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変わる工作機械・ロボット!最新機器を支えるカスタム電源の開発手法

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2024.08.20

 高機能・高性能化する工作機械・ロボットなどの産業機械、これらで使用される電源への要求も変化しています。
 これまでは汎用電源で対応していた機器もカスタム電源への置き換えを検討するケースが増えていますが、電源の変更は容易ではありません。
 このような産業機器向け電源に関して、アプリケーションごとの電源要件とその背景、要件に応えるカスタム電源とその開発手法に関して解説します。

1. 産業オートメーションによる電源要件の変化

 現在、産業オートメーション市場は成長中であり、2023年から2031年の年間複合成長率(CAGR)は8.7%で成長し、2031年には3,161億米ドルに達する見込みです。(Panorama Data Insights Ltd.より引用)
 産業オートメーションは生産性向上や運用コスト削減などの目的で工場を自動化することを指しており、工場の自動化を進めるために工作機械・ロボットの高機能化・多機能化などの性能向上と合わせて、安全性向上・低消費電力化・小型/省スペース化などのニーズが出てきています。それに合わせて電源への要求も変化しており、汎用電源からカスタム電源の変更検討が増えています。下表にアプリケーションに新たに求められる機能と、それに伴う電源への追加要求を纏めました。

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2. アプリケーションごとの電源要件

電源容量

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図1 市場ごとの電源容量と使用電源
※クリックで拡大表示します

 アプリケーション分野ごとに電源に求められる性能が異なります。図1に市場ごとの電源容量を纏めました。FA機器・ロボットは汎用電源の提供範囲に収まっていますが、先の要求仕様の変化によりカスタム電源に移行してきています。その他の汎用電源の利用状況は図1の通りです。数kW以上の容量を求める機器は基本的にカスタム電源が使用されています。

特殊要求

 アプリケーションの電源要件により、最適な電源は変わります。入手性/価格で選択するのであれば標準仕様の汎用電源を選択することになりますが、アプリケーションの仕様に合わせた追加要求を行う場合は、カスタム電源を検討する必要があります。

<アプリケーションごとの特殊要求例>

  • ロボットアーム
要求内容 要求理由
低ノイズ 精密な動作を行うセンサ、アクチュエータを駆動するため
多チャンネル モータ、センサ、アクチュエータなど機器内に多数の機能を有するため
小型・特殊形状 省スペース要求に応えるため
各種規格準拠 ISO 62368, 過電圧カテゴリⅢなど

 

  • CNC工作機械
要求内容 要求理由
大容量 大型モータ、スピンドル駆動時のピーク電流に対応するため
負荷過渡応答性能 大型モータの動作/停止が繰り返されるため
ブレーキ回生 大型モータの停止時に発生するエネルギーを再利用するため

 

  • レーザーカッター
要求内容 要求理由
大容量 高出力レーザー駆動のため
出力微調整機能 レーザーの微細な出力調整のため
高速応答性能 レーザーの出力調整を瞬時に行うため

 

  • 精密測定装置
要求内容 要求理由
低ノイズ 各種センサで微細な変動も検出する必要があるため
(電源のノイズが検出に影響する)

 

  • ワイヤーカット放電加工機
要求内容 要求理由
定電流制御 当加工機ではワイヤーに流れる電流で加工対象を切断するため

 

  • PLC
要求内容 要求理由
電源シーケンス対応 ロジック系電源とパワー系電源の出力時間を調整する必要があるため

 

  • その他の要求例(主にアプリケーションベンダの内部規格により発生する)
要求内容 要求理由
ディレーティング対応 アプリケーションベンダの設計ルールに対応するため
沿面距離確保 アプリケーションベンダの設計ルールに対応するため
防火板金追加 アプリケーションベンダの設計ルールに対応するため
使用部材の変更 アプリケーションベンダの要求によるため
4M変更管理 汎用電源では除外される仕様に影響しない部品の変更もトレースするため

