EMIについて- 第6回 - EMIの電源系ノイズ対策

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  • 更新日
  • 2023.09.15
  • 公開日
  • 2023.08.22

1. はじめに

 第5回では信号系ノイズへの対策について説明しましたので、今回は電源系ノイズへの対策について説明します。

 デバイスに電流が流れる事で発生する電源系ノイズですが、その発生過程には、配線パターンのインピーダンスの大きさが影響しています。今回は、そのインピーダンスの抑制手法や、その他の電源ノイズ対策について紹介します。

2. 電源系ノイズへの対策

対策① ベタ配線によるインピーダンス低減とノイズ放射の抑制

 基板の配線において許容される電流は、パターン幅が1mmである場合、1Aが限界とされています。基板の配線パターンが細い場合は、配線を引き回してしまうとインピーダンスは大きくなってしまいます。ノイズ対策の手法としては、第5回 EMIの信号系ノイズ対策でも紹介しましたように、基板のインピーダンスを下げることを考えなければなりません。一般的にインピーダンスの影響がありそうな箇所に対しては、なるべく配線を引き回さないよう「配線パターンを並列にする」「パターン幅を太くする」のに加え、「電源やGNDをベタ配線にする」等の電源系ノイズへの対策が取られます。

図1. ベタ配線によるインピーダンスの低減
図1. ベタ配線によるインピーダンスの低減

 その他の対策としては、基板の電源層とGND層を近くに配置し、電源-GND間に容量を持たせてインピーダンスを下げることで、放射を減らす手法もあります。電源とGNDを共にベタ配線にすると面となるため、放射磁界も抑えることが出来ます。ただし形成される容量は、一般的なコンデンサ部品の容量と比べてそれ程大きくないので、効果は限定的です。

図2. ベタ配線によるノイズ放射の抑制
図2. ベタ配線によるノイズ放射の抑制

平行板の容量は一般的に

CK000198_emi06-formula1.png

で表されます。例えば、

CK000198_emi06-formula2.png

として計算した場合は

CK000198_emi06-formula3.png

となり、マイクロオーダーのような大きな値にはなりません。

対策② フィルタによる電源層の集約

 回路が複数の電源電圧を必要とする場合、それぞれをベタ電源層として持つのが理想ですが、コスト増に直結するので現実的ではありません。複数のベタ電源層の役割を1つの電源層で賄うには、電源の種類毎にそれぞれ適切なフィルタを付加する手法が有効です。その際に不要な周波数成分を取り除くフィルタ回路を構成するため、電源側に直列にフェライトビーズなどのインダクタンスを付加し、デバイスと並列にコンデンサを付加します。昨今は、機器の小型化によってパターン配線の制約が厳しくなっており、このような対策がトレンドになっているようです。

図3. フィルタによる電源層の集約
図3. フィルタによる電源層の集約

対策③ ノイズ対策用の特殊なコンデンサの使用

 フィルタ回路のバイパス効果を更に高める方法として、 LW逆転コンデンサや貫通コンデンサなどの特殊なコンデンサを使用することもあります。コンデンサの端子の成分としてESL(Equivalent Series Inductance:端子のインダクタンス成分)やESR(Equivalent Series Resistance:端子の抵抗成分)が存在します。
 LW逆転コンデンサは、ESL・ESRが低くなる構成となっております。
 貫通コンデンサは、入力端子と出力端子の間をGND接続されたコンデンサで挟んだ構成となっており、高周波成分のノイズをGNDへ逃がしやすくなっています。

表1. コンデンサの種類と特長・効果

コンデンサの種類 特長・効果
通常のチップコンデンサ
  • 等価的にESL・ESRを持ち、端子は短辺に配置されている
  • 高周波ではバイパス効果が低減される
LW逆転コンデンサ
  • 端子を長辺に変えることでESL・ESRが小さくなる
  • 高い周波数におけるインピーダンスを低減できる
貫通コンデンサ
  • GND側と2端子接続となるため、ESL・ESRを小さく抑えることが出来る
  • 入力と出力をコンデンサで挟むことで、高周波成分のノイズをGNDへ逃がすことができる
  • バイパス効果が高い
図4. ノイズ対策用コンデンサ
図4. ノイズ対策用コンデンサ

対策④ クロックへのSSCGの適用

 電源系ノイズへの対策として、クロックにSSCG(Spread Spectrum Clock Generator)を適用することも効果があります。
 図5は、SSCGを用いない通常のクロックと、SSCGを用いたクロックのスペクトル(信号の周波数成分の分布を示したもの)を対比させたものです。通常のクロックは、常時一定の周波数で信号を生成しています。これに対してSSCGを用いたクロック源は、中心周波数に対して+/-の両側に周波数が変化し、幅をもった周波数で信号を生成します。(-側のみに周波数を変化させる、down spreadと呼ばれる方法もあります。)

図5. SSCGの効果 その1(スペクトルの分散)
図5. SSCGの効果 その1(スペクトルの分散)

 クロックのスペクトルを分散させることで、同期するデジタル回路のノイズのスペクトルを分散させることが出来るので、結果として発生するノイズの平均レベルを下げることが出来ます。ただし無線等の信号の純度を問われるアプリケーションに使用する場合は、受信感度が劣化してしまう等の弊害が起こり得るので、ご注意ください。

図6. SSCGの効果 その2(平均レベルの低下)
図6. SSCGの効果 その2(平均レベルの低下)

対策⑤ バイパスコンデンサの配置

 一般的に「バイパスコンデンサはデバイスの電源やGNDに近い箇所に配置すべき」だと言われますが、これは「デバイスの電源/GNDから見てインピーダンスが低い箇所に配置する」ことを意味します。デバイスのノイズは電流性で、配線インピーダンスの影響を受けるため、バイパスコンデンサをデバイスの端子から遠くに配置してしまうと効果が低くなってしまいます。対策部品の効果を高めるには、デバイスの直近に配置し、配線インピーダンスを極力小さくする必要があります。

図7. バイパスコンデンサをデバイス近傍に配置
図7. バイパスコンデンサをデバイス近傍に配置

 バイパスコンデンサを配置する場所として表面(デバイス実装面)と裏面を比較すると、表面の方がインピーダンスを小さくすることが出来ます。表面にスペースが無い場合は裏面に配置することになりますが、デバイス端子とバイパスコンデンサの間にスルーホールが入ることで、そのインピーダンスが影響してフィルタの効果が低くなるため、あまりお勧め出来ません。また、距離的にバイパスコンデンサが近い位置に配置されていたとしても、配線距離が長いと効果を十分に発揮出来ませんので、ご注意下さい。

図8. バイパスコンデンサ実装面による違い
図8. バイパスコンデンサ実装面による違い


3. まとめ

 今回は電源系ノイズへの対策について説明しました。ノイズ発生の主な要因はインピーダンスです。そのインピーダンスを下げるため、基板上で適切な対策を行う必要があります。ただしその効果を確認するには、実機上での評価・検証が必要です。

 次回は、実際に起こったEMIの事例について説明します。お楽しみに!

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