-Vコアを使用したMCUも登場しています。本記事では各コアの特長、機能/性能、主要なMCUを紹介していきます。皆様のMCU選定の一助となれば幸いです。

1. 主要なMCUコア

 arm、RISC-V、MCUベンダのオリジナルコア(RL78、RX、PIC)を紹介します。RISC-V以外はW/Wで使用されているのでご存じの方も多いと思いますが、各コアの沿革や背景などを見ていきます。

arm(アーム)

 armは、armコアを提供するイギリスの会社arm社のことであり、同社の提供する命令セットアーキテクチャ(ISA:Instruction Set Architecture)を指します。arm社では、ISAのライセンスとIP提供の両方を行っています。
 arm社は、1978年に前進となるAcorn Computers社がスタートアップ企業として創業し、初のarmプロセッサ ARM1が設計されました。1990年にはAdvanced RISC Machines LTDとして正式設立され、1993年よりIPビジネスモデルを導入しています。以降、携帯電話から徐々に普及していき、2000年代にCortex-A、Cortex-R、Cortex-Mを市場投入しました。
 armは低消費電力と高性能を両立し、組み込み機器からスーパーコンピュータまで様々な機器で使用されており、多くのMCUベンダがarmコア搭載MCUをリリースしています。最たるものはスマートフォンで、そのCPUは殆どがarmベースのプロセッサを採用しています。(arm社調べ:99%)
 MCU向けのarmコアに注目すると、現在は以下のようなコアを搭載した製品がリリースされています。ARMv6-M、ARMv7-Mなどはアーキテクチャを指しており、数字が大きくなるほど新しい世代のアーキテクチャとなります。 

● ARMv6-M Cortex-M0, Cortex-M0+, Cortex-M1
● ARMv7-M Cortex-M3, Cortex-M4, Cortex-M7
● ARMv8-M Baseline Cortex-M23
● ARMv8-M Mainline Cortex-M33, Cortex-M35P
● ARMv8.1-M Mainline Cortex-M52, Cortex-M55, Cortex-M75

RISC-V(リスク-ファイブ)

 RISC-Vはカリフォルニア大学バークレー校(UCB:University of California, Berkeley)が研究用として開発したISAです。2011年頃から検討が開始され、論文発表を経て商用化を目指した団体 “RISC-V Foundation” を設立し、ISAを公開しました。

 RISC-Vは完全にオープンで、ISAを使用するためのライセンス料は不要です。

 RISC-V Foundationは非営利団体で100を超える企業が参加しています。2025年2月時点でPremier 23社、Strategic 166社が登録されており、それぞれグループに分かれて仕様策定の議論やエコシステム開発を実施しています。ISAを実装する会社(IPコアベンダ、MCUベンダ)と管理する団体(RISC-V Foundation)が完全に分離されているため、ISAの取り扱いに関して1社の都合に影響されません。

 RISC-VのIPコアベンダとしては以下のような会社があり、その他に自社MCU向けにRISC-Vコアを開発するMCUベンダもあります。

● Andes Technology
● Cadasip
● Cortus
● Quintauris
● SiFive
● Synopsys

 RISC-VのコアはISAの種類/組み合わせで分類されており、ビット数の数値以降にオプションなどの内容が続くものとなっています。オプションの内容に関しては後述します。

● 32bit RV32I, RV32E, RV32GC
● 64bit RV64I, RV64E, RV64GC
● 128bit RV128I

オリジナルコア

 国内でよく見かけるオリジナルコアを3点紹介します。
1. PIC(Peripheral Interface Controller)
 マイクロチップ・テクノロジー製のMCUコア、同名のMCUファミリを展開しています。PIC16/PIC18/PIC20は8bitコアの製品群、PIC24/dsPIC33は16bitの製品群です。PIC32はARM CortexやMIPS32を採用した32bitの製品群となっています。歴史のあるコアで、1975年にジェネラル・インストゥルメント社により開発され、1985年にPIC事業部門が独立してマイクロチップ社となりました。

2. RL78
 ルネサスエレクトロニクス製の16bitコア、同名のMCUファミリを展開しています。旧NECエレクトロニクス製78K0Rを改良したもので、3段パイプライン・ハーバード・アーキテクチャを採用しており、CPU処理性能が飛躍的に向上しています。

3. RX
 ルネサスエレクトロニクス製の32bitコア、同名のMCUファミリを展開しています。5段パイプライン・ハーバード・アーキテクチャを採用しており、RXv1から始まりRXv3と三代目がリリースされています。旧製品である「H8S, H8SXファミリ」「M16C, R32Cファミリ」で培ったCISCの長所と、「SuperHファミリ」で培ったRISCの長所を融合し、CISCでありながらRISCの高速化手法を取り入れたコアとなっています。コード効率、演算性能、電力効率で強みを発揮します。

2. 主要なMCUコアの機能・性能比較

CoreMark®ベンチマーク

 EEMBCで公開されているCoreMarkのベンチマーク結果を見てみましょう。
どのアーキテクチャも基本的にはコアの世代、ランクが上がると周波数あたりの性能(CoreMark/MHz)が上がっているのが分かります。
RISC-Vは同名のコアでのIPとして固まったものではなく、各社がIPへの実装を工夫するため、同名コア(同じExtensionを盛り込んだもの)でも実装により性能が変わります。Andes Technologyでは20番台は5-stage、40番台は8-stageとなるため、性能差が出ています。
(RISC-Vのコア名(Extension)に関しては、この後説明します。)