3. 汎用電源とカスタム電源

 一言にカスタム電源と言っても、カスタムの度合いに応じてフルカスタム電源とセミカスタム電源に分けられます。フルカスタム電源はその名の通り、要件に応じて新規に開発・製造する電源で部品単位の要求事項を盛り込めます。アプリケーションの要求仕様に合致した製品となるため、電源容量・出力数などの基本的な仕様のみならず、効率・寿命・安全性などの面でも高いパフォーマンスを発揮でき、サイズや形状の制約、熱の問題、規制対応など、多様なニーズに柔軟に応えることが可能です。
 セミカスタム電源は汎用電源をベースに出力電圧・出力数などの小規模な変更に対応するもので、汎用電源とフルカスタム電源の中間に位置する製品となります。フルカスタム電源と違い認証取得済みの汎用電源を用いたカスタムとなるため、開発期間の短縮が可能です。

4. カスタム電源の開発プロセスと課題

 カスタム電源の開発プロセスは、要件確認、パートナー選定、仕様策定、設計、試作、評価/試験、量産準備、量産の8工程に分けられます。
 カスタム電源を開発する場合、カスタム電源の設計・製造が可能な電源メーカに委託することが一般的ですが、“要件確認”、“パートナー選定” までは自社で行い、“仕様策定” はパートナーと共同で行う必要があるため、一定の知見・工数は必要となります。
 「産業機器では開発サイクルが長くなるため、自社内で電源に関する知見を持ったエンジニアがいない。」、「かつては担当者がいたが技術継承ができておらず、担当できるエンジニアがいなくなってしまった。」などの課題も散見されます。
 年々変化する海外の法規制/安全規格への追従、自社の要求に応えられる新規パートナーの模索も課題となっております。産業機器向けのカスタム電源では、前述したように機器ごとに特殊な要求が発生するため、パートナーとの仕様すり合わせ、コミュニケーションも重要な要素となりますが、パートナーが海外メーカの場合はコミュニケーションが課題となります。

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図2 カスタム電源の開発プロセスと課題

5. 円滑なカスタム電源開発の手法

 課題の多いカスタム電源開発ですが、以下のような取り組みで課題の解消を図ることが可能です。事前準備をして、カスタム電源開発を円滑に進めましょう。

  1. 出荷対象となる国/地域を纏めておく
  • 各国の法規制/安全規格を調査するにあたり、自社製品の出荷先を纏めておくことが重要です。
  • 出荷先と自社製品の仕様(機器種別・通信規格など)が分かっていれば、認証機関などへの相談も容易になります。
  1. 自社製品仕様の明確化
  • 電源の供給先となるセンサ、アクチュエータなどの仕様を明確にしておくことで、電源に対する要件を整理する際に役立ちます。
  1. 複数の電源メーカと取引/交流のある商社/コンサルタントの活用
  • 要件確認の段階で技術力のある商社/コンサルタントと協力することで、要件整理を円滑に進めるとともに要件にあった電源メーカを紹介いただくことができます。
  • 紹介された電源メーカに委託することで、中間でのフォロー役として開発開始後のイベント/日程管理に関しても協力が期待できます。
  • 安全規格に対する解釈など電源メーカと意思疎通・認識整合が必要になる場面が多々ありますが、その際のフォローに関しても知見を持った商社/コンサルタントであれば大きな力になるでしょう。

6. リョーサンの取り組み

 産業機器における電源要求の変化から、カスタム電源の開発プロセス/課題、開発手法までを解説しましたが如何でしたでしょうか。
 リョーサンではコーセルを中心とした各社の電源製品を扱っており、カスタム電源もフルカスタムからセミカスタムまで要件に応じた提案が可能です。電源専属営業と設計サポートを行うFAEが要件整理から製品出荷までサポート提供させていただきます。
 第三者認証機関と連携した認証取得サポートも提供しておりますので、カスタム電源開発の際はお気軽にお声がけください。

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図3 リョーサンの提供する電源ソリューションと技術サポート

今回紹介した内容の図解はこちら

\\ 産業機械の高機能化に伴う電源要件の変革 //
\\ ~カスタム電源に求められる機能と選び方~ //

執筆:唐橋賢一、編集:木庭マサヒロ

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