柔軟性と高性能で進化する協働ロボット:注目の最新モデルを紹介
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- 更新日
- 公開日
- 2025.08.05

繊細な動き、人と協働できる安全性、そして開発者フレンドリーな設計。Franka Roboticsが手がける協働ロボット「Franka Research 3」は、研究開発から産業応用まで幅広い分野で注目を集めています。
本記事では、Franka Roboticsの歩みから主力モデルの特徴、グローバルな開発者コミュニティ、そして具体的な導入事例までを紹介します。
「使いやすくて高性能」な協働ロボットをお探しの方は、ぜひ最後までご覧ください。
INDEX
1.注目のロボットベンチャーであるFranka Roboticsとは?
近年、世界中で注目を集めているロボットベンチャーのひとつが、ドイツに本拠を置く「Franka Robotics」です。同社は、ドイツ航空宇宙センタ(DLR)で研究を行っていたエンジニアたちによって2016年に設立されました。
Franka Roboticsの開発したロボットアームは、2018年にドイツの権威ある「ドイツ未来賞(Deutscher Zukunftspreis)」を受賞。また同年には、米TIME誌の表紙を飾り「画期的な製品」として紹介されるなど、高い技術力が国際的にも認められました。
このFranka Roboticsが生み出す協働ロボットは、製造業だけでなく、研究開発や教育現場などさまざまな分野で活用が進んでいます。日本では、リョーサンが唯一の正規代理店として展開を担っており、国内での導入支援や技術サポートも提供しています。
6月にドイツで表彰式があり、日本における「Franka Robotics Strategic Partner Award」をリョーサンのロボットプロジェクトチームが受賞しました。

2.Franka Research 3の特徴3選

Franka Roboticsの主力モデル「Franka Research 3」は、
研究開発や教育用途に最適化された次世代型の協働ロボットです。
直感的に操作しやすく、初めて協働ロボットに触れる人でも扱いやすい設計になっています。
この協働ロボットには下記の3つの優れた特徴があります。
1. 柔軟な動きを実現する「7軸可動」と「全軸トルクセンサ」
2. 開発を加速する「ROS/ROS2対応」
3. 高精度な「リアルタイム制御」
ひとつずつ見ていきましょう。
特徴1.柔軟な動きを実現する「7軸可動」と「全軸トルクセンサ」
Franka Research 3は、一般的な6軸ロボットに比べて1軸多い「7軸構造」を採用しています。この軸構造により、人間の腕に近い柔軟でしなやかな動きが可能です。狭いスペースでの動作や複雑な位置関係の作業でも無理なく自在に動作します。
さらに、全ての関節に「トルクセンサ」が内蔵されているのも大きな特徴です。ロボットに加わる微細な力の変化を瞬時に察知し、安全に止まる、力を加減する、など繊細な作業も安心して行えます。
特徴2.開発を加速する「ROS/ROS2対応」
Franka Research 3は、ロボット開発で世界的に広く使われている「ROS(Robot Operating System)」とその後継である「ROS2」に完全対応しています。
【ROSとは】 ロボットを制御するための共通の“土台”や“ツール群”のようなもの。オープンソース(誰でも自由に使える技術)として多くの開発者が利用している。 |
ROS/ROS2に対応していることで、すでに公開されている多くのプログラムや機能を活用しながら、スムーズにカスタマイズや開発ができる点が大きな魅力です。
特徴3.高精度な「リアルタイム制御」
Franka Research 3は、「1kHz(キロヘルツ)」という非常に高い制御頻度で動きます。これは1秒間に1,000回の指令を出せるという意味で、ミリ秒(1,000分の1秒)単位で動きを調整できることを表します。
ミュンヘン工科大学の研究技術(液体をこぼさずに運ぶ)でもFranka Roboticsのリアルタイム制御の特徴が注目されており、ロボットの軌道最適化に関する先進的な取り組みに貢献しています。この技術は介護分野やサービスロボット分野で、液体を安全かつ迅速に運ぶ必要がある状況を想定しており、こぼれを防ぐためのリアルタイム制御技術に焦点が当てられています。
以下の動画は実際にFranka Research 3にミュンヘン工科大学の研究技術を用いて作成したデモンストレーションです。どれだけ動かしてもカップの中身がこぼれない様子をご覧ください。
3.開発者をつなぐグローバルエコシステム
Franka Roboticsの魅力は、ロボット本体の性能だけにとどまりません。開発者同士がつながり、互いの知見を活かし合える「エコシステム(技術者の協力環境)」が整っていることも大きな強みです。
Franka Roboticsは、専用のオンラインプラットフォーム「Franka World」を運営しており、世界中のユーザがこのコミュニティを通じて情報交換を行っています。プログラムの例や課題の解決方法、使用事例などが日々共有され、初心者から上級者まで幅広い開発者が参加しています。
また、オープンソースのコード共有サイト「GitHub(ギットハブ)」上でも次のようなデータが数多く公開されています。
【GitHub上で公開されているデータの例】 ● Franka Roboticsに関するチュートリアル ● サンプルコード ● 技術ドキュメント |
特に、ロボット開発の共通プラットフォームである「ROS/ROS2(Robot Operating System)」との連携に関する情報も豊富です。このようなコミュニティがあることで、世界中の開発者がFranka Roboticsを安心して選び、そして互いに学び合いながら開発を加速させることができるのです。
4.Franka Roboticsの導入事例を紹介
Franka Roboticsの協働ロボットは、優れた操作性と柔軟性が評価され、すでに世界中の研究機関や企業で活用されています。導入先は大学の研究室にとどまらず、大手テック企業や新興分野の開発現場にも広がっています。
研究開発分野での躍進
AIや機械学習、画像認識、ロボット制御などの最先端分野で注目されています。実際、研究論文は年々増加しており、2023年には年間で約1,200本もの論文が発表されました。
この数は、研究者の間で「実験に適したロボット」として高く評価されていることを物語っています。繊細な動作制御やプログラミングの自由度が高く、想定通りの実験が行いやすいため、多くの研究室で活用が進んでいます。
産業分野への展開
Franka Roboticsの技術は、研究開発だけでなく、すでに産業現場へも広がり始めています。例えば、Franka Robotics自身の生産ラインにも自社製ロボットが導入されており、生産性の向上に寄与しているのです。
また、農業やヘルスケアといった分野でも活用が進んでいます。
【産業分野への具体例】 ● イチゴを自動で収穫する農業ロボット ● 人の身体に触れてマッサージを行うヘルスケアロボット など |
上記のように、これまでロボット導入が難しいとされてきた分野でも新しい可能性を切り拓いています。こうした新しい応用領域は「ディスラプティブ市場(既存の常識を破る革新的な市場)」と呼ばれ、今後の成長が大きく期待されています。
5. まとめ
Franka Roboticsの「Franka Research 3」は、柔軟な動作、安全性、高い開発親和性といった多彩な特徴を備え、研究現場だけでなく実際の産業の中でもその存在感を強めています。
世界的な企業や研究機関がFranka Roboticsを選ぶ理由は、単なる“ロボット”を超えた「使いやすさ」と「進化の余地」にあります。特に、ROS/ROS2への対応やリアルタイム制御機能は、今後さらに高度化するロボット活用シーンにおいて欠かせない要素といえるでしょう。
リョーサンは、Franka Roboticsの日本国内における唯一の正規代理店として、製品導入から技術サポートまで一貫したご支援を行っています。本記事を読んで、Franka Roboticsの協働ロボットにご興味をお持ちいただけましたら、お気軽にお問い合わせください。
(編集者:中川鈴菜)