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CoreMark®ベンチマーク(EEMBC公開情報より引用)

arm

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ARM Cortex-M white paperより引用
(クリックで拡大表示します)

 現在、ARMのMCUコアはARMv6-MからARMv8.1-Mまでを展開しています。

 ARMv6-MからARMv7-Mまではスケーラブルに命令セットを拡張する形で、Cortex-M0/M0+からM7まで製品展開しています。

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Cortex-M4とCortex-M33の比較
(クリックで拡大表示します)

 ARMv7-MからARMv8-Mの変化は、Cortex-M4とCortex-M33を例に見ると、TrustZone対応とMTB(Micro Trace Buffer)であることが分かります。

 IoT化が進む中、機器のセキュリティ対応が必要となっていますが、ARMv8-MではTrustZoneによりセキュリティの強化を図っています。

 細かな構成差分は下表をご参照ください。

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ARM Cortex-M Processor Comparison Tableより引用

 

RISC-V

 Base ISAであるRV32I, RV64I, RV32Eを基本として、下表に示す拡張命令セット(Extension)を付加することでMCUコアでサポートするISAを決定します。
 拡張命令セットの組み合わせにより、アプリケーションで必要となる機能を実現します。

 また、RISC-Vコアの名称は下表のExtensionで対応しているもののNameを上から順に記載するものとなります。

 例:RV32IMACB

Base ISA RV32I
Extensions M:整数乗除算
A:アトミック命令
C:16bit長圧縮命令セット
B:ビット操作
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RISC-V Standard ISA一覧

 RISC-VのオペコードマップにはCustom0~3があり、カスタム命令として独自の命令を実装することが可能です。MCUコアベンダがアプリケーションに合わせた命令を実装することで、アプリケーションの処理速度を向上させることができます。

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The RISC-V Instruction Set Manual Volume I Unprivileged ISA より引用

3. 各コアを使用した主要なMCUとエコシステム

arm

1. ルネサスエレクトロニクス

  • Cortex-M搭載のRAシリーズにて、Cortex-M0+から最新のCortex-M85まで幅広い製品を展開
  • Cortex-A搭載のRZシリーズでもRTOS搭載でMCUとして使用可能な製品をラインナップ

2. Microchip

  • SAMシリーズ, PIC32シリーズでCortex-M0+からCortex-M7までの製品を展開
  • IoT用途からセキュリティ用途、車載用途まで幅広いアプリケーションに対応

3. NXP

  • Cortex-M0+からCortex-M7までの製品を展開
  • Kinetis, LPC, MCXと複数種類の製品ラインナップを持ち、i.MX RTシリーズではプロセッサライクな処理性能重視の製品を展開

4. STMicroelectronics

  • STM32としてCortex-M0からCortex-M55までの幅広い製品を展開
  • 超低消費電力から高性能、無線対応までアプリケーションに合わせた製品をラインナップ

5. エコシステム

  • ARM純正 Keil MDK-ARMIAR社製Embedded Workbench
  • その他、MCUメーカーよりGCCコンパイラを搭載したオリジナルの統合開発環境を提供中

RISC-V

1. ルネサスエレクトロニクス

  • モータ制御用ASSP、音声制御HMI用ASSPに続き、超低消費電力MCUを展開
  • 自社製RISC-Vコア搭載製品も展開中

2. Microchip

  • PIC64としてRISC-V搭載の高性能MPUをラインナップ
  • 宇宙用途向けとして放射線耐性を持ち、宇宙探査ミッションに適した高性能プロセッサのラインナップあり

3. WCH

  • CH32Vシリーズとして、STMicroelectronics製STM32互換ペリフェラル搭載製品を展開

4. その他

  • Infineon, NXP, STMicroelectronics, Nordic, BOSCH, QualcommなどがRISC-Vプロセッサ開発企業QUINTAURIS社に共同出資
  • Infineonは2030年をターゲットにRISC-V搭載車載MCUリリースすることを発表

5. エコシステム

  • IAR社製Embedded Workbench RISC-V
  • Efinix社製 Efinity® RISC-V Embedded Software IDE
  • ASHLING社製 RiscFree SDK
  • Renesas社製 e2 studio

4. まとめ

 armとRISC-Vに関して、沿革から性能・特長まで見ていきましたが、いかがでしたでしょうか?BCPの観点でarmを選択される方も多いと思います。armの魅力は各社がarm社提供のコアを使用しており、ツールなどの共通化が行いやすい点にあります。しかしながら、arm社の開発方針やライセンスに左右されやすいという課題もあります。RISC-VはオープンソースとしてISAのみ提供されており、各社で自由にコア開発が行えることが特徴です。提供されているISAに関しては共通ツールが使用でき、ライセンスフリーで使用できることも魅力となります。
 汎用(はんよう)MCU以外でも、専用ICのコントロール部にRISC-Vを採用するなど、MCUとして普段気にしないカ所での採用も進んでいます。また、中国や欧州などは各々RISC-Vに注目しており、今後もRISC-V採用製品が増えていくことが予想されます。

(執筆:木庭マサヒロ)

マイコンの基礎、選定ポイントにご興味のある方は、こちらの記事をご覧ください。

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