• Home
  • /
  • 記事を探す
  • /
  • 建機・農機のGX "電動化が進まない理由"と解決方法

建機・農機のGX "電動化が進まない理由"と解決方法

........

  • 更新日
  • 2024.07.24
  • 公開日
  • 2024.07.08

 世界的なGXの取り組みにより、建機(建設機械)・農機(農業機械)業界でも電動化による排気ガス削減が注目されています。これらの取り組みは環境保護の側面だけでなく、新しいビジネスチャンスになります。
 今回の記事では、建機・農機を電動化するにあたってのメリットや課題、またその解決策について解説します。

1.建機・農機を電動化するメリット

 建機・農機を電動化することにより以下のメリットがうまれます。

【排気ガス削減】

 油圧駆動からモータによる電気駆動に代わるため、排出されるガスがなくなります。

 例:スウェーデンの採石場で行われた試験では、電動化することでCO2排出量を98%削減することに成功しています。

【低騒音】

 大型の油圧駆動音は非常に大きく騒音問題になることもあったが、電動化製品の場合、モータ駆動になるため、駆動音を大幅に小さくする事が実現できます。その為、都市部や閉鎖環境の工事にも向いています。

【作業時間制限の撤廃】

 これまで日本の建設現場では、騒音や振動、排ガスなどの関係で、作業時間の制限があったが、モータによる電気駆動に代わることで環境に優しくなり、早朝や深夜など作業時間の制限がなくなり自由に作業することができます。

2.建機・農機の電動化が進まない理由(課題)

 電動化が進まない理由としては以下が挙げられます。

①バッテリー稼働時間

 バッテリー駆動になる為、稼働時間が油圧駆動よりも短くなります。

②電動化(モータ/インバータ)の知見

 電動化(モータ/インバータ)の知見が必要になります。

③コスト

 一般的に電動化すると現行の2~4倍程度のコストがかかると言われており、採用に至るまでにコスト面でのハードルがあります。

④パワー不足

 化石燃料を燃焼して動かしていた油圧駆動に比べて、モータによる電気駆動ではパワーが落ちてしまいます。これは建設現場での電動化が難しい理由のひとつです。

⑤製品寿命

 一般的にモータによる電気駆動の方が油圧駆動に比べ製品寿命が短いと考えられています。

 ※しかし電動化製品の活用が始まって月日が浅いため、実績がなくまだ比較は出来ません。

3.モータ置き換えによる課題の解決法

 今までの油圧駆動で製品を動かしていたお客様にとって、製品を電動化するという事は想像以上にハードルが高くなります。建機・農機の電動化に対する課題の中で、以下の2点の課題について解決方法を用意しております。

3-1.バッテリー稼働時間の改善策

 バッテリー稼働時間を長くする改善策には、以下の方法が考えられます。

モータ、モータ駆動部(インバータ基板)の小型化、軽量化

 製品自体が重いと、駆動するために大きな力が必要となり、バッテリーの消費が増えます。また、小型化を行うことで、搭載できるバッテリーのスペースをより確保することが出来ます。その為、モータを軽量化する事で消費電力を抑えられ、更にモータを小型化した分、バッテリー容量を増やすことができ、稼働時間を長くすることが出来ます。

高効率なモータ(ブラシレスモータ)の使用

 ブラシと整流子が無いことで、機械損失がなくなり、小型化と駆動効率の向上を実現出来ます。その為、稼働時間を長くすることが出来ます。

モータの発熱を軽減

 高効率で回転させることにより、電力損失を減らし、モータの発熱を抑えることが出来ます。その為、稼働時間を長くすることが出来ます。

インバータ基板にパワーデバイスを使用し、高効率化

 SiCやGaNパワーデバイスは従来のシリコンベースのデバイスに比べて高効率なエネルギー変換を実現することが出来ます。

 詳しくは別記事を作成しておりますので、ご参照ください。

 

 現状のモータ駆動では、長時間の連続稼働が課題になっており、充電インフラの整備やバッテリー交換システムの開発が進められています。

3-2.電動化(モータ/インバータ)の知見が必要な理由

 電動化=モータ制御になるため、モータを動かす電気的な知見が必要になっていきます。

 3-1.で記載している、モータ/インバータについてですが、基本的にモータとインバータはセットで使用します。インバータは周波数を自在に変更することができ、周波数はモータの回転速度に影響を与えるため、この性質を利用して、インバータによって周波数を制御することで、モータの回転速度を連続的かつ自在に制御することが出来ます。しかし、モータ制御には様々なアルゴリズムがあり基本を押さえることも数学的知識が必要となります。また負荷に合わせた適切なパラメータチューニングを行わなければ、性能が十分に出ないという課題もあります。



4.まとめ

 建機・農機の電動化ハードルが高い一面もありますが、排気ガス削減、低騒音、そして作業時間制限の撤廃など、さまざまな面で有益です。建機・農機の電動化が進んでいない今、一足先にモータのご検討をしてみてはいかがでしょうか?

 当社のパートナーはモータ、インバータ制御において豊富な実績及び制御知見を持っています。お客様課題の解決に向けて、インバータ試作開発から量産対応、最適モータの提案までお客様ニーズに合わせたご提案をさせて頂きます。今まで電動化の検討が出来なかったお客様に対して製品開発(電動化対応)が進むことにより、GX、カーボンニュートラルの実現、またお客様の企業イメージUPに繋がると考えております。



(執筆者: 深田新、山口央、編集者:安西滉樹)

こんな記事もおすすめ

その他お役立ち情報を探す

記事一覧にもどる

関連イベント