EMIについて- 第4回 - EMI対策の基礎

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  • 更新日
  • 2023.09.15
  • 公開日
  • 2023.08.01

1. はじめに

 前回は、EMIの発生要因について説明しました。
 連載4回目の今回は、EMI対策の基礎について説明します。EMI対策でしばしば使用されるフィルタ回路、それを構成するコンデンサやコイルの特性、そしてノイズの抑制に効果的な配置場所についてお伝えしたいと思います。

2. EMI対策のコイルとコンデンサ特性

 ノイズ対策にはコイルやコンデンサを用いたフィルタを構成して、所望の周波数帯の信号レベルを減衰させる手法が取られます。ここでは、フィルタの構成部品となるコイルやコンデンサの周波数特性について説明します。

① コイルの周波数特性

 配線には必ずインダクタンス成分があり、理想のインダクタンスのインピーダンス特性(ZL)は、入力信号の周波数が高くなるほどインピーダンスが大きくなります。高い周波数ではノイズ(導体ノイズ 及び 放射ノイズ)が大きくなるので、インダクタンスの値には注意が必要です。

ZL=2πfL(π:円周率、f:周波数、L:固有のインダクタンス)

 グラフで表すと以下のようになります。

図1. 理想的なインダクタンスの周波数特性
図1. 理想的なインダクタンスの周波数特性

 しかし実際のコイルには、インダクタンス成分以外に端子や巻き線の抵抗(R)や寄生容量(C)が存在するため、以下のようになります。

図2. 実際のコイルの周波数特性
図2. 実際のコイルの周波数特性

 実際の周波数特性は極値点を持った特性を示し、この極値点のことを「自己共振周波数」と言います。自己共振周波数までは、周波数が高くなるにつれてインピーダンスが大きくなります。自己共振周波数より高い周波数では、周波数が上がるにつれてインピーダンスが小さくなるため、コイルとしての働きが弱くなります。自己共振周波数は、一般的に以下の式で表されます。

fo=1/(2π√LC)

② コンデンサの周波数特性

 コイルと同様に、理想のコンデンサのインピーダンス特性(Zc)は、入力信号の周波数が高くなるほどインピーダンスが小さくなります。

Zc=1/(2πfC)(π:円周率、f:周波数、C:固有の静電容量)

 グラフで表すと以下のようになります。

図3. 理想的なコンデンサの周波数特性
図3. 理想的なコンデンサの周波数特性

 しかし実際のコンデンサは抵抗成分やインダクタンス成分を含んでおり、これはC・R・Lが直列接続されている等価回路で表現することができます。この抵抗成分のことを等価直列抵抗(ESR)、インダクタンス成分のことを等価直列インダクタンス(ESL)といいます。インダクタンスは周波数成分を含むため、インピーダンスは自己共振周波数を境にして持ち上がる特性を描きます。

図4. 実際のコンデンサの周波数特性
図4. 実際のコンデンサの周波数特性

3. リターンパスの最小化

 ノイズ対策を考えるにあたり、回路上における電流のリターンパスという概念を理解する必要があるため、最初に説明します。

図5. 一般的な電流の向きは電源からGND
図5. 一般的な電流の向きは電源からGND

 電流は電位の高いところから低いところ、一般的には電源からGNDに向かって流れます。

図6. リターン電流
図6. リターン電流

 全ての電流はループとなって流れており、GNDから電源へ戻ってくる電流のことをリターン電流、リターン電流が戻るループ経路をリターンパスと呼びます。



図7. リターンパスとは
図7. リターンパスとは

 電源からGNDへ流れる電流は、バイパスコンデンサを経由して電源に帰還されます。出力で引き込む電流も同様に、バイパスコンデンサで帰還されます(図8の対策例を参照)。このリターンパスを可能な限り小さくすることがノイズ抑制の鍵となります(図8のベストな対策例を参照)。

図8. リターンパスの最小化
図8. リターンパスの最小化

4. まとめ

 今回は、EMI対策の基礎について説明しました。ノイズの抑制には、リターンパスを可能な限り小さくすることが鍵となります。このことは非常に重要ですので、是非覚えておいてください。

 次回からはいよいよ、具体的な対策に踏み込んでいきます。

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