EMIについて- 第5回 - EMIの信号系ノイズ対策

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  • 更新日
  • 2023.09.15
  • 公開日
  • 2023.08.08

1. はじめに

 第4回では、EMI対策の基礎について説明しました。今回からは、より具体的なノイズ対策について説明したいと思います。

2. 半導体内部のGND接続について

 基板上のノイズ対策の前に、まず半導体デバイス内部のGND接続について、お話したいと思います。

図1. 半導体デバイス内部のGND接続
図1. 半導体デバイス内部のGND接続

 一般的に半導体内部では、デジタル回路のGNDノイズがアナログ回路に悪影響を及ぼさないよう、デジタルGND(DGND)とアナログGND(AGND)を分離し、双方向ダイオード等で接続を行っています。

図2. 半導体デバイスを流れる電流
図2. 半導体デバイスを流れる電流

 アナログ回路とデジタル回路では、違う種類の電流が流れますが、GNDはダイオードを介して接続されているため、それぞれのGNDノイズはもう一方に影響しにくくなっています。

図3. 基板上にバイパスコンデンサを搭載
図3. 基板上にバイパスコンデンサを搭載

 一方基板では、GNDからの磁界や電界の放射を抑えるため、統一されたGND(ベタGND)上にDGND・AGNDを配線する事が多いです。基本的に各電源とGNDは反転したノイズを出していると考えられますので、基板上でペアとなる電源とGNDをバイパスコンデンサ(パスコン)でバイパスし、各GNDはパスコンを通過した後に接続します。

3. 信号系ノイズへの対策

対策① 信号線を内層に配線してGNDで挟む

 基板上の信号系ノイズへの対策は、ノイズを放射する経路をどれだけ最小限に出来るかが重要です。その対策の1つが、内層に信号パターンを通し、上下の層をGNDにして挟むことによって放射を減らす方法です。ただし配線容量が大きくなってしまうので、そのリターンパスを確保するために、各層間のGNDをスルーホールで共通化する必要があります。

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図4. 対策① 信号線を内層に配線してGNDで挟む

対策② GNDスルーホールを多用する

 基板上のGNDスルーホールを多用することで、ノイズを抑制する方法もあります。GND間のインピーダンスが高くなることは、信号電流のリターンパスのインピーダンスが高くなることを意味し、放射ノイズや導体ノイズの一因となってしまいます。基板厚1.6mmの4層基板で、1層目と4層目のGNDを1つのスルーホールで接続すると、1nHのLで接続したように見えます。このスルーホールを多用し、Lを並列接続してGND間インピーダンスを下げることで、磁界の放射や電圧降下による導体ノイズを抑制することが出来ます。

図5. 対策② GNDスルーホールを多用する
図5. 対策② GNDスルーホールを多用する

対策③ フェライトビーズ・RCフィルタを出力に挿入する


 信号の立ち上がり時間/立ち下がり時間(tr/tf)を遅くすることで、信号に含まれる高い周波数成分のノイズを減らす方法もあります。この方法は高い周波数成分には効果がありますが、低い周波数成分に対する効果は低いことが欠点です。スペクトルについては、第3回「5. 信号系ノイズのスペクトルについて」を御参照ください。

図6. 対策③ フェライトビーズ・RCフィルタを出力に挿入する
図6. 対策③ フェライトビーズ・RCフィルタを出力に挿入する

4. まとめ

 今回は主に、信号系ノイズ対策について説明しました。基板設計時には、基板のGNDを強化してシールドとして活用し、配線パターンのインピーダンスは出来るだけ小さくすることをお奨めします。

 次回は電源系ノイズについて説明する予定です。

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