EMIについて- 第9回 - EMI対策部品

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  • 更新日
  • 2023.09.19
  • 公開日
  • 2023.09.12

1. はじめに

 前回までは、主に基板から放出される電磁波や導体ノイズについて述べてきましたが、実際には機器としてもEMI対策を取る必要があります。
 今回は、機器として対策を取る際に利用される、EMI対策部品を紹介します。

2. より対線

 より対線(ツイストペアケーブルや平衡対ケーブルとも呼ぶ)は、ノイズを伝搬しにくくする目的で、様々な機器の電源やGNDの配線に使われています。
 電源やGNDの配線に電流が流れる事により、磁界が発生します。この電源・GND配線により対線を使うことで、磁界の発生を抑制することが出来ます。

図1. より対線が磁界ノイズを抑制出来る仕組み
図1. より対線が磁界ノイズを抑制出来る仕組み

3. 基板の電源端子近傍に配置されるコンデンサ

 様々な機器の基板の電源入力部に、容量が大きいコンデンサが使用されているケースがありますが、これもノイズを抑制する目的で使用されています。

 機器の電源と基板の間は配線で接続されますが、この配線はインダクタンスを持っています。この基板の電源入力部に容量の大きなコンデンサを実装する事で、入力インピーダンスを下げ、基板から電源への電流性ノイズの伝搬を低減することが出来ます。

図2. 基板の電源入力部に実装されるコンデンサ
図2. 基板の電源入力部に実装されるコンデンサ

4. シールド

 電子機器を製造する際には、電磁波が外部へ放射されるのを最小限に抑えなくてはなりません。これは法的な規制のためでもあり、周囲の機器の動作に悪影響を与えないためでもあります。
 電磁波の放射を防ぐ方法としては、ノイズ源である機器を金属で覆う「シールド」があります。またこれは、機器が外部に放射するノイズだけではなく、機器が外部から受けるノイズに対しても効果があります。
 シールドを使用する場合は、以下の点にご注意下さい。

図3. シールドとその効果(金属シールド)
図3. シールドとその効果(金属シールド)
  • シールドによって反射された電磁波は、機器内部に干渉することがあります。
  • シールドの接地が不十分な場合、反射された電磁波と金属表面に流れた高周波電流がノイズとして漏れることがあります。
図4. シールドとその効果(ノイズ抑制シート)
図4. シールドとその効果(ノイズ抑制シート)

 また反射が少なく実装が容易なノイズ対策部品として、フェライト等の磁性体を練りこんだノイズ抑制シートや、導電性インキを使った塗料などもあります。

図5. シールドとその効果(金属シールド+ノイズ抑制シート)
図5. シールドとその効果(金属シールド + ノイズ抑制シート)

 これらのシートや塗料は単体でも効果がありますが、「金属シールド + ノイズ抑制シート」のように組み合わせて使うのも効果的です。ノイズ抑制シートを金属シールドの内側に取り付ける事によって、外部に放射する電磁波を抑えながら、反射を熱に変換して最小限にすることが出来ます。

5. DCラインフィルタ

 電源への電流性ノイズの伝搬を減らす方法として、基板の電源入力部にDCラインフィルタを挿入する対策があります。これは電源や負荷のインピーダンスによってフィルタ回路とその効果が異なります。
 DCラインフィルタには、「ノーマルモードノイズ対策用フィルタ」と「コモンモードノイズ対策用コイル」があります。
 「ノーマルモードノイズ」とは、電源とGNDで逆位相となるノイズのことで、「ディファレンシャルモードノイズ」とも呼ばれます。過去回で紹介した内容は、概ねノーマルモードノイズです。
 「コモンモードノイズ」は、電源とGNDのノイズが同位相となるノイズのことです。
 ノイズ対策として適用される場合は、発生するノイズに合わせて、以下を使い分けることになります。

  • 「ノーマルモードノイズ対策用フィルタ」のみを適用
  • 「コモンモードノイズ対策用コイル」のみを適用
  • 「ノーマルモードノイズ対策用フィルタ」と「コモンモードノイズ対策用コイル」を組み合わせて適用

 逆位相のノイズに対しては、「ノーマルモードノイズ対策用フィルタ」を基板の電源入力部に挿入します。

図6. ノーマルモードノイズ対策用フィルタ
図6. ノーマルモードノイズ対策用フィルタ

 ノーマルモードノイズ対策用フィルタの主な種類を、表1にまとめました。

表1. ノーマルモードノイズ対策用フィルタの主な種類

フィルタ形式 LCフィルタ CLフィルタ Π型フィルタ T型フィルタ
入力側インピーダンス 高い 低い 高い 低い
出力側インピーダンス 低い 高い 高い 低い
周波数特性の傾き
(フィルタ減衰量)
20dB/dec 40dB/dec 60dB/dec 60dB/dec
回路構成

(補足)
dec(decade):周波数的に10倍、oct(octave):周波数的に2倍
-6dB/oct = -20dB/dec

 LCフィルタは、 RCフィルタに比べて減衰率が高いのですが、自己共振周波数が1つで、ノイズを減衰させる帯域が狭く、広い範囲に対応させる場合は性能が不十分です。複合型のLCフィルタであれば、複数の共振周波数を持っていますので、効率よくノイズの減衰に役立てることができます。

 同位相のノイズに対しては、同位相のノイズでインピーダンスが高く、逆位相のノイズではインピーダンスが低くなる特性を持つ、 「コモンモードノイズ対策用コイル」を基板の電源入力部に挿入します。

図7. コモンモードノイズ対策用コイル
図7. コモンモードノイズ対策用コイル

6. まとめ

 今回は、様々なEMI対策部品を紹介しました。これらの対策部品は、皆様の身近な機器にも使われていると思いますので、ご興味ある方は探してみて下さい。

 次回はいよいよ最終回、これまでに説明した内容の総まとめです。

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