EMIについて- 第8回 - EMIとクロストーク
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- 更新日
- 2023.09.15
- 公開日
- 2023.09.05
1. はじめに
第7回は、EMIの事例について紹介しました。今回は、基板の配線パターンによって引き起こされるクロストークの原因と対策について解説します。
2. クロストークとは
クロストークとは、配線を伝わる信号が、別の配線を伝わる信号に影響を与える現象です。クロストークによって影響を受けた信号の品質は劣化する恐れがあるため、何かしらの対策が必要になります。ここでは、SI(シグナル・インテグリティ、デジタル信号の品質のこと)で話題となる、クロストークの影響と対策について説明します。
3. クロストークによる影響と問題点
クロストークは配線間の距離が近いほど、また近接(並行)する区間の距離が長いほど、影響が大きくなります。
クロストークが回路上のデジタル信号に作用すると、後段の回路出力に様々な影響が現れます。例えば、クロストークの影響によるノイズがバッファの入力信号に入った場合、図2のように出力信号にグリッチ(ひげパルス)が現れたり、信号のHigh/Lowが反転するなどの予期せぬ現象が発生します。
信号の立ち上がりや立ち下がりがクロストークの影響を受けた場合には、図3のように、その信号のジッタとして現れることがあります。デジタル回路では、クロック信号のジッタは様々な問題を引き起こす要因となることが懸念されるため、特に注意が必要です。
4. クロストークの発生要因と対策
回路配線のすぐ近くに別の信号配線があると、寄生容量が生じて、クロストークが発生する可能性があります。基板設計のルールやガイドラインなどにより、層間の距離(層の厚さ)は同層で横に並ぶ配線間の距離よりも小さくなるケースが多いため、層間のクロストークは起こりやすいと言えます。
層間のクロストークは、出来るだけ信号が重ならないようにする事で対策が取れますが、間にGND層を挟むことでも解消出来ます。
クロストークが起こりやすいのは、周波数の高い信号です。同層で隣り合う信号で起こるクロストークに対しては、LPF(ローパスフィルタ)を挿入して高い周波数成分を減らすことで、影響を押さえることが出来ます。またこの他にも、GNDを挟むことや、信号の立ち上がり、立ち下がりを遅くすることも、効果があります。
デバイスの電源接続構成によっては、内部回路の電圧変動が出力信号に乗って出力され、クロストークのような症状が発生する場合があります。この現象に対しては、バイパスコンデンサの実装が有効な対策となります。
5. まとめ
今回は、配線を伝わる信号が、別の配線を伝わる信号に影響を与える現象である、クロストークについて説明しました。人と人との会話でも、語り手が多いと会話が成立しないですよね。信号も同様で、目的外の信号が混ざってしまうクロストークは、極力抑える必要があります。
次回は、ノイズに困ったときに役立つ、対策部品について紹介します。