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研究機関が語るロボット制御の最前線!広がるROSの活用

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  • 更新日
  • 公開日
  • 2024.05.07

 ROS(Robot Operating System)は、ロボットを制御するためのフレームワークのことで、研究や開発など広い分野で使用されています。今回は、FRANKA ROBOTICS(旧:FRANKA EMIKA)とROSを活用して、高い追従精度と柔らかい動き(高追従低剛性制御)を実現した、NTTコミュニケーション科学基礎研究所 五味様 高木様にお話を伺いました。

会社概要

日本電信電話株式会社

事業内容

「人間情報科学」「メディア処理」「多様脳科学」「データと機械学習」を研究

今回お話を伺った方

NTTコミュニケーション科学基礎研究所 感覚運動研究グループ

五味 裕章 様 高木 敦士 様

1. 遠隔操作ロボットとは

Q. ロボットの遠隔操作に求められることは?

左:五味様 右:高木様

遠隔操作で必要不可欠な2つの要素

 外界とインタラクションするロボットの遠隔操作をするためには『操作者の動きと同じ動きをする』『柔らかく動く』、この2つの要素が重要になります。剛い動きでは物に接触した場合、大きなダメージを与えてしまい、逆に柔らかすぎると追従精度が低くなります。この2つの要素を両立させることが大きな課題でした。

潜在的な情報処理に注目

 従来のロボット研究では顕在的(意識的)情報処理を模倣した制御を行っていましたが、それだけでフレキシブルに動かすことは難しかったです。そこで、あまり研究の進んでいなかった潜在的(無意識的)情報処理に注目しました。潜在的情報処理が、この問題を解決するための糸口になると考えたのです。

  • ​顕在的情報処理:コップに手を伸ばすなど意図的・意識的な動きのための情報処理
  • 潜在的情報処理:無意識のうちに行われる運動についての情報処理(例えば「反射」)

手を動かすときの"無意識の動き"からヒントを得る

 操作者が手を動かすときの「"無意識の動き"に人の意図が隠れている」という仮説を立て、手の動きから目的地を推測する運動モデルを考えました。この運動モデルと柔らかさ(パラメータ)を組み合わせることで、ロボットが"正確"かつ"柔らかく"追従できると考えたのです。これを新たな提案法として実験を行いました。

 

実験結果(従来法と提案法)

 従来法の"剛い制御"はオペレータの操作に上手く追従できましたが、障害物との接触でロボットに大きなダメージが加わりました。逆に従来法の"柔らかい制御"では、追従精度が悪いため、操作に大きな違和感がありました。

 今回の提案法では、それらの問題を感じることなく、動きの"柔らかさ"を実現しながら、追従精度を74%も向上できました。さらに、ロボットが動きを予測しながら動作するため、通信による動作遅延の影響も低減できました。

2. FRANKA ROBOTICSを採用した理由

Q. なぜ FRANKA ROBOTICS が選ばれたのですか?

 FRANKA ROBOTICSは研究用途として、世界中で多くの研究者に使用されており、ロボット制御の深い部分のコードまでROSで簡単に調整できるところに魅力を感じました。

Q. ほかのロボットではここまで深い制御はできないのでしょうか?

 ここまで制御できるものはほとんどなく、制限がかかってしまいます。ROSで簡単にコマンドが入れられ、位置だけ制御、剛性だけ制御など、ピンポイントで制御できる点も使いやすいです。制御のリアルタイム性が高い点も良かったです。

3. 将来的に活用が見込める場面

Q. どのような分野で活用が見込まれるでしょうか?

 遠隔医療や介護現場での活用が考えられるが、手術のように繊細な操作を要求される場面では、力の"フィードバックの返し方"が難しく、フィードバックを返してもほとんど感じられなかったり、フィードバックがあることで逆に妨げになる場合もあるため、視覚情報のみの方が操作しやすいとの声もあります。

 介護現場では提案法のように"柔らかさ"(剛性)のパラメータを変更することで、状況に応じた調整が可能になります。反力を利用する場合は、単純に返すだけでは操作が不安定になるため、返し方に工夫が必要になります。今回紹介した遠隔操作ロボットの研究を発展させて、返し方も追究していきたいと考えています。

Q. ROSの活用は今後も広がると思われますか?

 素早くプロトタイプを製作する場合はROSを使うのが早いです。大学の研究室では、学生の入れ替わりに対応するため、なるべく拡張性、継承性が必要で標準化も重要になるのではないでしょうか。標準化の中でも自由度が高いものとしてROSは使い勝手が良いイメージなので、Linuxのようにデファクトスタンダードになる可能性は十分にあると考えています。

 ※ROSについて詳しく解説した「ロボティクス入門(ウェビナ)」は以下のリンクからご覧ください。

4. まとめ

 今回のインタビューでは、遠隔操作ロボットの先端技術に焦点を当て、アルゴリズムや優れた制御性能について深堀りしました。特に、"人の動きに追従するため、人の意図をロボットに予想させる"という発想には驚かされました。遠隔操作時のフィードバックの返し方が難しいことや近年のROS普及についてもご説明いただき、この技術が研究機関で重宝されていることを知る良いきっかけになりました。

 五味様、高木様この度は貴重なお話どうも有難うございました。

執筆者:中島朗、編集者:古澤禎崇

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