• Home
  • /
  • 記事を探す
  • /
  • Omniverseで出来ること。NVIDIAが提唱する次なるデジタルツイン

Omniverseで出来ること。NVIDIAが提唱する次なるデジタルツイン

........

  • 更新日
  • 公開日
  • 2025.11.27

 製造業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速する中、デジタルツイン技術は、単なるシミュレーションを超えた「リアルタイムな意思決定支援ツール」として注目を集めています。中でも、NVIDIA Omniverse™は、複雑な製造プロセスを仮想空間で再現し、設計・検証・運用までを一気通貫で支援する革新的なプラットフォームです。
 本記事では、ハノーバーメッセで紹介された最新事例や、国内外の企業によるOmniverse活用事例を通じて、デジタルツインの可能性とOmniverseの優位性を解説します。

※本記事の内容は2025年6月時点の情報に基づいています。



1. ハノーバーメッセで見えた製造業の未来

 世界最大級の産業見本市「ハノーバーメッセ」では、デジタルスレッドによる製造プロセスの最適化や、AR/VRを活用した設計検証など、デジタルツインの活用が多くの企業で進んでいることが明らかになりました。特に注目されたのが、バリューチェーン全体のデジタルツイン化。設計から製造、保守までを一貫して仮想空間で管理することで、マニュアル作業の削減や損益分岐点の自動計算、フルトレーサビリティの実現が可能となっています。

2. NVIDIA Omniverseがもたらす革新

 Omniverseは次世代の3Dアプリケーションとサービスを構築するためのリアルタイム・コラボレーション・プラットフォームです。

Omniverseの5つの特徴

効率的なコラボレーション
  • デザイン・エンジニアリング・建築・メディア業界のプロフェッショナルによる共同作業
  • リアルタイムコラボレーションの実現
コスト削減
  • 全作業のオンライン実施
  • 移動時間短縮
  • プロジェクト推進の効率化
高品質なシミュレーション環境
  • リアルで高品質なデザイン・シミュレーション簡易作成
  • 製品品質向上・顧客満足度向上
  • リアルタイムコラボレーション・フィードバック
迅速なデザインレビューと意思決定
  • 迅速な意思決定・スムーズなプロジェクト進行
  • 様々な3Dツールとの連携
デバイス・ツールとの互換性
  • デバイス・ソフトウェアとの互換性

2-1. リアルタイム3Dコラボレーション

 Omniverseは、OpenUSDをベースにしたリアルタイム3Dプラットフォームであり、複数のCADツールやCAE解析結果を統合し、高精度なシミュレーション環境を構築できます。これにより、設計者・エンジニア・現場担当者が同じ仮想空間で協働し、迅速な意思決定が可能になります。

2-2. 合成データによるAIトレーニング

 現実では取得が困難なデータも、Omniverse上で生成可能な合成データにより、AIモデルのトレーニングや検証が効率化されます。これにより、ロボットの動作学習や異常検知モデルの精度向上が期待されます。

 さらに、NVIDIAが提供する「Omniverse Blueprint」は、CAEツールとの連携によって物理シミュレーションを高速化し、リアルタイムでの可視化を可能にする設計支援環境です。航空宇宙・自動車・製造・エネルギー分野などにおいて、合成データの生成やAIトレーニングの前段階であるシミュレーション精度と効率を大幅に向上させます。流体解析ソフト「Ansys Fluent」と連携した場合、25億セル規模の自動車シミュレーションを320基のGPUで約6時間で完了します。従来のCPU環境では約1カ月かかる処理を大幅に短縮しています。

出典:日本ヒューレット・パッカード合同会社「デジタルツインの重要性」ウェビナ登壇資料より引用

2-3. 実績ある導入事例

 - BMW:工場全体の3Dモデルを構築し、新設備導入時のプランニングに活用

 - Amazon Robotics:物流ロボットのAI学習用データ生成にOmniverseを活用

 - Foxconn:工場レイアウトやロボットワークセルの設計・検証をOmniverseで実施

3. 国内企業によるOmniverse活用

3-1. 菱洋エレクトロの取り組み

 菱洋エレクトロは、NVIDIA製品の一次代理店として、Omniverseを活用したフィジカルAI検証環境を構築しました。合成データと実データの融合により、仮想空間での検証精度を高め、製造現場へのスムーズな導入を支援しています。

Robotics 物理法則を伴うシミュ レーション

3-2. IVI業界での実証実験

 自動車業界では、LED照明装置のCADデータをOmniverse上で再現し、発光特性や傷の検出をシミュレーションする取り組みが進行中です。高精度3DスキャナーやBRDF測定装置との連携により、検査精度の向上が図られています。

IVI (Industry Value Chain Initiative)における実証検証
出典:日本ヒューレット・パッカード合同会社「デジタルツインの重要性」ウェビナ登壇資料より引用

4. HPEとの連携による導入支援

 HPEは、Omniverseエンタープライズ環境をオンプレミスでクラウドライクに提供する「GreenLake FlexSolution」や、生成AIを簡単に導入可能な「HP Private Cloud AI」を展開しています。これにより、企業は初期投資を抑えつつ、短期間でデジタルツイン環境を構築できます。

GreenLake Flex Solution
出典:日本ヒューレット・パッカード合同会社「デジタルツインの重要性」ウェビナ登壇資料より引用
HP Private Cloud AI
出典:日本ヒューレット・パッカード合同会社「デジタルツインの重要性」ウェビナ登壇資料より引用

HPEの提供ソリューション

GreenLake FlexSolution for Digital Twin
  • オンプレミス環境でクラウドライクに従量課金
  • フルマネージド型でOmniverseエンタープライズ環境を提供
HP Private Cloud AI
  • お客様のオンプレミス環境で、生成AIを簡単に利用可能
  • 構成パッケージを用意し、お客様は短時間で検討・導入が可能

※HP Private Cloud AIはNVIDIAとの共同開発によるAI短期ソリューション

 

5. まとめ:Omniverseが描く未来

 NVIDIA Omniverseは、単なる3Dツールではなく、製造業の課題を根本から解決するプラットフォームです。リアルと仮想の橋渡しを可能にし、意思決定の迅速化・人材不足の補完・サステナビリティの向上など、多くのメリットを提供します。さらに、OpenUSDによる高い互換性と拡張性、Omniverse BlueprintによるCAE連携の高速化、生成AIとの融合による合成データの活用など、技術面での進化は、従来のシミュレーション環境を大きく変革しつつあります。また、HPEとの連携により、オンプレミス環境でもクラウドライクにOmniverseを導入できる柔軟な選択肢が整っており、企業のIT戦略や現場の運用に合わせたスムーズな展開が可能です。

 今後、デジタルツインの導入を検討する企業にとって、Omniverseは最も有力な選択肢の一つとなるでしょう。

(編集者:江田 昌隆、大沼 正人)

 

 生産ライン全体の効率を高める「全体最適」の重要性に関心がある方や、デジタルツインの導入を検討している方、製造DXに興味がある方は、こちらの記事をご覧ください。

こんな記事もおすすめ

その他お役立ち情報を探す

記事一覧にもどる

関連イベント