EMIについて- 第1回 - EMIの基礎

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  • 更新日
  • 2023.09.15
  • 公開日
  • 2023.07.11

1. EMI・EMS・EMCとは

 EMIとは、電子機器から発生する電磁波が他の電子機器に妨害を及ぼす現象です。
 この現象には、機器そのものがノイズ源となって他の機器に影響を与える可能性と、周囲の電子機器によって発生されたノイズの影響を受ける可能性の2つがあります。
 EMIと合わせてよく出る言葉としてEMSとEMCがあります。似ている用語ですが意味が全く異なりますので、混同しないように以下にまとめておきます。

表1. EMI・EMS・EMCとは

略称 用語と意味 解説
EMI Electromagnetic Interference
電磁妨害
導体を伝搬するノイズや電磁波ノイズによる妨害を指すが、機器から出力されるノイズ全般を意味する事が多い
EMS Electromagnetic Susceptibility
電磁感受性
導体を伝搬するノイズや静電気を含む、外来の電磁波や電気的ストレスに対する耐性(ノイズを受ける側の耐性)
EMC Electromagnetic Compatibility
電磁両立性
ノイズを出すEMIと、ノイズを受けるEMSの総称(ノイズによる妨害ノイズを受ける側の耐性の総称)
図1. EMI・EMS・EMCの関係性
図1. EMI・EMS・EMCの関係性

2. EMIが問題となるケース

 EMIが問題となるケースは、主に下記の3点に分類出来ます。

① EMI規格に適合出来ないケース

 機器が放射 or 導体を伝搬するノイズの上限は、CISPRやVCCI、FCC等の規格団体で定められたEMI規格に適合していないと、製品として出荷出来ません。

図2. ①EMI規制をクリア出来ない
図2. EMI規格に適合出来ないケース

② 妨害電磁波による影響があるケース

 EMI規格には適合出来ていますが、妨害電磁波が他機器に影響を与えてしまうケースです。

図3. ②EMI規制はクリアするが、妨害電磁波による影響あり
図3. 妨害電磁波による影響があるケース

③ 導体伝搬ノイズによる影響があるケース

 EMI規格には適合出来ていますが、導体(電源、GND、信号ライン等)を伝搬するノイズが他機器に影響を与えてしまうケースです。

図4. ③EMI規制はクリアするが、導体伝搬ノイズによる影響あり
図4. 導体伝搬ノイズによる影響があるケース

 上記の②と③は別の機器間の干渉だけではなく、EMI自家中毒とも表現するように、単一機器内でも発生します。EMI関連の規格については、第2回で説明します。

3. EMIの影響

 放射・伝搬ノイズがEMI規格に適合していても、各種アナログ特性に影響を及ぼすことで特性を劣化させてしまうケースがあります。
 これらは、主にデジタル回路(デジタル的に動作するDCDCコンバータ等を含む)で発生するノイズが、アナログ回路の特性に影響するケースが大半を占めます。今後の連載では、これらに関する事例や対策について紹介したいと思います。

図5. デジタル回路ノイズのアナログ回路への影響経路
図5. デジタル回路ノイズのアナログ回路への影響経路

4. EMIで使われる単位

 EMIで頻出する単位として、以下の4つがあります。

電圧 [dBμV],電流 [dBμA],電界強度 [dBμV/m],磁界強度 [dBμA/m]

 物体が放射している電界・磁界はアンテナで取得するため、 [dBμV]・[dBμA]に加えて[/m]という単位を付加し、アンテナを用いた計測である事を示しています。電界→電圧変換はアンテナの実効波長やアンテナ利得を加味し、また磁界→電流変換はアンテナの係数を加味して計算します。

これらのことから、電界は電圧起因、磁界は電流起因を表していることが分かります。

 [dB]は入力と出力の比率でよく使われ、ある物理量と基準となる量の比を表します。これは増幅もしくは減衰の比が大きい数値(10の乗数)となり、常用対数で表記されます。

 [dBμV]や[dBμA]はdBを用いて表される電圧と電流の単位で、基準値が1[μV]、 1[μA]になります。

 参考までにFMラジオの場合は、

-10[dBμV](=0.3[μV])

の入力信号が音声に変換されるのですが、このFMは信号に対する感度が高く、ノイズの影響を受けやすい、という性質があります。

 私も過去に評価基板を作成し特性を測ったところ、ノイズによって全く特性が取れないポイントが何点かございました。多少のEMIノイズであれば、基板の配線パターンの工夫やバイパスコンデンサの配置、部品の付加等によってある程度低減出来ます。EMIノイズが大きい場合は、EMI規格に準拠しない等の厄介な問題を引き起こし得るため、特に注意が必要です。

5. まとめ

 EMIの対策は後回しにしよう・・・といった話を聞く事があるかと思いますが、EMIに関しては、あらかじめその重要性や起こり得る問題を理解し、開発や設計の上流段階から検討を行い、対策を盛り込む事が非常に重要です。対策を後回しにしてしまうことで、EMI規格に準拠しない、所望の特性が得られない、等の諸問題によって手戻り作業が発生してしまい、製品開発に大きな遅延が生じてしまう事が考えられます。

 本連載記事は、読者の皆様に向けた参考情報として、少しでもお役に立つことが出来ればと考えております。

 連載の初回である今回は、EMIとは何かと、EMIが引き起こす問題について説明しました。

 次回は「電磁波とは」と各種EMIの「規格と測定」方法について説明します。さらに以降の連載では、EMIの発生要因や対策といった、より具体的な内容になる予定です。

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